残クレ住宅ローンとは|メリット・デメリットや条件を解説

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「残クレ住宅ローン」についてピックアップします。近年、住宅価格や土地価格の高騰を背景に、従来の住宅ローンでは返済負担に不安を感じる人が増えています。そうした中で注目されているのが「残クレ住宅ローン(残価設定型住宅ローン)」です。
将来の住宅価値を見込んで返済額を抑えられる一方、仕組みが新しく、十分な理解がないまま利用するとリスクを伴う可能性もあります。そこで本記事では、残クレ住宅ローンの仕組みやメリット・デメリット、向いているケースを整理して分かりやすく解説します。
残クレ住宅ローンとは

ここでは、残クレ住宅ローン(残価設定型住宅ローン)について解説します。
残クレ住宅ローンの仕組み・条件
残クレ住宅ローン(残価設定型住宅ローン)とは、将来の住宅価値(残価)をあらかじめ設定し、残価を除いた金額のみを分割返済する仕組みの住宅ローンです。毎月の返済額を抑えられる点が特徴で、一定期間後に「残価を一括返済」「借り換え」「住宅の売却」などを選択します。
残クレ住宅ローンの主な条件は、下記の通りです。
- ①認定長期優良住宅
- ②指定金融機関で借り入れる
利用する金融商品によって条件が異なる場合がありますが、売却を前提としていることから基本的に認定長期優良住宅レベルの性能が求められます。そのため、将来の資金計画まで含めた慎重な検討が必要です。
残クレ住宅ローンの種類
残クレは最初の借入時は通常の住宅ローンと同じですが、一定期間経過後に買取や明け渡し等を選ぶ形式となります。ここでは、残価設定月以降に選べる対応の種類について解説します。
①返済額軽減オプション
返済額軽減オプションとは、残価をあらかじめ据え置くことで毎月の返済額を抑える仕組みです。住宅価格のうち将来価値と見込まれる部分を返済対象から外すため、子育て期など支出が多い時期でも無理のない返済計画を立てやすくなります。
契約者が亡くなった後は、住宅が売却されてローンを精算できるため、相続人に負担を残しません。しかし一方で元本の減りが遅く、総返済額や金利負担が増える可能性がある点には注意が必要です。
②残価買取オプション
残価買取オプションとは、契約期間満了時に金融機関や提携事業者が住宅を買い取り、その代金で住宅ローンを完済できる仕組みです。買取価格はあらかじめ設定された残価と同額となるため、市場価格の下落や売却環境に左右されず、確実にローンを完済できる点が特徴です。
一方で住宅は手放すことになり、そのまま住み続けることはできません。将来の住み替えを前提とする場合や、価格変動リスクを避けたい人に適した選択肢といえます。
③オプションを行使しない
残クレ住宅ローンでは、オプションを行使しない方法も選べます。
・住宅を購入する(住宅ローンの一括返済)
オプションを使用せずに住み続ける場合、契約期間終了時に設定された残価分を一括で支払う方法があります。将来的にまとまった資金が見込める場合や、住み続ける意思が明確な場合に適しています。
ただし残価が高額になってしまうケースが多く、資金準備が不十分だと家計への負担が大きくなる点がデメリットです。
・残価分の住宅ローンを組み直す
残価分の住宅ローンを組み直す方法は、負担を分散しながら住み続けたい場合に適しています。しかし金利条件次第では総返済額が増えるため、将来の収支計画を踏まえた判断が重要です。
残クレ住宅ローンのメリット

ここでは、残クレ住宅ローンのメリットについて整理しておきます。
返済金額を抑えられる
残クレ住宅ローンは、将来の残価をあらかじめ差し引いた金額が返済対象となるため、毎月の返済金額を抑えられる点が大きなメリットです。借入当初の返済負担が軽くなることで、収入が低めの子育て期間でも資金に余裕を持った家計管理が可能になります。
その分、教育費や貯蓄に資金を回しやすく、ライフステージに合わせた柔軟な住宅取得を実現できます。
残価買取が保証されている
残クレ住宅ローンでは、契約時に設定した残価での買取が保証されているケースが多く、将来の住宅価値の下落リスクを抑えられます。市場環境や不動産価格の変動に左右されず、残債と同額で買い取ってもらえるため、売却時にローンが残る心配が少ないのが特徴です。
つまり住み替えを前提とした場合でも、出口戦略を立てやすいローンといえます。
残クレ住宅ローンを国交省が推進する背景

