J-クレジットを簡単に解説!給湯省エネ2025事業で参加必須

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Category: 住宅業界動向

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「J-クレジット」についてピックアップします。給湯省エネ2025事業では、高効率給湯器により削減されるCO2等についてJ-クレジットを創出する事業への参加が必須です。そこで本記事では補助金事業の概要やJ-クレジットへの参加方法、具体的なメリット等について分かりやすく解説します。

給湯省エネ2025事業がスタート!わかりやすく解説

出典:経済産業省,給湯省エネ2025事業,https://kyutou-shoene2025.meti.go.jp/,参照日2025.7.8

給湯省エネ2025事業は、高効率給湯器の導入を支援する補助金事業です。住宅省エネ2025キャンペーンの中の一事業で、省エネ機器の普及拡大により「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」の達成に寄与することを目的としています。

補助対象

給湯省エネ2025事業の補助対象は、下表の通りです。戸建や共同住宅等の種類によらず、住宅に高効率給湯器を設置する場合に補助金が交付されます。

【購入・工事】

設置する住宅補助対象者
新築注文住宅住宅の建築
新築分譲住宅住宅の購入者
既存住宅(リフォーム)工事発注者
既存住宅(購入)住宅の購入者

【リース利用】

設置する住宅補助対象者
新築注文住宅給湯器の借主
新築分譲住宅給湯器の借主
既存住宅(リフォーム)給湯器の借主

補助金額

給湯省エネ2025事業の補助金額は、「①基本額・②性能加算額」の合計となります。さらに既存機器を撤去する場合にも、補助金が交付されます。

【①基本額】

設置する給湯器補助金額補助上限
ヒートポンプ給湯機(エコキュート)6万円/台戸建住宅:いずれか2台まで共同住宅等:いずれか1台まで
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)8万円/台戸建住宅:いずれか2台まで共同住宅等:いずれか1台まで
家庭用燃料電池(エネファーム)16万円/台戸建住宅:いずれか2台まで共同住宅等:いずれか1台まで

【②性能加算額】

設置する給湯器補助金額
ヒートポンプ給湯機(エコキュート)A:4万円/台B:6万円/台AB両方:7万円/台
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)A:5万円/台B:5万円/台AB両方:7万円/台
家庭用燃料電池(エネファーム)4万円/台

【③撤去加算額】

工事の内容補助金額補助上限
電気蓄熱暖房機の撤去8万円/台2台まで
電気温水器の撤去4万円/台①で補助を受ける台数まで

給湯省エネ2025事業の注意点

給湯省エネ2025事業では、高性能な給湯器の導入に対して補助金が交付されます。しかし利用時にはいくつかの注意点があるので、ぜひチェックしておきましょう。

申請は登録事業者が実施する

給湯省エネ2025事業の申請手続きは、一般のお施主様ではなく「登録事業者」が実施します。申請するには、あらかじめ給湯省エネ事業者として登録を受ける必要があります。

登録事業者は下記いずれかの方法により、一般のお施主様に補助金を還元する仕組みです。

  • ①補助事業に係る契約代金に充当する方法
  • ②現金で支払う方法

「J-クレジット制度への参加表明」が必要

給湯省エネ2025事業では、補助金申請時に「J-クレジット制度に参加することへの意思」を表明する必要があります。参加意思を表明しない場合は、補助対象外となるため注意しましょう。

J-クレジットとは|簡単に解説

ここではまず、J-クレジットの概要や仕組みについて、簡単に分かりやすく解説します。

J-クレジットとは

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_003.pdf,参照日2025.7.8

J-クレジットは日本政府が運営する制度で、省エネルギーの取り組みや再生可能エネルギーの導入、森林管理によって削減・吸収されたCO₂の量を「クレジット」として認証しています。

このクレジットは、温室効果ガス排出量を相対取引するために利用できるのが特徴です。これにより、環境貢献の証明や企業価値向上にもつながります。

J-クレジットの仕組み

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

J-クレジット制度では、CO₂などの温室効果ガスの削減・吸収量を第三者が認証し、その量を「クレジット」として発行しています。発行されたクレジットは排出量取引市場にて売買可能で、企業はこれを購入することで自社の排出量を実質的に減らせます。

J-クレジットのメリット①創出者

ここでは「創出者」側のJ-クレジットのメリットをご紹介します。

省エネによるランニングコスト低減

J-クレジット制度の参加には、温室効果ガス削減事業等の認定を受ける必要があります。省エネ設備の導入や効率的な運用によってエネルギー消費量が削減されるため、日々の電気代や燃料費などのランニングコストを継続的に低減できるのがメリットです。

これによりJ-クレジットの創出だけでなく、経営面でも長期的なコストメリットを得られます。

クレジット売却益が得られる

省エネやCO₂吸収の実績をクレジットとして販売することで、収益を得られます。売却益は新たな省エネ投資や事業拡大の資金にも活用できるため、企業や団体にとって経済的なメリットがある点も魅力です。

環境貢献のPRになる

J-クレジットの創出は、温暖化対策や社会課題への積極的な取り組みとして高く評価されます。企業が環境への貢献を社外にPRすることでブランド価値の向上や顧客からの信頼獲得につながり、企業イメージの向上が期待できます。

ビジネスネットワーク構築につながる

J-クレジットの創出や取引を通じて、環境意識の高い企業や自治体、団体との新たなつながりが生まれます。将来のビジネスチャンスや共同プロジェクトにつながる可能性があり、事業拡大にも寄与します。

