分離発注とは|メリット・デメリットや2025子育てグリーン住宅支援事業での手続き方法

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Category: 省エネ情報

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「分離発注」についてピックアップします。分離発注とは、建築や設備などの工種ごとに発注者が専門業者と直接契約する方式です。2025子育てグリーン住宅支援事業でも、とくにリフォーム分野での活用が想定されています。

ただし希望に合った業者を選べる反面、工程管理や責任の明確化など発注者の負担も増えます。そこで本記事では、分離発注の仕組みや種類、メリット・デメリット、よくあるトラブルについて解説します。

2025子育てグリーン住宅支援事業がスタート!

出典:国土交通省・環境省,子育てグリーン住宅支援事業,https://kosodate-green.mlit.go.jp/,参照日2025.8.19

国土交通省・環境省は、「子育てグリーン住宅支援事業」を実施しています。これは「ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ住宅」の導入や、既存住宅の省エネ改修等に対する補助金制度です。

これにより2050年カーボンニュートラルの実現に向け、裾野の広い支援を実現しています。補助金額や補助対象について詳しくは、下記記事をご覧ください。

「分離発注」にも対応

出典:子育てグリーン住宅支援事業,【参考】分離発注について,https://kosodate-green.mlit.go.jp/reform/reference-2.html,参照日2025.8.19

子育てグリーン住宅支援事業におけるリフォームへの支援では、必須工事(①開口部の断熱改修、②躯体の断熱改修、③エコ住宅設備の設置)のうち、2つ以上のリフォーム工事の実施が補助要件となっています。

そして複数の工事をそれぞれ別の施工業者に発注するケースでも、補助対象です。ただしこのような「分離発注」の場合、工事の発注を受けた施工業者のうちの一社(代表事業者)が代表して「グリーン住宅支援事業者」に登録し、補助金の還元、交付申請等の手続きをする仕組みとなっています。

分離発注とは

そもそも「分離発注」とは、建設工事を複数の専門業者に分けて発注する方式です。具体的には電気・設備工事などを別々の業者に個別契約する形を指します。

これにより、中間マージンを省きコストを削減できるのがメリットです。一方で発注者が工程管理や調整の主体となるため、高度なマネジメント能力が求められます。

分割発注との違い

分離発注と似た言葉として「分割発注」がありますが、意味が異なります。まず「分割発注」は一つの工種を複数の業者に分けて発注することを指し、同一内容の作業を地域や時期などで分けて依頼するのが特徴です。

一方「分離発注」は工種ごとに業者を分けて契約するもので、目的や管理体制に違いがあります。

一括発注との違い

「一括発注」は、設計・施工を一括でゼネコンやハウスメーカーに依頼する方式です。発注者の手間が少なく、スムーズに工事が進みやすい反面、中間マージンが発生しコストが割高になる傾向があります。

それに対して分離発注は、発注者が工事内容や予算を細かくコントロールできる反面、手間と責任も大きくなるという点が異なります。

コストオン方式との違い

「コストオン方式」は、分離発注と一括発注の間を取った方式です。具体的には、発注者は建築会社と設備会社を選び、それぞれの工事費を集計します。その上で、設備工事の現場管理費を建築会社の契約金額に上乗せして発注する仕組みです。

契約上、設備会社は建築会社の下請けとなるため、管理の手間は減ります。しかし完全な直接契約ではない点が、分離発注と異なります。

分離発注の種類

ここでは、分離発注の種類について解説します。

建築設計・施工を分離発注する

設計と施工を別々に発注する方式では、まず設計事務所に設計・監理を依頼し、完成した図面をもとに施工業者へ工事を発注します。設計者と施工者が独立しているため、設計の中立性が確保され、工事の質やコストを透明化しやすいのが特徴です。

一方で設計段階から施工を見据えた調整が不足すると、追加費用や工期延長のリスクがあります。

工事別に分離発注する

出典:子育てグリーン住宅支援事業,【参考】分離発注について,https://kosodate-green.mlit.go.jp/reform/reference-2.html,参照日2025.8.19

建築・電気・設備・外構など、工種ごとに業者を分けて直接契約する方式もあります。具体的には「開口部の断熱改修(内窓の設置)は施工業者A(内装系)、エコ住宅設備の設置(高効率給湯器の設置)は施工業者B(水回り系)」といった事例があります。

こちらは各専門業者と直接やり取りできるため、仕様や価格を細かく調整しやすいのがメリットです。ただし工程や納期、現場での調整は発注者が主導する必要があり、管理負担が大きくなる点には注意しましょう。

分離発注のメリット

ここでは、分離発注にするメリットを解説します。

適切な業者を選定できる

分離発注では、工種ごとに専門業者を直接選べます。発注者が得意分野や過去の実績、評判をもとに最適な業者を選定できるため、品質の高い施工を期待できます。

また業者との直接コミュニケーションにより、希望する仕様や仕上がりを細かく伝えやすいのもメリットです。

中間手数料を削減できる

ゼネコンやハウスメーカーを介さず、専門業者と直接契約するため、中間マージンを削減できます。この分を、仕様アップや予算削減に充てられるのが大きな魅力です。

とくに規模の大きい工事では、削減額が数十万円〜数百万円単位になることもあります。ただし、管理や調整は発注者の責任になるため注意しましょう。

複数の見積もりを比較検討できる

分離発注では工種ごとに複数の業者から見積もりを取得し、価格・仕様・工期を比較できます。競争原理が働くため、相場より割安な契約や仕様アップを実現しやすくなるのがメリットです。

