実家じまいの手順や相談の注意点|補助金で費用負担軽減も

掲載日:
Category: 住宅業界動向

目次

トレンドワード:実家じまい

「実家じまい」についてピックアップします。国交省でも空き家を問題視しており、法改正を実施しています。本記事では実家じまいの手順や課題、補助金制度について解説します。片付けや業者への売却にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

実家じまいとは|田舎だけじゃない?都心部でも課題に

「実家じまい」とは、実家を処分・解体・売却することを指します。高齢化や少子化が進む中で、地方だけでなく都心部でも空き家問題が深刻化しており、親が亡くなった後に実家をどうするかが社会的な課題となっています。

子世帯が実家の相続や管理負担の問題に直面し、維持できずに手放すケースが増加しているのが現状です。

国交省|空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律

出典:国土交通省,空き家対策特設サイト「空き家の問題とは? 法改正について」,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html,参照日2025.3.27

使用目的のない空き家は、この20年で1.9倍の約349万戸に増加しています。空き家は今後もさらに増えることが予想され、除却等のさらなる促進が必要です。

そのため国土交通省では「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)」を定めています。これは空き家が周囲に悪影響を及ぼす前に、有効活用や適切な管理を強化するのが目的です。

具体的には空き家の所有者の責務強化や、特定空き家に対する代執行の円滑化が盛り込まれています。これにより、空き家の除却や活用の広がりが期待されています。

【参考】国土交通省|「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)」

実家じまいの方法・種類

ここでは、具体的な実家じまいの方法や種類について解説します。

そのまま売却する

実家建物の状態が良好な場合、リフォームや修繕を行わずに土地と建物をセットで売却できます。築年数が古い物件でも、立地が良ければ買い手が見つかることも多いようです。

売却益が得られるため相続税や管理コストの負担を軽減できますが、古さや劣化の程度によって価格に影響することがあります。 

解体後に売却する

とくに築古物件や老朽化が進んでいる場合、実家を解体して更地にした方が売れやすくなります。解体費用が掛かるため初期負担はありますが、建物付きよりも売れやすく、高値での売却が期待できることもあります。また、土地としての活用方法が柔軟になる点もメリットです。

賃貸に出す

実家を賃貸に出せば、家賃収入を得られます。空き家のまま放置するよりも、管理コストを賄えるため有効活用となります。

ただしリフォームや設備更新が必要な場合があり、維持管理の手間もかかる点には注意しましょう。また空室リスクや賃貸トラブルへの対応が必要で、地域の賃貸需要を見極めることが重要です。

実家じまいの手順

ここでは、実家じまいの際の手順をご紹介します。

実家処分について親族と相談する

実家じまいを進める際、まず親族としっかり相談することが重要です。相続人が複数いる場合には意見の食い違いが発生しやすいため、事前に全員で話し合い、意向を確認しましょう。

具体的には売却や賃貸の方向性、遺品の扱いについて合意を得ることが大切です。親族間でのトラブルを避けるためにも、専門家を交えて客観的な意見を取り入れるとスムーズに進められます。 

不用品を片付ける

実家じまいにおいて、不用品の片付けは大きな労力を要します。長年蓄積された家財や思い出の品を仕分けし、必要な物と処分する物に分類しましょう。

リサイクルショップや自治体の粗大ごみ回収を活用するほか、専門の片付け業者にまとめて依頼する方法もあります。思い入れのある品は写真に残すなどして、スムーズな片付けを心掛けましょう。

業者に相談する

実家を売却、解体、賃貸に出す際は、不動産会社や解体業者、賃貸管理会社に相談することが重要です。信頼できる業者を選ぶために、複数社から見積もりを取り比較検討しましょう。

不動産の査定や解体費用、賃貸の管理体制などを確認し、契約内容をしっかり理解しておくことが大切です。専門家のアドバイスを受けることで、リスクを軽減できます。  

実家を手放す

準備が整ったら、いよいよ実家を手放す手続きに入ります。売却の場合は契約締結後に名義変更や登記手続きを進め、賃貸の場合は入居者募集と管理契約を結びましょう。

そして解体して土地を売る場合は解体工事の進行を見守り、完了後に売買契約を行います。手続き完了後も税務処理が発生するため、できれば税理士のサポートを受けると安心です。

実家じまいの費用相場

ここでは、実家じまいにかかる費用相場について解説します。ただしあくまでも一般的な費用目安なので、実際の費用とは異なる場合があります。詳しい費用については、専門業者に見積もり依頼をしてみましょう。

不用品・廃棄物処分費用

実家じまいでは、不用品や廃棄物の処分費用が大きな負担となります。一般的には3LDKで15~50万円程度が目安ですが、処分物の種類により異なります。

遺品整理業者に依頼すると、一軒家全体で数十万円以上かかるケースもあります。リサイクルできる物は買取業者に売却し、自治体の粗大ごみ回収を併用することでコストを抑えられます。 