J-クレジットのメリット②購入者・活用者

ここでは「購入者・活用者」側のJ-クレジットのメリットをご紹介します。

CDP・SBT・RE100への活用

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

J-クレジットの購入により、CDP(気候変動評価)やSBT(科学的根拠に基づく削減目標)、RE100(再生可能エネルギー100%宣言)といった国際的なイニシアティブに対応しやすくなります。これにより、企業の環境評価や国際競争力の向上にもつながります。

温対法・省エネ法の報告

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

J-クレジットを活用することで、「温暖化対策推進法(温対法)」や「省エネ法」に基づくCO₂排出量の報告において、クレジット分の排出削減を反映させることが可能です。これにより、法令順守とともに企業の環境対策を効率的に進められます。

カーボン・オフセット

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

事業活動でどうしても排出してしまう温室効果ガスに対して、J-クレジットを購入・活用することで、実質的に排出量をゼロにする「カーボン・オフセット」が可能です。これにより、企業は脱炭素経営を進め、社会的な信頼を高められます。

SHIFT事業

SHIFT事業(脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業)では、J-クレジットを活用することで企業間の柔軟な取引や地域連携が促進されます。具体的には高効率機器導入や燃料転換の実施に対して、補助金が交付されます。

このように、カーボンニュートラル実現を効率的に進められる点が大きなメリットです。

【参考】環境省|SHIFT事業

経団連カーボンニュートラル目標達成

出典:J-クレジット制度,経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成に活用,https://japancredit.go.jp/case/lowcarbon/,参照日2025.7.8

日本経済団体連合会(経団連)はカーボンニュートラル目標の達成を掲げており、J-クレジットの活用も有効な手段の一つです。これにより、社会的責任を果たしながら企業価値を高められます。

J-クレジットの種類

ここでは、J-クレジットの種類について解説します。

通常型

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

通常型は、個別の事業ごとに温室効果ガスの排出削減量や吸収量を計測・申請し、審査を経てクレジットを発行する方法です。

基本的には、1つの工場・事業所等における削減活動を1つのプロジェクトとして登録します。複数の工場・事業所をまとめて1つの通常型とすることも可能ですが、登録後、新たに工場・事業所等を追加することは、原則不可となっています。

創出からクレジット発行までの流れが明確で比較的シンプルな仕組みですが、事業ごとの申請や管理が必要です。

プログラム型

出典:J-クレジット制度,J-クレジット制度について,https://japancredit.go.jp/about/outline/,参照日2025.7.8

プログラム型は、同様の取り組みを複数の事業者がまとめて実施・申請できる仕組みです。具体的には個人家庭の屋根に太陽光発電設備を導入するなど、複数の削減・吸収活動を取りまとめて1つのプロジェクトとして登録します。

プログラム型は、以下のようなメリットがあります。

  • ① 個人ではプロジェクト登録が非現実的な小規模な削減活動からでも、J-クレジットを創出できる。
  • ② 登録後も、削減活動を随時追加することで、プロジェクトの規模を拡大可能。
  • ③ 登録や審査等にかかる手続きやコストを削減できる。

小規模な個人での省エネ活動や地域単位の取り組みでも、一定のルールに沿ってまとめてクレジット化できるため、普及・拡大が期待されています。全国各地の中小企業や、自治体にも適した制度です。

「給湯省エネ2025事業」におけるJ-クレジット参加方法

ここでは、「給湯省エネ2025事業」でJ-クレジットに参加する方法について解説します。給湯省エネ2025事業では、高効率給湯器の導入で削減できるCO2等について、J-クレジットを創出する事業への参加が条件となっています。

参加意思を表明しない場合は補助対象外となってしまうため、注意しましょう。

参加表明方法

給湯省エネ2025事業の対象機器を設置した共同事業者のCO2削減量をクレジット化するために、以下①②いずれかの団体およびプログラムへ入会する仕組みです。

  • ①事務局が指定するJークレジット事業実施団体
  • ②地方公共団体・民間団体等が管理するプログラム

※①を選択した場合、団体への入会手続きは事務局が行います。なお事務局が指定するJークレジット事業実施団体は「Jーグリーン・リンケージ倶楽部」になります。

※②を選択した場合、入会予定または入会済みであるプログラム名の申告が必要。

(該当するプログラムがない場合は①を選択)

※別事業であるZEH補助金等、他のプログラムに入会しており、本事業の補助対象である給湯器の温室効果ガス排出削減効果が、既にクレジット化されているまたは見込みである場合も、②を選択した上した上でプログラムの申告が必要です。

モニタリングについて

入会後は実際の温室効果ガスの排出削減・吸収量を算定するため、無作為に選ばれた方々に対して、年一回のモニタリング(削減量等の計測)等の調査への協力依頼の連絡があります。

モニタリング等の調査については、Jーグリーン・リンケージ倶楽部から送付される協力依頼と同封するマニュアルに記載があります。

まとめ

J-クレジットは、省エネや森林管理によるCO₂削減・吸収量を「クレジット」として認証・取引できる制度です。創出者はコスト削減や収益化が可能で、購入者は環境経営や法令対応に活用できます。給湯省エネ2025事業ではJ-クレジットへの参加表明が求められるため、ぜひ事前にチェックしておきましょう。