耐力壁とは?種類・壁倍率・配置のポイント|2025年建築基準法改正後の注意点

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耐力壁は、地震や風などの横方向の力に抵抗し、建物の変形や倒壊を防ぐ重要な構造要素です。とくに木造住宅では、耐力壁の種類や壁倍率だけでなく、必要な量や配置バランスまで考慮した計画が求められます。

そこで本記事では、耐力壁の基本から種類、関連する数値、構造別の特徴、2025年の建築基準法改正による変更点や計画時の注意点まで、工務店が押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

耐力壁(読み方:たいりょくへき)とは

耐力壁とは、地震や風などによって建物に横方向から加わる力に抵抗し、建物の変形や倒壊を防ぐための壁のことを指します。木造住宅では、筋交いや耐力面材などを用いて耐力壁を設け、建物全体で地震力や風圧力を負担します。

住宅計画では、必要な量の耐力壁を確保することはもちろんですが、建物のバランスを考えて適切に配置することも重要です。

耐力壁の種類

ここでは、耐力壁の種類について解説します。

筋交い

筋交いとは、柱と柱の間に斜めに部材を入れて、地震や風による横方向の力に抵抗する方法です。木造軸組工法で広く採用されており、使用する部材の種類や寸法、配置によって耐力が異なります。

筋交いは壁の内部に設置するため、比較的施工しやすい一方、筋交いの位置によっては開口部や設備の配置に制約が生じることがあります。また、柱や土台などへの適切な接合も重要です。

耐力面材

耐力面材とは、構造用合板などの面材を柱や梁・土台などに張り付け、壁全体で地震や風による横方向の力に抵抗する方法です。筋交いと比べて壁面全体で力を受けられるため、高い耐力を確保しやすく、間取りの自由度を高められる場合があります。

一方で、面材の種類や厚さ、釘の種類・間隔、施工方法などによって耐力が変わることから、仕様に沿った正確な施工が求められます。

準耐力壁等

出典:国土交通省,軸組構法の確認申請・審査マニュアル,https://www.mlit.go.jp/common/001845811.pdf,参照日2026.9.10

準耐力壁等とは、耐力壁としての仕様を満たしていないものの一定の耐力を期待できる壁のことを指します。上図のように「準耐力壁」と「垂れ壁・腰壁」の2つがあります。

2025年の建築基準法改正では、壁量基準の見直しに伴い、準耐力壁等を必要壁量の算定により適切に反映できるようになりました。設計時には、対象となる仕様や算入できる耐力を確認することが重要です。

耐力壁の性能と配置を判断する指標

ここでは、耐力壁の性能と配置を判断する際に指標となる数値について解説します。

壁倍率とは

壁倍率とは、耐力壁がどの程度の強さで地震や風などの横方向の力に抵抗できるかを示す数値です。筋交いや耐力面材など、使用する材料や仕様によって壁倍率が定められています。

基本的に、壁倍率が高いほど、同じ長さの耐力壁で大きな力を負担できます。木造住宅の壁量計算では、各耐力壁の壁倍率をもとに存在壁量を算定するため、耐力壁の種類や仕様を選定する上で重要な指標です。

必要壁量・存在壁量とは

出典:国土交通省,軸組構法の確認申請・審査マニュアル,https://www.mlit.go.jp/common/001845811.pdf,参照日2026.9.10

「必要壁量」とは、建物の規模や形状、重量などに応じて、地震や風に抵抗するために必要となる耐力壁の量です。一方で「存在壁量」とは、実際の建物に設けられた耐力壁の量を、壁倍率などを考慮して算定したものを指します。

基本的には、存在壁量が必要壁量を上回るように計画する必要があります。2025年の建築基準法改正では木造建築物の荷重の実態を踏まえて、必要壁量の算定方法が見直されています。

偏心率とは

「偏心率」とは、建物の重心と、地震などの水平力に対する剛性の中心とのずれを示す指標です。耐力壁が建物の一部に偏って配置されていると、地震時に建物がねじれるように変形するおそれがあります。

そのため耐力壁は必要な量を確保するだけでなく、建物全体でバランスよく配置することが重要です。偏心率を確認することで、耐力壁の配置による建物のねじれの程度を評価できます。

剛性率とは

「剛性率」とは、建物の各階の剛性が、建物全体の中でどの程度確保されているかを示す指標です。階によって耐力壁の量や配置が大きく異なると、特定の階に変形が集中する可能性があります。

とくに複数階の建物では、各階の剛性のバランスを確認することが重要です。また耐力壁の配置を検討する際は、平面的なバランスだけでなく階ごとの剛性にも配慮する必要があります。

構造別の耐力壁の特徴

ここでは、建物の構造別の耐力壁の特徴について解説します。

木造

木造では、柱や梁などで構成される骨組みに筋交いや耐力面材を設け、地震や風などの水平力に抵抗します。とくに木造軸組工法では、耐力壁の位置や量が建物の構造安全性に大きく関係します。

壁倍率を用いて耐力壁の性能を評価し、必要壁量を満たすだけでなく、平面的な配置バランスにも配慮することが重要です。2025年の建築基準法改正では、木造建築物の壁量基準などが見直されています。

鉄骨造

鉄骨造は柱や梁などの鋼材によるラーメン構造が一般的で、骨組み自体で地震や風などの水平力に抵抗する場合があります。一方、ブレース(筋かい)を配置して水平力に抵抗する構造もあります。

そのため木造のように壁そのものが主要な耐力要素になるとは限らず、建物の構造形式によって耐力の負担方法が異なります。間取りや開口部の計画と構造部材の配置を考慮して、設計することが重要です。

