水害の種類|「都市型水害」が増加中…被害に強い家にするには

目次
トレンドワード:水害の種類
「水害の種類」についてピックアップします。近年、日本各地で豪雨や台風による水害が頻発し、その被害は都市部・沿岸部を問わず拡大しています。とくに都市型水害の増加や異常気象の影響により、従来安全とされていた地域でも浸水リスクが高まっています。
こうした状況の中、被害を最小限に抑えるためには、立地選びや家の設計段階からの対策が欠かせません。そこで本記事では、水害の種類や特徴、そして被害に強い家づくりのポイントを詳しく解説します。
水害による被害が増加…
近年、豪雨や台風による水害が全国的に増加しています。都市化の進展や気候変動により浸水被害や土砂災害が多発しており、「水害に強い家づくり」が急務となっています。
水害とは
水害とは、大雨や台風、豪雨などの気象現象により河川の氾濫や内水の排水不良が起こり、住宅や道路、農地などが浸水・冠水する災害のことを指します。近年、集中豪雨や都市化の進展により短時間で大量の雨が降るケースが増え、浸水被害が拡大している状況です。
水害は建物の損傷だけでなく生活基盤の停止や健康被害も引き起こすため、早期の対策が求められます。
水害の原因
水害の原因は多岐にわたりますが、近年特に注目されるのが地球温暖化による気候変動です。
温暖化が進むと大気中の水分量が増え、豪雨や集中豪雨の頻度と強度が増加します。これに加え、都市化による土地の硬化や排水設備の限界が浸水を悪化させています。
こういった河川の氾濫や内水氾濫、高潮などの自然現象と人間活動が複合的に重なり、水害リスクを高めているのです。また日本では、インフラの老朽化といった課題も指摘されています。
水害の種類|対策・備えも合わせてチェック
ここでは、主な水害の種類について解説します。最近増えている「都市型水害」と「河川・海洋型水害」に分けてご紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
①都市型水害
ここでは「都市型水害」について解説します。都市化の進展とともに多発する都市型水害は、短時間の集中豪雨や排水設備の能力不足が主な原因です。
住宅周辺のハザードマップ確認や排水設備の改善など、具体的な対策と備えが重要となります。
内水氾濫(ゲリラ豪雨・排水不良等)
都市型水害とは、ゲリラ豪雨などの短時間集中豪雨によって排水能力を超えた雨水があふれ、住宅地や道路が浸水する現象です。コンクリート舗装だと雨水が地面に染み込みにくいことから、とくに都市部では内水氾濫が起こりやすくなっています。
排水路の整備や雨水貯留タンクの設置が効果的な対策です。
②河川・海洋型水害
ここでは「河川・海洋型水害」について解説します。
外水氾濫
外水氾濫とは、河川や湖沼、海などの水域から水が溢れて広範囲で浸水が発生する現象です。国や自治体での対策として、堤防の強化や洪水調整池の整備が進められています。
また住宅では、基礎のかさ上げや防水性能の高い建材の採用が効果的です。さらにハザードマップの確認や、避難経路の確保や避難訓練の定期的な実施も有効となります。
洪水
洪水は主に河川氾濫によって発生し、長時間にわたる大雨や豪雨で河川の水が堤防を越えて周囲を浸水させます。地域全体の治水対策が基本ですが、住宅側でも基礎のかさ上げや耐水建材の使用、浸水時に電気設備が影響を受けない設計が必要です。
さらに地域の避難計画を理解し、早期避難を心がけることが被害軽減につながります。
波浪
波浪とは、強風や海風の影響で発生する高波が沿岸部に打ち寄せる現象です。被害を防ぐには防波堤や海岸堤防の整備が効果的で、住宅は耐波設計を採用し波の力に耐えられる構造にする必要があります。
また沿岸部の建築物は定期的な点検や補強が求められ、地域としても早期警報システムや避難対策の強化が重要です。
高潮
高潮とは、台風や低気圧により海面が異常に上昇して沿岸部に海水が押し寄せる現象です。対策としては、防潮堤や排水設備の整備が欠かせません。
住宅設計では基礎を高くし、防水シャッターの設置や耐塩害材の採用で塩害リスクも軽減できます。非常時には高潮警報に注意し、避難場所や経路を事前に確認しておくことが重要です。
津波
津波は地震や海底火山の噴火によって発生する巨大な波で、短時間で甚大な被害をもたらします。被害軽減には、早期警報と避難計画の徹底が不可欠です。
住宅は耐水・耐波設計を施し、避難タワーや高台への避難経路の確保も重要です。地域での訓練や情報共有も、命を守る上で大切な対策となります。
水害で引き起こされる被害①直接的被害
ここでは水害で引き起こされる「直接的被害」について解説します。
床上・床下浸水
床上・床下浸水は、住宅の1階部分や基礎部分まで水が入り込み、建材や断熱材が損傷する被害です。
長時間水に浸かることで構造材が腐食し、カビやシロアリの発生リスクも高まります。家財の破損や衛生環境の悪化につながると、修復費用も大きくなります。
家屋・家財の損壊
洪水や強い波、流木や漂流物により、家屋の壁や窓が破損し、家財が流出・破壊される場合があります。構造体が損傷すると修復が困難になり、場合によっては全壊扱いになることもあります。
そのため、保険加入や耐水性の高い素材の使用で備えておくことが重要です。
土砂崩れ
豪雨や河川氾濫による地盤の緩みで土砂崩れが発生すると、住宅や道路を直撃することがあります。また崩土の衝撃で建物が倒壊・埋没し、住民が逃げ遅れる危険もあります。
そのため危険区域の事前把握と、早期避難が命を守る鍵です。
車内への閉じ込め
水害時、冠水道路で車が立ち往生し、ドアや窓が開かなくなることで車内に閉じ込められる危険があります。水位が短時間で上昇すると脱出が困難になり、命に関わる事態になることも少なくありません。
早めの避難行動と、浸水が予想される道路を避ける判断が必要です。
インフラの損壊
水害によって道路の陥没、橋の破損、上下水道や電気設備の故障などインフラ被害が発生します。これにより交通が遮断されると、物資供給や救助活動が遅れる恐れがあります。
生活の混乱を最小限にするには、自治体の防災計画や復旧体制の整備が不可欠です。
水害で引き起こされる被害②二次被害