実家の解体費用

解体費用は建物の構造や広さにより異なりますが、木造住宅では1坪あたり3万~5万円が一般的です。

ただし敷地内のコンクリート撤去やアスベスト処理があると、追加費用が発生します。解体業者に事前に見積もりを取り、解体後の土地整備も含めて検討することが大切です。

不動産業者への手数料

実家を売却する際、不動産業者に支払う仲介手数料が発生します。宅地建物取引業法により上限が定められており、「売買価格の3%+6万円+消費税」が一般的な計算式です。

たとえば3,000万円の売却なら、約96万円が仲介手数料となります。手数料は成功報酬型であり、売却が成立しない限り支払いは不要です。複数の業者に査定依頼し、適正価格を見極めましょう。  

【参考】国土交通省|宅地建物取引業法関係

引っ越し費用

実家じまいに伴い、新居や他の親族宅への引っ越し費用がかかります。家族構成や荷物量により異なりますが、一般的には10万~30万円程度が相場です。

シーズンや距離によって費用が変動するため複数の引っ越し業者に見積もりを依頼し、相見積もりでコストを抑えることがポイントです。

実家じまいでよくある後悔

実家じまいはデリケートな問題であり、後悔してしまうケースも多いようです。事前に知っておくことで、失敗のない実家じまいを実現しましょう。

親が生きている時に相談しておくべきだった

実家じまいで後悔するケースとして多いのが、親が生きているうちに相談しておかなかったことです。親の思いや意向を確認しないまま進めると、亡くなってから「こうしてほしかったのでは」と悔やむことが少なくありません。

思い出の品や貴重品の所在がわからず困ることもあるため、生前から親と話し合いを重ねておくことが大切です。

思い出を処分するのがつらい

実家じまいでは、長年大切にしてきた思い出の品を処分する辛さに直面することが多いようです。家具や手作りの作品など、感情がこもった物ほど手放す決断が難しくなります。

すべてを残すわけにはいかないため、写真に収めたり一部を記念として保管するといった工夫が必要です。心の整理をつけながら、少しずつ進めることが大切です。

実家が売れない

いざ売却を進めても、立地条件や物件の老朽化により実家がなかなか売れないケースがあります。とくに地方の空き家や築古物件は需要が少なく、売却価格を下げても買い手が見つからないこともあります。

売却が難航すると管理コストがかさんで負担が増すため、リフォームや解体も視野に入れつつ専門業者に相談しながら戦略を立てることが必要です。

実家じまいのきっかけやタイミング|放置すると問題も

実家じまいを考えるきっかけとしては、下記の事例が挙げられます。早いタイミングで実施した方が負担が少なくなることも多いため、ぜひ参考にしてみてください。

①親が施設に入居した時

親が介護施設や老人ホームに入居した場合、実家が空き家となり管理が必要になります。空き家のまま放置すると老朽化が進み、防犯上のリスクや資産価値の低下を招くため、早めに実家じまいを検討することが大切です。

親が健在のうちに意向を確認し、売却や賃貸など適切な活用方法を話し合っておくとスムーズに進められます。

②親が亡くなった時

親が亡くなった時、相続手続きと共に実家の処分を考える必要が出てきます。感情的に整理がつかず放置しがちですが、早期に対応しないと固定資産税や維持管理費がかかり続けます。

そのため遺産分割協議や相続登記も含め、親族と話し合いながら進めることが重要です。専門家に相談することでトラブルを避け、適切な判断をしましょう。

③相続した実家から引っ越す時

親から実家を相続しても、別の場所に住んでいる場合は維持管理が負担になることがあります。空き家状態が長引けば老朽化やトラブルリスクが増大するため、引っ越しを機に売却や賃貸などの活用方法を検討しましょう。

相続税の支払いが必要な場合もあるので早めに資産価値を把握し、経済的負担を減らす対応が求められます。

④実家の維持管理を負担に感じた時

遠方に住んでいると、実家の維持管理が大きな負担となります。空き家対策が不十分だと劣化が進行し、資産価値が下がることもあります。

管理コストが負担になり始めたら、実家じまいを検討するタイミングといえるでしょう。放置せずに専門業者に相談し、最適な処分方法を見つけることが大切です。

⑤近隣に迷惑がかかっている時

空き家となった実家が老朽化して外壁が崩れたり雑草が伸び放題になったりすると、近隣住民に迷惑をかけることになります。苦情が寄せられて「特定空き家」として行政指導や是正命令が発生するケースもあり、放置するリスクは高まります。

トラブルを未然に防ぐためにも、維持が難しいと感じた時点で実家じまいを考え、適切な対策を講じることが大切です。

実家じまいで活用できる補助金・控除

ここでは、実家じまいで活用できる補助金や税控除について解説します。

所得税|空き家譲渡所得より3,000万円控除の特例

出典:国土交通省,空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除),https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html,参照日2025.3.27

