偏心率とは|建築基準法の基準や計算方法を分かりやすく解説

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建物の耐震性を検討する際、「偏心率」という言葉を目にすることがあります。偏心率は、建物の重心と剛心の位置関係から、地震時に建物がねじれる影響を確認するための指標です。
そこで本記事では、偏心率の意味や基準、4分割法との違い、計算方法について分かりやすく解説します。
偏心率とは

偏心率とは、建物の「重心」と「剛心」の位置関係から、地震時に建物がねじれる影響の程度を表す指標です。建物の耐震性を検討するうえで重要な指標の一つとして、活用されています。
具体的には建物に地震力が作用すると、耐力壁や柱などの配置によって、建物には回転する力が生じることがあります。重心と剛心が離れているほど、地震時のねじれが大きくなりやすいため、偏心率を計算して建物のバランスを確認するのが一般的です。
重心・剛心との関係性
「重心」とは、建物の重量が一点に集まっていると仮定したときの中心位置です。一方で「剛心」とは、耐力壁や柱など、建物が地震力に抵抗する部分の剛性が集中する位置を指します。
重心と剛心が一致していれば、地震力が作用した際に建物は比較的均等に動きます。しかし両者が離れていると、地震時に建物を回転させる力が生じ、ねじれが起こりやすくなります。この重心と剛心のズレをもとに、建物のねじれの程度を数値化したものが「偏心率」です。
建築物の耐震性を確認する方法

ここでは、建築物の耐震性を確認する代表的な方法について解説します。地震に対する建物の安全性を確認する際は、耐力壁の「量」だけでなく、「配置のバランス」も重要です。
壁量計算
壁量計算とは、地震や風などの力に抵抗するために必要な耐力壁が、建物に十分な量配置されているかを確認する計算です。建物の床面積などから必要な壁量を算出し、実際に配置する耐力壁の量が基準を満たしているかを確認します。
ただし壁量が十分でも、耐力壁が一方向に偏って配置されていると、地震時に建物がねじれる可能性があります。そのため壁量計算だけでなく、耐力壁の配置バランスを確認することも重要です。
4分割法
4分割法とは、建物を一定のルールで4つの部分に分け、それぞれの側端部分に配置された耐力壁の量を比較することで、耐力壁の配置バランスを確認する方法です。
壁量計算によって必要な耐力壁の量を満たしていても、耐力壁が一方に集中していると、地震時に建物がねじれる原因となることがあります。4分割法では、このような耐力壁の偏りがないかを比較的簡単に確認できます。
偏心率
偏心率とは、建物の重心と剛心の位置関係から、耐力壁などの配置による建物のねじれの程度を確認する指標です。4分割法が耐力壁の配置を一定のルールで区分して確認するのに対し、偏心率では重心と剛心のズレを計算します。
そのため、4分割法とは異なる方法で建物全体のバランスを評価できます。耐力壁の配置を検討する際や、4分割法で不適となった場合などに、偏心率による検討が行われることがあります。
建築計画での偏心率の活用シーン

ここまで、建築計画での偏心率の活用シーンをご紹介します。
耐力壁の配置を検討するとき
耐力壁をどこに配置するかを検討する際、偏心率を活用して建物全体のバランスを確認できます。耐力壁の量が十分でも、一方向に集中していると重心と剛心が離れ、地震時に建物がねじれやすくなる場合があります。
偏心率を確認することで、耐力壁の位置を調整するなど、よりバランスのよい配置を検討できます。
4分割法で「不適」になったとき
4分割法で耐力壁の配置バランスを確認した結果、「不適」となる場合があります。このような場合でも、4分割法だけで建物のバランスを判断するのではなく、偏心率を計算してより詳細に検討することが可能です。
偏心率による検討で基準を満たせば、4分割法では不適となったプランでも、別の評価方法によって適合を確認できる場合があります。
建物の形状が複雑なとき
L字型や凹凸のある建物など、平面形状が複雑な場合は、耐力壁の配置によるバランスも複雑になります。単純な壁量や配置の確認だけでは、建物全体の重心と剛心の関係を十分に把握しにくい場合があります。
偏心率を計算することで、耐力壁などの剛性の配置を踏まえて、建物全体のねじれに対するバランスを検討できるのがメリットです。
間取り変更などで耐力壁の配置が変わるとき
間取りの変更によって、耐力壁の位置や量が変わると、建物の剛心も変化する可能性があります。例えば壁を撤去したり新たに設けたりすることで、重心と剛心の位置関係が変わり、偏心率に影響することがあります。
そのため間取り変更によって耐力壁の配置を変更する場合は、変更後の建物について偏心率を確認することが重要です。
偏心率の基準「0.15」、「0.30」とは