また比較過程で各業者の対応力や提案力も見極められるため、より信頼できるパートナー選びにもつながります。

分離発注のデメリット・よくあるトラブル

分離発注には、いくつかのデメリットも存在します。よくあるトラブルも把握しておくことで、スムーズな工事につながります。

業者選びの負担が大きい

工種ごとに複数の業者から選定するため、情報収集や見積もり依頼、比較検討の手間が増えます。そのため経験や知識が不足していると見積条件の違いや品質差を見抜けず、結果的に不適切な業者を選んでしまうリスクがあります。

工事責任の所在が不明瞭になる場合も

分離発注では業者ごとに契約が分かれるため、工事中の不具合や遅延が発生した場合、どの業者の責任か明確にしづらいケースがあります。

とくに複数工種が絡む工程では、トラブルの解決に時間やコストがかかる恐れがあります。

余裕を持った工期や費用計画が必要

分離発注では各業者の工程調整を発注者が担うので、段取りが遅れると全体の工期に直結してしまいます。また仕様変更や追加工事が発生しやすく、予算が膨らむ可能性もあります。

そのため、余裕を持ったスケジュールと費用計画が不可欠です。

補助金申請時の手間が増える

住宅や省エネ関連の補助金は、元請業者が申請代行するケースが多いですが、分離発注では発注者が書類を取りまとめる等の業務が発生します。

工事内容ごとに必要書類や証明書が分かれるため、申請準備に手間と時間がかかってしまうのがデメリットです。

2025子育てグリーン住宅支援事業での分離発注の手続き

ここでは、2025子育てグリーン住宅支援事業での分離発注の手続きについて解説します。

①新築の場合

補助事業ごとの分離発注における代表事業者およびその他の事業者に係る要件と手続きは、以下の通りです。注文住宅の新築においては、代表事業者が本補助金の要件および手続きに責任を負い、通常の手続きと同様の交付申請が可能です。

補助事業代表事業者代表事業者の要件と手続き
注文住宅の新築賃貸住宅の新築交付申請等の手続きを代表して行う任意の施工業者※1工事請負契約の締結共同事業実施規約(新築用)の締結グリーン住宅支援事業者の登録※2対象工事※3の着工(2024年11月22日以降)交付申請(予約を含む)の手続き契約工事の完了・引渡し完了報告の手続き補助金の受領※4・発注者への還元
  • ※1 構造耐力上主要な部分(基礎を除く)の工事を行う事業者で、最も請負金額が高い事業者が、他の事業者を代表して交付申請等の手続きを行います。
  • ※2 建築する住宅がGX志向型住宅である場合は、GXへの協力表明を含みます。
  • ※3 基礎工事より後の工程の工事
  • ※4 補助金の交付後、交付決定の取り消しが行われた場合、事務局は代表事業者に返金を求めます。

②リフォームの場合

リフォームにおける分離発注では、「代表事業者」が手続き等を実施します。しかし「その他事業者」が担当する補助対象工事および提出が必要な書類等についての責任は「工事発注者」が負う仕組みです。

出典:子育てグリーン住宅支援事業,【参考】分離発注について,https://kosodate-green.mlit.go.jp/reform/reference-2.html,参照日2025.8.19

書類交付申請時※1
施工業者Bは、下記書類を揃えて工事発注者に提出分離発注工事証明書※2性能証明書、納品書等の証明書類工事写真(工事前後または工事中)
工事発注者は、①に加えて下記書類を揃えて代表事業者に提出本人確認書類 分離発注申請書※2工事請負契約書(全事業者分)
代表事業者は、①②に加えて下記書類を事務局に提出共同事業実施規約(リフォーム用) 工事請負契約書 性能証明書、納品書等の証明書類工事写真(工事前後または工事中)
  • ※1 交付申請の予約時に提出した書類について、再度提出する必要はありません。
  • ※2 本事業の指定様式。ホームページからダウンロードできます。 

当該責任を明確にするため、工事発注者は指定の下記書類を代表事業者に提出します。そして代表事業者は各書類をまとめて、交付申請等の手続きをします(※交付申請の予約時は、 『分離発注工事計画書(工事発注者が作成)』を代表事業者に提出)。

  • 分離発注申請書(工事発注者が作成)
  • 分離発注工事証明書(各施工業者が作成)

まとめ

分離発注とは工種ごとに専門業者と直接契約することで、中間マージン削減や業者選定の自由度など多くのメリットがあります。2025子育てグリーン住宅支援事業でも分離発注工事に対応しており、とくにリフォーム分野での幅広い利用が予想されます。

一方で業者間の調整や責任範囲の明確化、保証制度への対応など、発注者側の負担やリスクも大きいのがデメリットです。導入する際は、工事管理の知識や時間的余裕を確保し、契約内容や保証条件を十分確認しましょう。