空き家活用アイデア12選|メリット・デメリットや国土交通省の補助金事業

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「空き家の活用」についてピックアップします。全国で増加し続ける空き家は、もはや「地方だけの問題」ではなく、都市部でも身近な社会課題です。一方で、空き家はリフォームや用途転換によって、再活用できる大きな可能性を秘めています。

本記事では所有者・利用者それぞれの視点から、活用アイデア12選をご紹介します。活用のメリットやデメリット、国土交通省補助金制度についてもわかりやすく解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

空き家の増加が社会問題に|「田舎だけ」ではない

出典:総務省統計局,令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果,https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html?utm_source=chatgpt.com,参照日2025.5.20

近年、空き家の増加が深刻な社会問題となっています。総務省の調査によると、空き家率は全国で約14%に達し、もはや「田舎だけの問題」ではありません。

主な要因は人口減少や高齢化、相続後の放置等が考えられ、都市部も含めて空き家が増加しています。放置された空き家は防災・防犯・衛生の面でも地域に悪影響を及ぼすため、活用や対策が急務となっています。

空き家活用のメリット

ここでは、空き家を活用するメリットについて解説します。

事故・災害リスクの低減

空き家を放置すると、老朽化による倒壊や火災、不法侵入による事故などのリスクが高まります。とくに屋根や外壁の落下、雑草の繁茂などは近隣にも被害を及ぼしかねません。

そのため適切に活用して人の出入りや管理がある状態にすることで、建物の安全性を保ち、災害や犯罪を未然に防ぐ必要があります。

景観・治安の改善

空き家は外観の劣化やゴミの不法投棄などにより、地域の景観を損なう原因となります。また人の気配がないことで犯罪の温床になりやすく、防犯面でも心配です。

空き家が活用されることで建物の手入れが行き届き、周囲の住民の安心感が高まることで地域全体の印象も向上します。

地域活性化につながる

空き家を店舗やカフェ、シェアハウスなどに活用することで新たな人の流れや雇用を創出でき、地域経済に好循環が生まれます。若者や移住者の受け入れにもつながり、高齢化が進む地域の再生に貢献できます。

そのため空き家は「負の資産」にしてしまうのではなく、まちづくりの資源として活用することが重要です。

空き家活用のデメリット・注意点

ここでは、空き家活用のデメリットや注意点を解説します。

維持管理費用が掛かる

空き家を活用する際には、建物の修繕・リフォームに加えて、定期的な清掃や設備の点検、火災保険の加入など、継続的な維持管理費が発生します。

とくに築年数が古い建物は、配管や断熱、耐震性の改修が必要となることも多く、想定以上の出費になる可能性もあります。活用目的に応じた費用計画が重要です。

限定的な利用に終わる可能性がある

空き家を地域拠点や店舗として活用しても、需要や人の流れが少ないエリアでは十分な利用が得られず短期間で終了してしまうこともあります。

また法的規制や周辺住民の理解不足により、活用の自由度が制限される場合もあります。そのため長期的な視点で、地域との連携や柔軟な活用方法を検討しましょう。

空き家の活用アイデア①所有者向け

ここでは「所有者向け」の空き家活用アイデアを紹介します。建物を残す方法の他、売却したり更地にしたりするアイデアもあります。

リフォームして居住する

空き家を自分や家族の住まいとして活用する方法です。既存の建物をリフォームすることで、比較的低コストで住環境を整えられます。

また思い出のある家を、そのまま再生できるのも大きな魅力です。耐震補強や断熱改修を行えば、快適で安全な暮らしも実現できます。地域によっては、補助金制度を活用できる場合もあります。

建て替える

老朽化が進んだ空き家の場合は、リフォームよりも建て替えを選択する方が合理的なこともあります。新たな住まいや賃貸物件、店舗などに建て替えることで、資産価値の向上が期待できます。

ただし再建築不可の土地や、建築基準の制限には注意が必要です。そのため、事前に専門家に相談するようにしましょう。

売却する

空き家を手放したい場合、売却は有力な選択肢です。不動産会社に仲介を依頼する方法のほか、「空き家バンク」などの制度を利用すれば、地域活性化を目的とした買い手とマッチングされやすくなります。

ただし建物の状態や立地によっては買い手がつきにくいこともあるため、価格設定や情報公開に工夫が必要です。

相続放棄する

相続した空き家が老朽化していたり活用予定がなかったりする場合は、相続自体を放棄するという選択肢もあります。

この方法だと管理責任や固定資産税といったコストを回避できますが、相続放棄には期限(原則3か月以内)があり、相続人全員の意思も関係するため、手続きには注意が必要です。

【参考】NPO法人 空家・空地管理センター|空き家の相続放棄

解体する

空き家の活用が難しい場合、解体して更地にする方法もあります。放置による倒壊リスクや近隣トラブルを防ぐために有効で、土地活用の幅も広がります。

ただし解体費用が数十万円~数百万円かかる場合もあるため、自治体の補助制度などを確認しておくことが大切です。

空き家の活用アイデア②利用者向け

ここでは「利用者向け」の空き家活用アイデアを紹介します。最近では空き家バンク等を通じて空き家を活用できる機会が広がっており、ビジネスや個人での利用にもおすすめです。

賃貸住宅

空き家をリフォームして賃貸住宅として活用すれば、住宅を探す人に新たな住まいを提供できます。

とくに単身者や子育て世帯、高齢者など、ニーズに合った設備や間取りにすることで、地域に定住者を呼び込むことも可能です。家賃収入を得られるため、所有者にとっても経済的なメリットがあります。

