2025「マンション標準管理規約」改正|概要や注意点まとめ

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「マンション標準管理規約」についてピックアップします。国土交通省では、2025年の区分所有法等を踏まえて「マンション標準管理規約」を改正しました。本記事では具体的な改正内容や、注意点について分かりやすく解説します。
2025改正|マンション標準管理規約

2025年5月にマンション関係法が改正され、その中核となる「改正区分所有法」は2026年4月1日から施行されます。
そして国土交通省は今回の改正等に合わせて、「マンション標準管理規約」も改正しました。管理規約のひな形として参考にできるモデルとなっており、各マンションでの管理規約の見直しが推奨されています。
マンション標準管理規約改正の背景
2025年のマンション標準管理規約改正の背景には、マンションを取り巻く「二つの老い」の問題があります。建物の老朽化と居住者の高齢化が進むことにより、修繕費の不足、管理組合役員の担い手不足、災害時対応の遅れなどが深刻化している状況です。
こうした背景を踏まえて、管理体制の多様化や合意形成の効率化、防災・福祉対応の充実を目的として標準管理規約が見直されています。
マンション標準管理規約の種類
マンション標準管理規約には、下記3種類があります。
- 単棟型
- 団地型
- 複合用途型
まず「単棟型」は、1棟のマンションを1つの管理組合が管理する形態です。敷地・共用部分を全区分所有者で共同管理し、比較的シンプルな運営が特徴です。一般的な分譲マンションの多くがこの形を採用しており、修繕や管理費の決定などもこの管理組合で完結します。
そして「団地型」は、複数棟のマンションが同一敷地に建てられている形態です。棟ごとの管理組合に加えて全体を統括する団地管理組合を設けることで、共用施設や敷地全体を維持管理します。
最後に「複合用途型」は、住宅部分と店舗・事務所などの非住宅部分が併設されたマンションです。用途の異なる区分所有者が共存するため、共用部分の使い方や費用負担のルールを明確にし、円滑な管理運営を図る必要があります。
各規約については、国土交通省ページをご確認ください。
【参考】国土交通省|マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正)
マンション標準管理規約改正の概要

ここでは、2025年のマンション標準管理規約改正の概要について解説します。
①区分所有法改正による改正
こちらは、2025年「マンション関係法(区分所有法)」の改正を受けて見直された内容です。
総会決議における多数決要件の見直し
- ① 出席者の多数決による特別決議
・「特別決議」についても、総会の出席者による多数決を可能とする
- ② 総会定足数の見直し
・基本の総会定足数を議決権総数の「半数以上」から「過半数」に見直し
・「特別決議」を行う場合の総会の定足数(区分所有者数及び議決権の各「過半数」)を規定
- ③ 共用部分の変更に係る決議等の多数決要件の緩和
・バリアフリー化による共用部分の変更等に係る決議の多数決要件を3/4から2/3に緩和
- ④ マンション再生(建替え・更新・売却・取壊し)決議の多数決要件の見直し
・新たなマンション再生手法である更新・売却・除却を行う場合の多数決要件を規定
・客観的な事由が認められる場合のマンション再生に係る決議の多数決要件を4/5から3/4に緩和
総会招集時の通知事項等の見直し
- 総会招集時の通知事項として、全ての議案について「議案の要領」を示すよう規定を見直し
- 共用部分の変更に係る決議及びマンション再生決議について、多数決要件が緩和される場合には通知事項とする
- 緊急に総会を招集する際の通知の発送について、最短期間を「5日間」から「1週間」に変更
所在等不明区分所有者の総会決議等からの除外手続き
- 所在等不明区分所有者を総会決議等から除外する制度を管理組合として活用する際の手続き規定を創設
国内管理人制度の活用に係る手続き
- 「国内管理人」制度を区分所有者が活用する際の手続き規定等を創設
専有部分の保存行為実施の請求
- 現行規定において、共用部分の管理を行うために必要な範囲内の「立入り」のみ明記されているところ、「保存行為」の実施請求についても明確化
共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等
- 現行規定が改正区分所有法の規定において必要とされる「規約の定め」に当たることを明示
修繕積立金の使途
- ① 新たなマンション再生手法の創設への対応
・新たなマンション再生手法(更新・売却・取壊し)の調査・設計段階の支出について、修繕積立金を充当できる旨を規定
- ② 修繕積立金の使途の明確化
・修繕積立金の管理・運用に修繕積立金を充当できる旨を明確化
・建物及び設備の性能・機能を新築時の水準から向上させる「改良」工事についても修繕積立金を充当できる旨を明確化
マンションに特化した財産管理制度の活用に係る手続き
- 「所在等不明専有部分管理制度」、「管理不全専有部分管理制度」を管理組合として活用する際の手続き規定等を創設
共用部分等に係る損害賠償請求権等の代理行使
- 理事長が、区分所有者及び区分所有者であった者の損害賠償請求権等の代理行使をできる旨を明示する規定を創設
- 損害賠償請求権等の行使を理事長による一元的な行使のみに限定
- 区分所有権を譲渡した際に、区分所有法第26条第2項の別段の意思表示を行わないこととする規定を創設
- 損害賠償金等の使途を制限する規定を創設
区分所有者の責務
- 区分所有法においても「区分所有者の責務」が規定されたことに合わせ、標準管理規約における規定を見直し
②社会情勢等を踏まえた見直し
こちらは社会情勢等を踏まえて、新たに見直された項目です。
管理組合役員に関する規定の見直し
- ① 理事の職務代行者
理事が出席できない場合に理事本人に代わって理事会に出席させることができる「職務代行者」を定める場合の考え方及び規定例をコメントに追加
- ② 役員の欠格条項の見直し
会社法、一般社団法人法等を参考に規定を見直し
管理組合役員等の本人確認
- 管理組合財産を狙った、区分所有者ではない者による管理組合役員・専門委員へのなりすまし事案の発生を踏まえ、管理組合役員、専門委員就任時の本人確認についてコメントを追加
管理組合が取り組むべき防災関係業務の内容
- ① 防災関係業務の明確化
・管理組合において取り組むべき防災関係業務の内容をコメントに追加
- ② 防火管理者に関する規定の整備
・消防法上設置が求められている防火管理者に関する規定例を追加
喫煙に関するルールの考え方
- 喫煙に関するルールを定める際の考え方をコメントに追加
管理規約を改正する際の注意点

今後、各マンションにおいて管理規約を改正するにあたっては、規約の改正を決議する「総会の招集手続時期」によって方法が変わります。詳しくは、国土交通省ページをご確認ください。
【参考】国土交通省|令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について
①2026年3月31日まで
2026年3月31日までに招集手続が開始される総会は、「改正法の施行日前」となります。
そのため現行規約の規定に則り、規約の改正をします。しかし「改正する規約の内容について、改正法の施行日である2026年4月1日以降に効力を発すること」という旨を併せて決議する必要があり注意が必要です。
②2026年4月1日以降
2026年4月1日以降の総会で規約を改正する場合、現行規約における総会の成立要件(定足数)や決議要件は無効となってしまいます。そのため該当部分については、改正法の規定に則った手続きにより規約を改正する必要があります。
まとめ
一部のマンションでは「2つの老い」が進行しており、管理体制の見直しが必要となっています。2025年のマンション標準管理規約改正によって、将来的にも良好な管理体制維持が期待されます。