水道老朽化の事故多発|原因と対策・新築での注意点まとめ

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トレンドワード:水道の老朽化
「水道の老朽化」についてピックアップします。近年、「水道の老朽化」を背景とした漏水や断水事故が全国各地で発生しています。高度経済成長期に整備された水道管や施設は更新時期を迎えていますが、人口減少や人手不足、財政難などにより対策が十分に進んでいないのが現状です。
こうした水道インフラの問題は、自治体だけでなく住宅計画にも無関係ではありません。そこで本記事では、水道老朽化の原因や国の対策を整理するとともに、新築計画で注意すべきポイントについて解説します。
水道の老朽化が課題に|事故多発

全国各地で、水道管の破損や漏水による断水事故が相次いでいます。高度経済成長期に整備された水道インフラの多くが法定耐用年数を超え、更新が追いついていないことが大きな要因です。
さらに水道事業を担う自治体では職員の高齢化や人手不足、人口減少による収入減が深刻化しています。こうした問題は「行政の課題」にとどまらず、新築住宅の計画や土地選び、設備提案にも影響を及ぼします。
水道老朽化の原因

ここでは、水道の老朽化が進んでいる原因を整理しておきます。
耐用年数の超過
水道管や浄水施設の多くは、1950~1970年代初頭の高度経済成長期に整備されました。一般的に水道管の法定耐用年数は40年とされていますが、現在ではその年数を大きく超えて使用されている管路が全国的に増加しています。
しかし更新工事には多額の費用と長期間の工事が必要となるため、計画的な更新が追いついていないのが現状です。
職員の高齢化・人手不足

水道事業を支える自治体職員の高齢化が進み、現場経験や専門知識を持つ技術者が減少しています。一方で新規採用は十分に進まず、人手不足が常態化しています。
その結果、日常的な点検や予防保全が後回しになり、トラブルが発生してから対応する「事後対応型」の運営になりがちです。事故発生時の復旧が遅れるケースもあり、住民生活や建築計画に影響を及ぼす要因となっています。
人口減少による収入減・経営難

水道事業は利用者からの水道料金収入によって運営されていますが、人口減少や世帯数の減少により収入は年々減少しています。一方で、老朽化した設備の更新や耐震化には多額の投資が必要となり、水道事業の経営は厳しさを増しています。
料金値上げを検討する自治体も増えていますが、十分な財源確保には至っていません。この構造的な問題が、水道インフラの老朽化をさらに加速させています。
水道老朽化の対策
国土交通省では、水道老朽化への対策を講じています。ここでは、代表的な取組について解説します。
①広域連携の推進
小規模で経営基盤が脆弱な事業者が多いことから、施設や経営の効率化・基盤強化を図る広域連携の推進が重要です。これにより経営の安定化やサービス水準等の格差是正、人材・資金・施設の経営資源の効率的な活用、災害・事故等の緊急時対応力強化等の大きな効果が期待できます。
国土交通省では、人材の確保や経営面でのスケールメリットを活かした市町村の区域を越えた広域的な水道事業間の連携を推進しています。
②官民連携の推進

国土交通省では、民間事業者の技術力や経営に関する知識を活用できる官民連携を推進しています。必要な技術者・技能者の確保、育成等、民間事業者のノウハウを水道事業者等に連携し、水道事業等の基盤を強化します。
③適切な資産管理の推進

2019年の水道法改正によって、管理についての下記項目が定められました。
- 水道事業者等に、点検を含む施設の維持・修繕を行うことを義務付ける。(第22条の2)
- 水道事業者等に台帳の整備を行うことを義務付ける。(第22条の3)
- 水道事業者等は、長期的な観点から、水道施設の計画的な更新に努めなければならないこととし、そのために、水道施設の更新に要する費用を含む収支の見通しを作成し公表するよう努めなければならない。(第22条の4)
④分散型水道

分散型システムとは、中山間地域等において用いられる小規模で簡易な水供給システムのことを指します。
従来の「集約型水道」は、都市部だけでなく過疎地域にも上下水道管路を敷く形式でした。しかし人口減少や人口密度の低下、立地適正化計画による誘引施策等により、中山間地域や郊外部等では集約型での維持管理が難しくなるのが課題です。
そこでインフラの効率的な運営、災害時における機能確保等といった面から「分散型」への移行が検討されています。給水対象世帯数が少ない集落等においては、集約型システムより分散型システムの方が効率的です。
分散型水道の種類①小規模な水道施設

「小規模な水道施設」は、地域の水源から取水し、小型の浄水処理装置により浄水処理をした上で配水する従来型の小規模な水道施設です。人口減少や高齢化、過疎化等の影響により、経済的で維持管理が容易な浄水処理技術のニーズが高まっています。
分散型水道の種類②運搬送水

「運搬送水」とは、給水車で集落に運搬する方式です。
宮崎市では、平成20年度に簡易水道事業と飲料水供給施設を上水道に統合する計画が策定されましたが、遠隔地である「天神地区・持田地区」については給水車による運搬送水に切り替えを実施しています。20 年間の費用を算定すると、給水車の更新等も含めて運搬送水が約 1.9 億円安くなります。
分散型水道の種類③各戸型浄水装置

「各戸型浄水装置」は、住宅向け小規模分散型水循環システムです。
国土交通省では、上下水道一体革新的技術実証事業(AB-Cross)において、石川県珠洲市を実証フィールドとして、住宅向け小規模分散型水循環システムの技術検証を実施しています。本格導入に向けて、再生・循環水の水質検査項目等の検討が必要です。
新築計画での注意点

ここでは、新築計画における水道の注意点についてご紹介します。とくに人口減少地域での新築では、インフラについても検討しておく必要があります。
土地選びではハザードマップや人口密度を考慮する
新築計画では、建物だけでなく周辺インフラの状況も含めて土地選びを行うことが重要です。洪水や土砂災害のリスクは、自治体が公表しているハザードマップで事前に確認できますが、あわせて人口密度や将来的な人口動向にも注目する必要があります。
とくに人口減少が進む地域では、水道管の更新や維持管理が後回しにされるリスクがあります。長期的に安心して住めるかという視点で、インフラの持続性を見極めましょう。
災害に強い設備を付けておく
地震や豪雨などの災害時には、水道インフラが被害を受けて断水が長期化するケースも少なくありません。そのため、新築時には非常時を想定した設備の導入を検討しておくことが有効です。
具体的には非常用の給水タンクや貯水機能を備えた設備、井戸や浄水装置を併用することで、一定期間の生活用水を確保できます。平常時だけでなく非常時にも対応できる設備提案は、住宅の安心価値を高める要素となります。
まとめ
水道の老朽化は、耐用年数の超過や人材不足、人口減少による経営悪化といった複数の要因が重なって進行しています。国や自治体では広域連携や官民連携、分散型水道の導入などの対策が進められていますが、住宅を建てる側にも備えが求められます。
新築計画では、立地条件やインフラの持続性を見極めるとともに、災害時にも水を確保できる設備を検討することが重要です。