「賃貸集合給湯省エネ2025事業」を解説|ドレン排水とは?処理方法まとめ

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Category: 住宅業界動向

トレンドワード:賃貸集合給湯省エネ2025事業

「賃貸集合給湯省エネ2025事業」についてピックアップします。エコジョーズやエコフィールなどの高効率給湯器は省エネ性に優れる一方で、運転時に「ドレン排水」が発生するのが特徴です。

適切に処理しないと、建物や周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。戸建てとマンションでは処理方法が異なるため、本記事では代表的な処理方法を分かりやすく解説します。

「賃貸集合給湯省エネ2025事業」がスタート

出典:国土交通省,住宅省エネ2025キャンペーン,https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/,参照日2025.7.1

国土交通省・経済産業省・環境省は、共同で「住宅省エネ2025キャンペーン」を実施しています。新築とリフォームを対象にした4つの補助事業で、家庭部門の省エネ化を促進するのが狙いです。

出典:国土交通省,賃貸集合給湯省エネ2025事業,https://chintai-shoene2025.meti.go.jp/,参照日2025.7.1

その中でも「賃貸集合給湯省エネ2025事業」は、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野について、特に賃貸集合住宅に対する小型の省エネ型給湯器の導入を支援する事業です。

これにより、「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」の達成に寄与することを目的とします。

対象機器・性能要件

出典:国土交通省,潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて,https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000157.html,参照日2025.7.1

補助対象は「既存賃貸集合住宅の住戸」で、従来型給湯器を小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換することが条件です(リースの利用を含む)。

給湯器はガスや石油を燃焼させ、その熱で水を温水に変えます(一次熱交換器)。このとき約200~230℃の排気が発生しますが、従来型の給湯器ではこの熱を捨ててしまっていました。

しかしエコジョーズ/エコフィールは、この排気を活用してあらかじめ水を温めてから(二次熱交換器)水が一次熱交換器へ送られるため、少ないエネルギーでお湯を作れるのがメリットです。

エコジョーズ/エコフィールの性能要件は、下表の通りです。

●エコジョーズ

①給湯単能機モード熱効率が90%以上のもの
②ふろ給湯器モード熱効率が90%以上のもの
③給湯暖房機給湯部熱効率が95%以上のもの

●エコフィール

①給湯単能機モード熱効率が95%以上のもの
②ふろ給湯器モード熱効率が91%以上のもの
③給湯暖房機給湯部熱効率が80%以上のもの

補助金額

補助金額は、下表の通りです。

給湯器の性能補助額(基本額)補助額(加算額)
追い焚き機能がないもの5万円/台共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事3万円/台※1※2※3
追い焚き機能があるもの7万円/台浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事、三本管(二重管含む)工事)3万円/台

※1 人の通行の妨げにならないように、共用廊下を横断して、ドレン排水ガイドを敷設した場合に限ります。(人の通行がない場所への敷設や共用廊下を横断しない敷設、ベランダに敷設した場合は加算対象となりません)

※2 各地方公共団体等の方針等により、ドレン排水処理の取扱いが異なります。地方公共団体等の取扱いに則って適切な工事を行うようにしてください。

※3 追い焚き機能ありの給湯器を導入する場合に、ドレン排水ガイド敷設工事を実施しても加算対象になりません。

申請区分と登録事業者

原則、以下の申請区分に応じたそれぞれの補助事業者が、交付申請等の手続きを実施します。一般のお施主様が手続きする訳ではないため、注意しましょう。

申請区分契約登録事業者
リフォーム工事工事請負契約施工業者・管理会社等(工事請負業者)
リース利用リース契約リース事業者

「賃貸集合給湯省エネ2025事業」でよくある疑問

ここでは、「賃貸集合給湯省エネ2025事業」でよくある疑問について解説します。

「ドレン排水」はどう処理する?

エコジョーズ/エコフィールでは稼働時に「ドレン水」が発生します。ここでは、適切な処理方法について解説します。

ドレン排水とは|汚水?雨水?

ドレン排水とは、エコジョーズやエコフィール等の高効率給湯器が稼働時に発生する排水で、主に燃焼時の水蒸気が冷えて水となったものです。通常酸性(pH3程度)ですが、中和器(炭酸カルシウムを充填)を通すことによりpH7程度の中性にして排出されます。

ドレン排水は下水道法では汚水の位置付けですが、国交省のガイドラインによると「各自治体が公共下水道の整備状況(分・合流式等整備手法を含む)及び、地域の公共用水域への影響等を勘案しつつ、ドレン排水を“雨水と同様の取扱い”とし、必ずしも汚水系統の排水設備へ排出する必要がないと取り扱う判断も可能である」とされています。