ここでは水害で引き起こされる「二次被害」について解説します。
停電・断水
水害によって発電所や変電所、水道施設が被害を受けると、長時間の停電や断水が発生します。とくに夏場や冬場は健康被害のリスクが高まるため、非常用電源や飲料水の備蓄が重要です。
ゴミ・汚泥の発生
浸水後は、大量の家財ごみや泥が発生します。悪臭や害虫の発生源となり、撤去や処理に時間と労力を要するのが課題です。
また汚泥には有害物質が含まれる場合もあり、防護具を着用して作業する必要があります。自治体の回収体制や一時保管場所の確保が不可欠です。
感染症の発生
水害後の汚水や汚泥には細菌やウイルスが含まれ、皮膚感染症や胃腸炎を引き起こす危険があります。また避難所での慣れない集団生活により、感染症が流行するケースも報告されています。
そのため復旧作業では手袋や長靴、マスクを着用し、避難所でも手洗い・うがいを徹底することが予防の鍵です。
水害で引き起こされる被害③長期的被害

ここでは水害で引き起こされる「長期的被害」について解説します。
避難所の整備問題
水害発生後、避難生活が長期化すると避難所の環境整備が課題になります。収容人数の限界やプライバシー不足、衛生環境の悪化は健康被害を招く要因です。
また冷暖房や給水設備が不十分な場合、体調不良や感染症リスクが高まります。そのため長期利用を想定した設備と、運営体制の強化が必要です。
不動産価値への影響
水害被害を受けた地域や住宅は、資産価値が下がる可能性があり注意が必要です。浸水履歴やハザードマップのリスク情報が公開されることで、売却や賃貸に不利となる場合もあります。
また住宅ローンや保険の条件にも影響が及ぶ可能性があり、将来の資産形成に対する長期的なダメージの考慮が求められます。
「水害に強い家」の設計ポイント

ここでは、水害に強い家の設計ポイントについて解説します。お施主様や工務店担当者の方などは、ぜひ参考にしてみてください。
基礎・床の高さを確保する
浸水リスクのある地域では、建物の基礎や床を高く設計することが有効です。地盤面から一定の高さを確保することで、床下や室内への浸水を防げます。
とくに床上浸水は家財や構造材への被害が大きく修繕費も高額になるため、計画段階での高さ設定は重要です。地域のハザードマップを確認し、想定浸水深以上を目安に設計しましょう。
排水計画の工夫
排水不良は、都市型水害の大きな原因です。そのため敷地内に排水溝や側溝を設け、雨水が滞留しないよう勾配を工夫するのがおすすめです。
また逆流防止弁の設置や雨水貯留タンクの活用により、下水道や排水路の負担を軽減できます。排水経路を短く、流れやすい設計にすることが被害軽減につながります。
非常用設備の設置
水害時には、停電や断水の可能性が高まります。非常用発電機やポータブル電源、飲料水の貯蔵タンクなどを設置しておくと安心です。
また配電盤やコンセントを高い位置に設置することで、浸水による感電や設備故障を防げます。ガスや給湯器も浸水リスクの低い位置に配置しておけば、被災後の生活維持が可能になります。
2階の有効活用
浸水時の避難スペースとして、2階を活用できる間取りは有効です。具体的には寝室や貴重品保管場所を2階に設けておけば、避難行動を迅速に行えます。
また2階にトイレや簡易キッチンを設置しておくと、孤立時の生活機能を維持できます。日常的にも収納やプライベート空間として活用できるため、防災と居住性を両立する設計としておすすめです。
火災保険への加入
「火災保険は火事しか補償されない」と思われがちですが、水害にも補償が適用されます。水害による建物・家財の損害は高額になりやすく、自己負担での復旧は困難なので、ぜひ活用してみましょう。
ただし契約時には補償範囲や免責額を確認し、地域の水害リスクに合わせた内容に設定しておくことが求められます。
まとめ
水害は発生頻度・被害規模ともに拡大しており、家づくりにおいても無視できないリスクです。基礎の高さ確保や排水計画、非常用設備の設置など、設計段階での備えが被害軽減につながります。
さらに2階の活用や火災保険の水災補償など、物理的対策と経済的備えを組み合わせることが重要です。地域のハザードマップを活用し、立地条件に合った最適な防災設計にすることで、長く安心して暮らせる住まいを実現しましょう。