女性用トイレの行列問題|国交省が解消へ!課題と対策まとめ

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トレンドワード:女性用トイレの行列問題
「女性用トイレの行列問題」についてピックアップします。駅や商業施設、イベント会場などで見かける「女性用トイレの行列問題」は、設計基準や利用実態とのズレ、社会構造の変化が複合的に影響しています。
そのため国土交通省が、改善に向けた検討を本格化させている状況です。本記事では女性用トイレに行列が生じる理由を整理した上で、国の動きや具体的な対策事例について分かりやすく解説します。
女性用トイレの行列問題が起こる理由

ここではまず、女性用トイレの行列問題が起こる理由について整理しておきます。
便器の数が少ない
一般的な公共施設や商業施設では、トイレの床面積が男女同じに揃えられているケースが多く見られます。しかし女性は個室の利用が前提となるため、男性より便器の数が少なくなってしまうのが課題です。
こうした利用実態が設計に十分反映されていない場合、女性用トイレの便器数が不足して行列が発生しやすくなります。
利用時間の長時間化
女性用トイレは、身だしなみの確認や生理用品の交換、着替えなど多目的に利用される傾向があります。またすべて個室利用となるため、回転率が低くなりがちです。
さらに子ども連れでのオムツ替えや高齢者介助の増加により、1人あたりの利用時間が長くなることで、混雑時に行列が生じやすくなっています。
女性の社会進出・利用者の高齢化
以前よりも女性の社会進出が進んだことで、駅やオフィスビル、商業施設などにおける女性利用者の数は増加しています。さらに高齢化の進展により、移動や動作に時間を要する利用者も増えているのが現状です。
しかしトイレの設計が従来の利用想定のまま更新されていない場合、利用者数の増加に対応できず、女性用トイレに行列が集中する要因となります。
トイレの洋式化による占有面積の変化
近年はバリアフリー化や快適性向上の観点から、和式トイレを洋式トイレへ転換する動きが進んでいます。しかし洋式便器は和式便器に比べて1室あたりの占有面積が大きく、同じスペース内で設置できる便器数が減少しやすくなります。
その結果、女性用トイレ全体の収容力が低下し、混雑や行列が発生しやすくなっているのが課題です。
国交省が解消に動く|トイレ設置数の基準と適用のあり方に関する協議会

2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」において、女性用トイレの利用環境の改善に向けた対策の推進が位置付けられました。
これを踏まえて同年7月に「女性用トイレにおける行列問題の改善に向けた関係府省連絡会議」(議長:内閣官房副長官補)が開催され、女性用トイレに係る行列問題の改善のための下記3つの方針が示されています。
- 方針①好事例の収集と普遍化
トイレの行列改善等に積極的に取り組んでいる事例(改修によりトイレを増設した事例やIoTにより混雑状況を可視化した事例等)を収集・整理し、関係団体等を通じて施設管理者に働きかける。
- 方針2 トイレの設置数に係る基準の点検・見直し
トイレの設置数に係る基準の点検・見直しに係る共通事項や基本的な方針をガイドラインにとりまとめる。
- 方針3 仮設トイレに係る緊急の呼びかけ
イベント時の仮設トイレについて行列に著しい差が発生しないよう、主催者に広く緊急の呼びかけを行う。
女性用トイレの行列対策|事例を紹介
ここでは、女性用トイレの行列対策事例についてまとめていきます。
スライディングウォール(間仕切壁)の活用|NEXCO東日本

NEXCO東日本が管理している高速道路のトイレでは、「男女トイレリバース運用」が採用されています。男子・女子トイレに切替できるように間仕切りを設けて、一時的にトイレブースの数を調整できるのが特徴です。
とくに平日はトラックドライバーの男性が多い傾向があるため、男子トイレの数が多めに配置されています。
ジェンダーフリートイレ化|台湾

台湾では、「建築技術規則建築設備編」においてトイレの設置基準が定められています。
- 「住宅・集合住宅」、「小学校・中学校」、「その他の学校」、「一般事務所」、「工場・倉庫」、「寮」、「劇場・演芸場・集会場・映画館・カラオケ」、「駅・空港の待合室」、「その他の公共用建物」の9区分について、原則としてそれぞれ各区分ごとに定められた個数が設置されていること。
また近年では、「性別友善廁所」「無性別廁所」と呼ばれるオールジェンダートイレの設置も広がっています。すべて鍵のかかる個室タイプで、性別に関わらず利用できます。
パウダーコーナーの分離

とくに女性用トイレでは、個室内や洗面台で化粧直し等の様々な利用が発生します。そのため、個室トイレと動線を分離した位置へパウダーコーナーを設けることで混雑改善につながります。
子ども連れ用トイレの設置

小さなお子様連れの場合、個室利用時間が長くなりがちです。そのためトイレ内に子供用トイレを設けて機能分散することで、女子トイレ内の混雑改善や利便性を向上できます。
また異性のお子様同伴ではトイレが利用しづらいとの声もあることから、誰でも利用できるファミリートイレを別置する方法も注目されています。
モニターによる空室可視化

奥側のトイレブースに空室があるのに気付けず混雑してしまう場合があるため、 表示ランプによる「空室の見える化」が行列解消に有効です。
またスタジアムやサービスエリア等の大規模トイレでは、トイレブースの分岐部に空室状況がわかるモニターを設置する方法もあります。
まとめ
女性用トイレの行列問題は、便器数の不足や利用時間の長時間化、社会進出や高齢化、洋式化による設計上の制約など、複数の要因が重なって発生しています。こうした課題に対し、国交省は設置基準の見直しや好事例の普及など、制度面からの改善に動き始めました。
可変式トイレやパウダーコーナーの分離、ファミリートイレの設置など、現場レベルでの工夫も進んでいます。今後は、利用実態に即した設計と運用が期待されます。