国土交通省は「令和5年度住宅ストック維持・向上促進事業のうち良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業における補助事業者の選定について」で、「残価設定型住宅ローンの対象住宅拡大に資する住宅維持管理支援のためのインフラ構築推進協議会」を採択しています。
ここでは、国土交通省が残クレ住宅ローンを後押しする背景について解説します。
住宅・土地価格高騰への対策
近年の住宅・土地価格の高騰により、従来型の住宅ローンでは取得が難しくなる世帯が増えています。しかし残クレ住宅ローンを活用することで初期の返済負担を抑えられ、住宅取得のハードルを下げられるのがメリットです。
国土交通省がこれを後押しする背景には、価格上昇局面でも無理のない資金計画で住宅取得を可能にし、住宅市場の停滞を防ぐ狙いがあります。需要の下支えを通じ、持続的な住宅流通を実現することが目的です。
長期優良住宅の普及促進
残クレ住宅ローンは将来価値を前提に残価を設定するため、住宅の性能や維持管理状況が重視されます。そのため耐久性や省エネ性に優れ、適切な管理が前提となる「長期優良住宅」との親和性が高い点が特徴です。
国土交通省は維持管理支援のインフラ整備と併せて残クレを活用することで、良質な住宅ストックの形成と流通を促進し、住宅市場の転換を図っています。
残クレ住宅ローンがおすすめなケース
ここでは、残クレ住宅ローンがおすすめなケースをご紹介します。利用を検討されている場合、ぜひ参考にしてみてください。
相続人がいない
相続人がいない、または住宅を相続させる予定がない場合、残クレ住宅ローンは合理的な選択肢となります。残価設定により最終的な処分方法があらかじめ想定されているため、死亡時には残価買取などを活用してローンを完済でき、相続手続きや不動産処分の負担が残らないのがメリットです。
住宅ローンの返済に不安がある
将来の収入減少や定年後の生活費に不安がある場合でも、残クレ住宅ローンなら毎月の返済額を抑えた計画が立てられます。返済額軽減オプションを活用することで、現役時代から無理のない返済を続けやすく、家計への圧迫を軽減できます。
長期的な収支の見通しが立ちにくい場合、リスクを分散できる点がメリットです。
ライフスタイルに合わせて住み替えたい
転勤や家族構成の変化など、将来的な住み替えを前提とする場合にも残クレ住宅ローンは適しています。残価買取が保証されていれば、市場価格に左右されずに住宅を手放せるため、売却時の不確実性を抑えられます。
一定期間住んだ後に次の住まいへ移行しやすく、ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる住宅取得方法です。
残クレ住宅ローンの注意点・デメリット

残クレ住宅ローンは新しい仕組みのため、注意点やデメリットも存在します。利用前には、確認しておきましょう。
老後の資金計画が必要
残クレ住宅ローンは、毎月の返済負担を抑えられる一方、将来的に残価分の返済対応が必要となります。買取や借り換え、一括返済などの選択を迫られるため、老後資金や退職金の使い道まで見据えた資金計画が欠かせません。
つまり返済額が軽い分、安心してしまうと将来の負担が想定以上になる可能性があり、長期的なライフプランを前提に検討する必要があります。
支払総額が大きくなるリスクがある
残価を据え置くことで元本の減りが遅くなり、結果として利息負担が増える場合があります。とくに返済期間が長期化するほど、支払総額は一般的な住宅ローンより高くなる傾向が見られます。
そのため毎月の返済額だけで判断せず、総返済額や金利条件、将来の選択肢まで含めて比較検討することが重要です。
住宅の価値が下がっている可能性がある
残クレ住宅ローンでは将来の残価が前提となりますが、実際の市場価値が想定より下落しているリスクもあります。残価買取が保証されていない場合、売却時に差額を自己負担しなければならないケースもあり、注意が必要です。
立地や住宅性能、維持管理状況によって価値は大きく左右されるため、将来の資産価値を意識した住宅選びが求められます。
まとめ
残クレ住宅ローンは、毎月の返済額を抑えられる点や残価買取が想定されている点など、家計負担を軽減しやすい仕組みが特徴です。一方で、老後の資金計画や総支払額、将来の住宅価値といった長期的な視点での検討が不可欠となります。
とくに住み替え前提か、終の住処とするのかによって適性は大きく異なります。メリットと注意点を正しく理解し、ライフプランに合った住宅ローンかどうかを慎重に見極めることが重要です。