宿泊施設

空き家をゲストハウスや民泊施設として活用すれば、観光客向けの宿泊ニーズに応えられます。とくに歴史的建物や趣ある古民家は「非日常」の体験を提供でき、差別化がしやすい分野です。

ただし地域との関係構築や営業許可の取得が必要になるため、準備や運営体制は慎重に整える必要があります。

介護福祉施設

空き家を改修して、デイサービスやグループホーム、小規模多機能型居宅介護施設などに活用する方法です。高齢化が進む地域では、身近な介護サービスの需要が高まっており、地域福祉の拠点として貢献できます。

活用時にはバリアフリー対応や設備基準のクリアが必要ですが、補助金の対象になる場合もあります。

シェアオフィス・コワーキングスペース

空き家をリノベーションしてシェアオフィスやコワーキングスペースにすれば、フリーランスやリモートワーカーの拠点として活用できます。

とくにWi-Fiや電源などの基本設備を整えることで、都市部に限らず地方でもニーズがあります。地域内の交流や、起業支援にもつながる活用方法です。

店舗

空き家をカフェや雑貨店、美容室などの店舗に活用すれば、地域に新たな魅力や雇用を創出できます。

築年数のある物件でも「味のある雰囲気」として価値が見いだされる場合もあり、低コストで独立開業を目指す人にとっては好機となります。立地や周辺のニーズを見極めることが、成功の鍵です。

トランクルーム・貸倉庫

住宅地や交通の便が良い場所にある空き家は、トランクルームや小規模な貸倉庫としての活用も可能です。

個人や法人が物品を一時保管するスペースとして需要があり、内装を大きく改修せずに始められる点もメリットです。防犯・湿気対策など、管理面には十分配慮しましょう。

コインパーキング

空き家を解体した更地や庭部分を活用し、時間貸し駐車場(コインパーキング)にする方法です。初期投資は必要ですが、立地次第では安定した収益が見込めます。

住宅地や観光地の近くであればニーズが高く、土地を手放さずに活用したい場合にも有効です。運営は、専門業者に委託することも可能です。

国土交通省による補助金|空き家対策モデル事業

出典:国土交通省,令和7年度 空き家対策モデル事業の募集を開始,https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000226.html,参照日2025.5.20

空き家活用問題を解決するため、国土交通省では「令和7年度 空き家対策モデル事業」を実施しています。優れたアイデアには補助金が交付され、空き家対策の推進に寄与する成功事例として全国的に横展開を図る予定です。

【参考】国土交通省|令和7年度 空き家対策モデル事業の募集を開始

募集する事業

募集する事業は、下記3通りあります。

  • ア) ソフト事業

事業スキーム構築、普及啓発、体制整備、調査検討など空き家対策に関するソフト的な取組を行う事業。

  • イ) ハード事業

空き家の改修工事、除却工事又は土地整備(以下「改修工事等」という。)に関する技術や工法、施工プロセス等において、先進性や創意工夫などのモデル性を有するハード的な取組を行う事業。

  • ウ) ソフト・ハード事業

ア)及びイ)の取組を行う事業。

※ イ)・ウ)にあっては、採択された場合は、交付申請時までに改修工事等を行う物件を確定する必要があります。

募集テーマ

募集テーマは、下記3項目です。

  • テーマ1 官民連携による独創的な空き家に関する相談対応の充実

地方公共団体と NPO、法務、不動産、建築、金融、福祉等の専門家など空き家対策に係る多様な主体が連携するとともに、独創的なアイディアに基づく空き家に関する相談窓口の設置・相談員の派遣などの取組を対象とします。(地方公共団体と民間事業者等が連携して取り組むことが必要です。)

  • テーマ2 空き家に関連する新たなビジネスモデルの構築

異業種間の連携やデジタル技術の活用により空き家対策を効率化・合理化するツールやサービスの開発・提供を行う新たなビジネスのスタートアップなど空き家の調査・活用・除却の推進に資する民間事業者等の取組を対象とします。

  • テーマ3 新たなライフスタイルや居住ニーズに対応した空き家の活用等

空き家を活用した子育て世帯への住まいの提供や二地域居住など、新たなライフスタイル・居住ニーズに対応した空き家の多様な活用や流通を促進する NPO、民間事業者等の取組を対象とします。

補助金額

補助金額は、下記の通りです。

  • ア) 調査検討、計画策定、普及・広報等に要する費用:定額
  • イ) 空き家の改修工事に要する費用(設計費等含む):1/3※1
  • ウ) 空き家の除却工事に要する費用(設計費等含む):2/5※2
  • エ) 除却後の土地整備に要する費用 :1/3

※1 木造建築物の場合 220,000 円/㎡、非木造建築物の場合 332,000 円/㎡を限度とします。 面積当たりの上限額は、改修を行う部分の面積が対象となります(建物の延べ床面積ではありません)。

※2 木造建築物の場合 33,000 円/㎡、非木造建築物の場合 47,000 円/㎡を限度とします。なお、通常想定される除却費と比較して高額となる次に掲げる場合は、「かかりまし費用」を補助対象に追加できます。

  • 崖地や狭小敷地、無接道敷地等に立地し、通常と異なる工法により除却する場合
  • 離島等に立地し、廃材等の処分場が近くにない場合
  • 1㎡当たりの除却単価の算出が困難な空き家に附属する煙突や門塀等の除却、吹き付けアスベスト等を除却する場合
  • その他国土交通省(以下「当省」という。)がやむを得ないと認める場合

まとめ

空き家は放置すればリスクとなりますが、活用方法によっては地域に貢献し、収益にもつながる貴重な資源です。所有者・利用者それぞれの立場で可能性を見つけることが、空き家問題解決の一歩となります。国土交通省の補助制度も活用しながら、適切な選択肢を検討してみましょう。