土砂災害警戒区域とは|2026レッドゾーンが住宅ローン減税対象外に

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「土砂災害警戒区域」についてピックアップします。近年、豪雨や台風による土砂災害が全国各地で頻発し、住宅地の安全性が改めて問われています。なかでも「土砂災害警戒区域」は、不動産購入や新築を検討する上で必ず確認すべき重要なポイントです。
とくに2026年以降は、レッドゾーンに指定された区域で建築された住宅が住宅ローン減税の対象外となるなど、資金計画にも大きな影響が及びます。そこで本記事では、土砂災害警戒区域の基本から、イエローゾーン・レッドゾーンの違い、建築時の規制や注意点までわかりやすく解説します。
土砂災害警戒区域とは

ここではまず、土砂災害警戒区域の定義や調べ方について解説します。
国土交通省の定義
土砂災害警戒区域とは「急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域」のことを指します。土砂災害防止法に基づき、がけ崩れ・土石流・地すべりなどが発生した場合に、住民の生命や身体に危害が及ぶおそれがある区域として都道府県が指定するものです。
災害リスクがある土地として認識され、将来的な規制強化や資産価値への影響を考慮する必要があります。
土砂災害警戒区域の調べ方

土砂災害警戒区域は、各都道府県や市区町村が公開している「土砂災害ハザードマップ」や「防災マップ」で確認できます。例えば東京都の場合、上図のように色分けされたマップが公開されています。
また不動産取引時には重要事項説明の対象となるため、宅建業者からの説明時にも確認が可能です。住宅取得や建築計画の前には、必ず資料を確認しましょう。
土砂災害警戒区域の種類
ここでは、土砂災害警戒区域の種類について解説します。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは、「土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」です。地形の基準は、下記の数値となっています。
【土石流】
- 土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
【地すべり】
- イ 地すべり区域
- ロ 地すべり区域下端から、地すべり地塊の長さに相当する距離(250mを越える場合は250m)の範囲内の区域
【急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)】
- イ 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
- ロ 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
- ハ 急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
イエローゾーンに指定されると、土砂災害防止法に基づき下記が義務づけられています。
- 宅地建物取引業者は、当該宅地または建物の売買等にあたり、警戒区域内である旨について重要事項説明を行うこと
- 要配慮者利用施設の管理者等は、避難確保計画を作成し、その計画に基づいて避難訓練を実施すること
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは「土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域」のことを指します。
レッドゾーンに指定されると、下記の制限を受けます。
- 特定の開発行為に対する許可制
- 建築物の構造規制 等
土砂災害警戒区域のルール・制限①イエローゾーン
ここでは、「イエローゾーン」で定められているルールや制限について解説します。
警戒避難体制の整備|土砂災害防止法 第7条

イエローゾーンは急傾斜地の崩壊等が発生した場合に危害が生じるおそれがある区域で、危険の周知や警戒避難体制の整備が必要です。
- 1.市町村地域防災計画への記載(土砂災害防止法 第七条 1項)
市町村は、土砂災害警戒区域ごとに、警報の伝達方法や避難の判断基準、救助体制などを地域防災計画に定めることが義務付けられています。これにより、災害時に住民が迅速に避難できる体制を整えています。
- 2.災害時要援護者関連施設利用者のための警戒避難体制(土砂災害防止法 第七条 2項)
高齢者や障害者、乳幼児など避難が難しい人が利用する施設が警戒区域内にある場合、市町村は情報の伝達方法などを定め、円滑な避難ができる体制を整える必要があります。
- 3.土砂災害ハザードマップによる周知の徹底(土砂災害防止法 第七条 3項)
市町村は、警戒区域の位置や避難場所・避難経路を示した土砂災害ハザードマップを作成・配布し、住民に災害リスクと避難行動を周知しています。
土砂災害警戒区域の建築制限②レッドゾーン
ここでは、「レッドゾーン」で定められているルールや制限について解説します。
特定の開発行為に対する許可制|土砂災害防止法 第9条

レッドゾーンでは、住宅地分譲や学校、医療・福祉施設などの建築を目的とした開発行為は原則として制限されます。ただし土砂災害を防ぐための対策工事が技術基準を満たし、安全性が確保されていると都道府県知事が認めた場合に限り、許可されます。
建築物の構造規制|土砂災害防止法 第23、24条

レッドゾーンでは、土砂災害による建物の倒壊や損壊を防ぐため、居室を有する建築物に構造上の安全性が求められます。建築にあたっては、土砂の衝撃に耐えられる構造基準を満たしているかについて事前に建築確認申請して、建築主事の確認を受ける必要があります。
建築物の移転勧告|土砂災害防止法 第25条

レッドゾーンでは、土砂災害により重大な被害が生じるおそれのある建築物について、都道府県知事が所有者等に対し、安全な区域への移転や防災対策の実施を勧告できます。また区域内での防災工事や区域外への移転に対しては、各種支援措置が設けられています。
レッドゾーンに建築する際の注意点

ここでは、レッドゾーンに建築する際の注意点について解説します。とくに2026年は住宅ローン減税への影響が生じるため、新築住宅購入等を検討されている場合にはチェックしておきましょう。
2026年、住宅ローン減税の対象外に
2026年以降、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に新築される住宅は、原則として住宅ローン減税の対象外となります。これは、災害リスクの高い区域への居住を避けて災害リスクを回避するのが狙いです。
住宅ローン減税は総支払額に大きく影響する制度であり、対象外となることで実質的な負担増につながります。そのためレッドゾーンでの建築を検討する場合は、減税が受けられない前提で資金計画を立てる必要があります。
火災保険の適用外になるリスクも
レッドゾーンに建築した住宅は、火災保険や地震保険の契約条件が厳しくなる場合があります。保険会社によっては土砂災害による損害が補償対象外となったり、保険料が割高になったりするケースもあります。そのため、事前に保険会社に確認しておくのが安心です。
まとめ
土砂災害警戒区域は災害リスクの目安になるだけでなく、建築制限や税制、保険、住宅ローン条件にも直結します。とくにレッドゾーンでは建築や構造に厳しい規制が課されるだけでなく、2026年以降は住宅ローン減税の対象外となる点に注意が必要です。
住宅やマンションの購入・新築を検討する際は必ずハザードマップで区域指定を確認し、将来の負担やリスクを踏まえて慎重に判断しましょう。