ここでは、偏心率の基準とされている数値「0.15」、「0.30」について解説します。この2つは同じ基準ではなく、使われる場面が異なります。
建築基準法施行令第82条の6第2号ロ
建築基準法施行令第82条の6第2号ロでは、各階の偏心率が0.15以下であることを定めています。
偏心率は、建物の「重心」と「剛心」のズレをもとに計算します。数値が大きいほど、建物が地震時にねじれやすいことを示します。
【参考】e-GOV|建築基準法施行令第82条の6第2号ロ
「0.15」と「0.30」の違い
「0.15」と「0.30」は、どちらも偏心率に関係する数値ですが、適用される規定が異なります。
「0.15」は、建築基準法施行令で定められている偏心率の基準です。一方で「0.30」は、主に木造住宅における4分割法で用いられる基準です。
そのため「偏心率は0.15以下」「木造住宅では0.30以下」と単純に考えるのではなく、どの規定を適用する建物なのかを確認することが重要です。
木造住宅における4分割法との関係
木造住宅では、耐力壁の配置バランスを確認するために4分割法が使われています。ただし一定の条件を満たして偏心率を0.30以下に抑えている場合は、4分割法による耐力壁の配置に関する規定を適用しないことが可能です。
つまり0.30は「偏心率そのものの一般的な基準」ではなく、4分割法との関係で使われる数値と言えます。
偏心率の計算方法・求め方

ここでは、偏心率の求め方について解説します。偏心率は、重心と剛心を求めた上で、偏心距離や弾力半径などを計算し、最後に算出するという流れで求められます。
1.重心(Gx,Gy)
重心とは、建物の重量が一点に集まっていると仮定したときの中心位置です。各部材の重量と位置から、X方向・Y方向の重心座標(Gx・Gy)を求めます。
2.剛心(Sx,Sy)
剛心とは、耐力壁や柱など、地震力に抵抗する部分の剛性が集中する位置です。各部材の剛性と位置から、X方向・Y方向の剛心座標(Sx・Sy)を求めます。
3.偏心距離(e)
偏心距離は、重心と剛心のズレを表す距離です。重心と剛心の位置をもとに、計算する方向ごとの偏心距離(e)を求めます。
4.ねじり剛性(KR)
ねじり剛性は、建物が地震力によってねじれようとするときに抵抗する力の大きさを表します。各耐力壁などの剛性と位置関係から、剛心まわりのねじり剛性(KR)を求めます。
5.弾力半径(re)
弾力半径(re)は、建物のねじりに対する剛性と、計算する方向の水平剛性から求める数値です。偏心率を計算するために使用します。
6.偏心率(Re)
最後に、偏心距離(e)を弾力半径(re)で割ることで、偏心率(Re)を求めます。
- Re=e/re
偏心率が大きいほど、重心と剛心のズレが大きく、地震時に建物がねじれやすい傾向があります。
まとめ
偏心率は、建物の重心と剛心のズレをもとに、地震時のねじれに対するバランスを確認するための指標です。壁量計算や4分割法とは異なる方法で、建物全体のバランスを確認できます。
また偏心率の基準は建物の構造や適用する規定によって異なるため、数値だけで判断しないことが重要です。耐力壁の配置や間取りを検討する際にも活用できます。