2026「夏季休工」とは|国土交通省の定義やメリット・デメリットを解説

目次
トレンドワード:夏季休工
近年は記録的な猛暑が続いており、建設現場では熱中症リスクの高まりが大きな課題となっています。こうした状況を受け、国土交通省では「夏季休工」の導入を進めており、2026年度からは公共工事でも本格的な運用が始まる予定です。
そこで本記事では、夏季休工の概要や導入背景、メリット・デメリット、導入時のポイントについて分かりやすく解説します。
夏季休工とは

ここでは、2026年度から国土交通省が推進する「夏季休工」の定義や先行事例についてご紹介します。
国土交通省・厚生労働省の定義|WBGTの数値をチェック

夏季休工とは、猛暑による熱中症リスクを軽減するため、真夏の一定期間に工事現場の作業を停止・縮小する取り組みです。国土交通省や厚生労働省では、気温だけでなく湿度や日射などを加味した「WBGT(暑さ指数)」を活用し、作業可否の判断を推奨しています。
工事期間(工期)は、次の式で算出されます。
- 工期=実働日数×(1+雨休率)+準備期間+後片付け期間+その他作業不能日
2023年より、「雨休率」の中に猛暑日が含まれるようになりました。猛暑日日数とは「WBGT値31以上の時間を日数換算した5か年平均(※午前8時〜午後5時の作業時間帯が対象)」と定義されています。
つまり現在は、雨だけでなく「危険な暑さで作業できない日」も工期へ反映する仕組みに変化しているのが特徴です。
2026年度|公共工事での夏季休工がスタート
国土交通省は、2026年度から直轄の公共土木工事で「夏季休工」の試行導入を本格化させる方針を示しました。対象は道路舗装や盛り土など、猛暑下での屋外作業が中心です。7〜8月の1〜2か月程度を休工期間として想定し、工事契約や工程計画の段階から猛暑期を避ける運用が検討されています。
背景には、記録的な酷暑による熱中症リスクの増加に加え、建設業界の担い手不足や働き方改革への対応があります。
宇都宮国道事務所の事例

国土交通省関東地方整備局の宇都宮国道事務所では、全国に先駆けて夏季休工を試験導入しました。舗装工事などを対象に、受発注者間の協議によって7〜8月を休工可能とする取り組みを試行的に実施しています。
実際の現場からは、「猛暑期間を避けて工事を実施することにより、社員の健康管理や働き方改革に寄与」、「現場作業員も高齢化しており、猛暑期間を避けることは心身ともに非常に良い取り組み」といった声が上げられています。
夏季休工導入の背景
ここでは、夏季休工の導入が広がっている背景について解説します。
2025年「改正労働安全衛生規則」による熱中症対策の強化

2025年の改正労働安全衛生規則では、事業者による熱中症対策の強化が進められました。具体的にはWBGT値の把握や作業環境管理、水分・塩分補給の徹底に加え、重篤化を防ぐための体制整備も求められています。
対象となる作業条件は、下記の通りです。
- WBGT28度以上、または気温31度以上の環境下
- 連続一時間以上、または1日4時間を超えて実施
建設業のような屋外作業ではとくに対策の重要性が高く、従来以上に「無理な炎天下作業を避ける」考え方が重視されるようになりました。こうした法改正の流れを受け、企業や発注者側でも、猛暑期そのものを休工期間として設定する動きが広がっています。
建設業界の担い手不足
建設業界では高齢化が進む一方、若手入職者の不足が大きな課題となっています。長時間労働や休日の少なさに加え、近年は「夏場の過酷な暑さ」が就業敬遠の理由として挙げられるケースも増えています。
そのため人材確保や定着率向上の観点から、働きやすい職場環境を整備することが重要です。夏季休工は、熱中症対策だけでなく建設業の労働環境改善や働き方改革につながる取り組みとしても注目されています。
夏季休工のメリット