鉄筋コンクリート(RC)造

鉄筋コンクリート(RC)造は、鉄筋とコンクリートを一体化した柱・梁・壁などによって建物を支える構造です。構造形式によって、柱と梁で構成するラーメン構造や、壁を主要な構造部材とする壁式構造などがあります。

とくに壁式構造では、鉄筋コンクリートの耐力壁が地震などの水平力を負担します。木造の耐力壁とは材料や構造上の役割が異なるため、同じ「耐力壁」という言葉でも、構造形式に応じて考える必要があります。

2025建築基準法改正|構造関係規定が見直しに

ここでは、2025年の建築基準法改正による耐力壁への影響について解説します。構造関係規定が見直しになったことで、より安全性の高い構造が求められるようになりました。

①壁量基準の見直し

出典:国土交通省,木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準に関する補足資料,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001753667.pdf,参照日2026.9.10

従来の壁量基準では、「軽い屋根」「重い屋根」などの区分に応じて必要壁量を算定していました。2025年の改正では、この区分を基本的に廃止し、屋根や外壁、断熱材、窓、太陽光発電設備などを含めた建築物の荷重の実態に応じて必要壁量を算定する方法に見直されています。

また存在壁量には、従来の耐力壁に加えて「準耐力壁等」も考慮できるようになり、高倍率の耐力壁についても壁倍率7倍まで使用できるようになりました。

②筋交いの対象拡大

出典:国土交通省,木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準に関する補足資料,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001753667.pdf,参照日2026.9.10

筋交いに関する規定も見直され、従来の木材や鉄筋に加えて、これらと同等以上の強度を有する材料を筋交いとして使用できるよう、対象が拡大されました。また、K型筋交いや多段筋交いなども対象となっています。

ただし新たに対象となる材料や仕様については、大臣認定が必要となる場合があります。実際に筋交いを採用する際は、使用する材料や仕様が基準を満たしているかを確認することが重要です。

③柱の小径の基準の見直し

出典:国土交通省,木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準に関する補足資料,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001753667.pdf,参照日2026.9.10

柱の小径についても、建築物の重量化に対応するため基準が見直されました。従来は「軽い屋根」「重い屋根」などの区分や階高に応じて柱の小径を算定していましたが、改正後は建築物の荷重の実態を踏まえて、柱の小径を算定する方法などが導入されています。

断熱材や高性能な窓、太陽光発電設備などによって建物重量が増える場合もあるため、建物の仕様を踏まえて適切な柱径を検討することが求められます。

④基礎の基準の見直し

出典:国土交通省,木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準に関する補足資料,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001753667.pdf,参照日2026.9.10

基礎についても構造関係規定が見直され、無筋コンクリート基礎が廃止され、地盤の種別にかかわらず鉄筋コンクリート基礎を用いることが必要となりました。

耐力壁で地震などの水平力を負担しても、その力を柱や土台から基礎へ適切に伝達できなければ、建物全体として十分な性能を確保できません。そのため、耐力壁だけでなく、柱・接合部・土台・基礎までを一体として構造計画することが重要です。

2025法改正後の耐力壁計画の注意点

建物重量を踏まえて必要壁量を確認する

2025年の改正では、従来の「軽い屋根」「重い屋根」といった区分ではなく、建物の荷重の実態に応じて必要壁量を算定する方法に見直されました。屋根や外壁、断熱材、窓などの仕様によって建物重量は変わるため、実際の建築物の仕様を踏まえて必要壁量を確認することが重要です。

とくに省エネ性能の向上や太陽光発電設備の採用などによって重量が増える場合は、従来の感覚だけで耐力壁の量を判断しないよう注意しましょう。

耐力壁の量だけでなく配置バランスを確認する

耐力壁が一部に集中すると、地震時に建物がねじれるなど、十分に性能を発揮できない可能性があります。そのため必要な量を確保するだけでなく、建物全体でバランスよく配置することが重要です。

大きな開口部や吹き抜けのある間取りでは耐力壁を配置できる場所が限られるので、間取りの検討段階から耐力壁の位置や配置バランスを考慮する必要があります。

高倍率の耐力壁を使用する場合は配置にも注意する

2025年の法改正では、壁倍率の上限が従来の5倍から7倍に引き上げられました。高倍率の耐力壁を使用することで、限られた壁長でも必要な耐力を確保しやすくなります。

一方、高倍率の耐力壁に大きな力が集中すると、周辺の柱や接合部などにも大きな負担がかかります。壁倍率だけで判断せず、配置や周辺部材への影響も確認することが重要です。

柱・接合部・基礎まで含めて構造を検討する

耐力壁で地震などの水平力を負担しても、その力を柱や接合部、土台、基礎へ適切に伝えられなければ、建物全体として十分な構造性能を確保できません。

そのため耐力壁の量や配置だけでなく、柱の小径や柱頭・柱脚の接合部、基礎まで含めて一体的に検討することが重要です。2025年の法改正後は、こうした力の流れを踏まえた構造計画がより重要になっています。

まとめ

耐力壁は、建物の安全性を確保するうえで重要な構造要素です。2025年の建築基準法改正では、建物重量を踏まえた必要壁量の算定など、木造建築物の構造関係規定が見直されました。

法改正後は、耐力壁の量だけでなく配置バランスや壁倍率、柱・接合部・基礎まで含めて構造を検討することが重要です。最新の基準を確認し、適切な耐力壁計画を行いましょう。