相続した実家を売却する際、一定の条件を満たすと最大3,000万円の特別控除を受けられます。元は「亡くなった親が実家に住んでいたこと」が条件でしたが、税制改正により、親が老人ホームに入居していた場合でも一定の条件を満たせば対象となるようになりました。  

また2023年(令和5年)の税制改正で、この特例措置の期限が2027年(令和9年)12月31日まで延長されました。さらに売却時に耐震性がない家屋であっても、売却の翌年2月15日までに耐震改修工事を行えば控除の対象となります。

家屋を解体して土地だけを売却する場合も同様です。この新しい措置は2024年(令和6年)1月1日以降の売却に適用されます。売却時には、税理士などの専門家に相談しながら進めると安心です。

【参考】国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

東京都|東京都空き家家財整理・解体促進事業

出典:東京都,東京都空き家ワンストップ相談窓口,https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/akiya/mado/tokyo,参照日2025.3.27

東京都では空き家状態の早期解決を推進するため、空き家の家財整理又は解体費用に対して補助金を交付しています。具体的な補助金額は、下記の通りです。

  • 都内に所在する空き家の家財整理に係る費用(消費税及び地方消費税を除いた額)に2分の1を乗じた金額とし、50,000円を限度とする。ただし、1,000円未満の端数があるときは、これを切り捨てる
  • 都内に所在する空き家の解体に係る費用(消費税及び地方消費税を除いた額)に2分の1を乗じた金額とし、100,000円を限度とする。ただし、1,000円未満の端数があるときは、これを切り捨てる。

【参考】東京都|東京都空き家家財整理・解体促進事業

実家じまいでの税金注意点|損しないためのポイント

ここでは実家じまいに関する税金の注意点を解説します。知らないと税金が余計に多くかかるケースもあるため、実家じまいの前にぜひチェックしておきましょう。

譲渡所得税|不動産売却での契約書が無いと高額に

実家を売却した際に発生する譲渡所得税は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた額に対して課税されます。しかし親が家を建てた際の契約書や領収書が無いと、取得費を「売却価格の5%」として計算されてしまい、結果的に高額な税金を支払うことになります。

取得費が少ないほど課税額が大きくなるため、契約書や費用明細をしっかり保管しておき正確な申告を行うことが重要です。

【参考】国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)No.3258 取得費が分からないとき

固定資産税|「特定空家等」に対し住宅用地特例を解除

出典:国土交通省,空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html,参照日2025.3.27

「住宅用地特例」とは、住宅用地について固定資産税負担が軽減される特例制度です。しかしこれが空き家の解体が進まない一因と考えられ、問題となっていました。

そこで国交省では「特定空家等」や「管理不全空家」に対して、固定資産税の住宅用地特例を解除する措置を設けています。これにより、税額が最大で6倍に増加する仕組みです。

そのため空き家の維持が難しい場合は解体や売却を検討し、特例解除を回避することが大切です。

【参考】国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報

相続税|不動産売却後だと高くなる場合も

実家を売却する場合、相続税についても考慮しましょう。遺産に不動産が含まれていると、その評価額は「相続税路線価」などを基に算出されますが、この金額は実際の売却価格の約8割程度に抑えられています。

しかし売却して現金化した後に相続が発生した場合、相続財産の総額が増えてしまうため、相続税が高くなる可能性があります。そのため売却のタイミングに注意し、相続税が高額になるリスクを避けるためにも事前に専門家に相談しておくことが重要です。

【参考】国税庁|No.4152 相続税の計算

実家じまいでよくある疑問

ここでは、実家じまいでよくある疑問を解説します。

仏壇はどこに移動する?

仏壇は基本的に親族が引き取るか、自宅に移動して供養を続ける方法が一般的です。しかし引き取れない場合や不要になった場合は、寺院での「魂抜き」(閉眼供養)を行い、処分することもあります。

仏壇供養専門業者に依頼すると、適切な供養と処分ができます。供養方法については、宗派や地域の慣習に合わせましょう。

実家じまいの一般的な期間は?

実家じまいにかかる期間は、家財整理や不動産売却の手続きなどを含めておおむね3ヶ月~1年が一般的です。不用品の片付けやリフォームが必要な場合は、さらに時間がかかります。

また親族間での相談や相続手続きにも時間がかかることがあるため、余裕を持って計画することが大切です。専門業者に依頼するとスピードアップが図れるので、効率的に進めたい場合は相談を検討しましょう。

まとめ

実家じまいでは費用や手間がかかるため、ついつい億劫になりがちです。しかしそのまま空き家として放置すると近隣に迷惑を及ぼす場合もあるので、早めの対応が求められます。本記事でご紹介した補助金や税制を利用して、適切なタイミングで実家じまいに取り組みましょう。