ここでは、夏季休工の主なメリットを解説します。
作業員の安全確保
近年は気温だけでなく湿度も高く、WBGT(暑さ指数)が危険水準に達する日が増えています。とくに建設現場では、直射日光や照り返しの影響によって体感温度がさらに上昇し、長時間作業が困難になるケースも少なくありません。
そのため夏季休工によって危険な時間帯や時期の作業を避けることで、体調不良や労働災害を防止することが重要です。
若手人材の確保・定着につながる
建設業界では高齢化が進む一方で、若手人材の不足が大きな課題となっています。とくに夏場の屋外作業は「きつい」「危険」というイメージを持たれやすく、敬遠される要因の一つです。
そこで夏季休工を導入して無理な炎天下作業を避けることで、働きやすい職場環境づくりにつながります。また休日や休暇を確保しやすくなるため、ワークライフバランス改善にも効果が期待できます。
現場の労務管理を適正化しやすい
従来は猛暑日でも工程優先で作業を継続するケースがあり、急な作業中断や体調不良への対応が現場負担となっていました。
しかしあらかじめ休工期間を設定しておくことで、作業員の配置や休日取得、協力会社との調整を進めやすくなります。夏季休工を前提に工程を組むことにより、現場の労務管理計画がスムーズになるのがメリットです。
夏季休工のデメリット・課題

夏季休工はまだ新しい取り組みのため、デメリットや課題も見られます。
建設業労働者の給料減少につながる
建設業では日給制や出来高制で働く作業員も多く、休工期間が増えることで収入減少につながる可能性があります。また工期全体が変わらないまま休工日だけ増えると、他時期の長時間労働につながってしまうのも課題です。
そのため夏季休工を定着させるには、単純に「休む」だけでなく、工期設定や労務費の見直し、適切な費用補償を含めた制度整備が求められています。
工期が延長になる
夏季休工を導入すると、結果的に従来より工期が長くなる可能性があります。とくに公共工事や大型工事では、工程全体へ影響が及ぶケースもあり、発注者・元請・協力会社間の綿密な調整が必要です。
また天候不良や資材納期の遅れなど、他のリスクと重なることで工程管理がさらに複雑になる場合もあります。そのため夏季休工を前提としたスケジュール設計や、余裕を持った工期設定が求められています。
閉所中にも固定費・管理費が掛かる
工事を休止している期間でも、現場にはさまざまな固定費や管理費が発生します。例えば、現場事務所の維持費や重機・資材のリース費、安全設備の管理費、人件費の一部などは、休工中でも継続して必要になります。
そのため夏季休工を普及させるには、適切な積算基準や契約ルール整備も重要な課題です。
夏季休工を導入する際のポイント

夏季休工を導入する際には、下記のポイントを押さえておく必要があります。
発注者・元請・協力会社間の調整
建設現場では、多くの業者が工程ごとに関わるので、一部だけが休工すると全体工程へ影響が及ぶ可能性があります。そのため夏季休工を円滑に導入するには、発注者・元請会社・協力会社間で事前に十分に調整しておくことが重要です。
また資材搬入や重機手配、周辺住民への周知なども含め、早い段階から休工期間を共有しておく必要があります。「猛暑を前提とした工程管理」を共通認識として持つことが大切です。
WBGT測定と運用ルール整備
夏季休工を適切に運用するには、WBGT(暑さ指数)の測定体制を整備する必要があります。WBGTは気温だけでなく湿度や日射なども反映した指標であり、熱中症リスク判断の基準として広く活用されています。
具体的には現場ごとにWBGT計を設置し、危険水準を超えた場合の作業中止基準や休憩ルールを明確化しておくことが重要です。また現場責任者だけでなく、作業員全体へルールを周知することも欠かせません。
労務費への配慮
夏季休工を導入する際は、作業員や協力会社の収入面への配慮も重要な課題です。建設業では日給制で働くケースも多く、発注者側による適切な工期延長や増加費用の積算対応、労務単価の見直しなどが求められています。
安全対策と経営面の両立を図ることが、夏季休工定着の鍵となります。
まとめ
夏季休工は、猛暑による熱中症リスクを軽減し、建設業の労働環境改善を図るための新たな取り組みです。近年はWBGTを活用した安全管理や、猛暑日を考慮した工期設定が進められており、公共工事でも導入が拡大しています。一方で、工期延長や労務費への対応など、課題も残されています。
そのため発注者・元請・協力会社が連携し、適切な工程管理や費用調整を行うことが重要です。今後は「暑さを前提にした現場運営」が建設業界全体で求められていくでしょう。