ただし通常の雨水や生活排水とは異なるため、排水経路や処理方法には注意が必要です。放置や誤処理は設備や周辺環境へ悪影響を及ぼす可能性があり、適切に配管して公共下水や雨水枡等へ排水する方法が一般的です。

【参考】国土交通省|潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて

ドレン排水の処理方法①戸建て

ここでは、戸建住宅におけるドレン排水の処理方法について解説します。

汚水系統に排水

ドレン排水を汚水系統に接続する方法では、住宅内のトイレやキッチンなどと同じ排水経路を利用します。ドレン水は弱酸性ですが、そもそも量が少なく希釈されるため、汚水管に流しても配管を傷める心配はほとんどありません。

ただし接続の際は逆流防止や臭気対策のために、トラップや排水管の勾配確保が必要です。専門業者による施工が推奨されます。

側溝に排水

敷地内に側溝がある場合は、ドレン排水を直接側溝へ放流することも可能です。排水先が開放されているため、ただし詰まりや逆流の心配は少なくなります。ただし排水口に砂利や泥が溜まっていないか、定期的な点検と清掃が重要です。

また側溝が公共の設備である場合には、自治体の許可が必要なことがあります。詳しくは下記「各地方公共団体等によるドレン排水の取扱情報について」をご確認下さい。

【参考】賃貸集合給湯省エネ2025事業|各地方公共団体等によるドレン排水の取扱情報について

雨樋に接続処理

ドレン排水を屋根の雨樋に接続する方法では、雨水と一緒に排水されるため、見た目がすっきりして追加の配管工事も比較的簡単です。ただし長期間排水が続くと、雨樋内部の劣化を早める恐れがあります。

また接続部分の密閉性や、雨水配管全体の排水能力にも注意が必要です。

雨水桝に接続処理

敷地内に雨水桝がある場合は、そこにドレン排水を接続する方法もあります。雨水桝は雨水の一時的な貯留や流入調整の役割を持つため、比較的自然な形で処理できるのがメリットです。

ただしドレン水が常時流れることで桝内部が劣化する場合があるため、耐酸性の素材を使用しましょう。施工前に、自治体の指導要領を確認することも重要です。

ドレン排水の処理方法②マンション

ここでは、マンション等の共同住宅におけるドレン排水の処理方法について解説します。

PS設置

マンションのパイプスペース(PS)内に給湯器を設置する場合、ドレン排水はあらかじめ用意された排水管に接続します。専用の排水勾配やトラップが設けられているため、安全に処理できるのがメリットです。

ただし集合住宅では共有設備との接続になるので、設計段階での配管計画が重要です。後付設置の場合は既存排水系統との整合性に注意し、管理組合の許可についても確認しておきましょう。

バルコニー・ベランダ設置

給湯器をバルコニーやベランダに設置する場合、ドレン排水は床面の排水口に流すケースが一般的です。既設の排水経路と共有することになるため、排水能力を確認しておきましょう。

接続が不適切だと階下への漏水事故につながる恐れがあるため、防水処理や逆流防止措置も必須です。

ドレンアップ方式

ドレンアップ方式とは、ドレン水を専用のポンプで吸い上げて浴室の排水経路まで送る方法です。とくに集合住宅など、排水工事が難しい場合に採用されます。

設置には電源とスペースが必要で、定期的なポンプのメンテナンスも求められます。排水距離や高低差に応じた機器の選定と、誤作動防止のための設計が重要です。

三方弁方式

三方弁方式は、既存の給湯器をエコジョーズに変更する場合の方法です。浴室配管にドレン水を排出する仕組みで、その後は洗浄してから通常の浴室回路に切り替えられます。

ただし機器の構造が複雑になるため、設置コストや機種の選定に制約があります。メンテナンスや故障時の対応も考慮して、管理体制の整った物件で導入しましょう。

補助金額の「加算」とは

小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)について、補助対象となる給湯器の性能ごとに定額が加算されます。加算内容は、下記の通りです。

追い焚き機能加算対象となる工事工事内容とドレン排水方法加算額
なしドレン排水ガイド敷設工事共用廊下を横断して、ドレン排水ガイドを敷設する工事※1※2※3雨水側溝等へドレン水を導き排水する3万円/台
あり三方弁工事既存の追い焚き管を利用し、三方弁(ドレン排水切り替えユニット)を浴室内に設置する工事浴室排水口にドレン水を排水する3万円/台
あり三本管(二重管含む)工事追い焚き管とは別に、新たにドレン配管を浴室まで配管する工事浴室排水口にドレン水を排水する3万円/台

※1 人の通行の妨げにならないように、共用廊下を横断して、ドレン排水ガイドを敷設した場合に限ります。(人の通行がない場所への敷設や共用廊下を横断しない敷設、ベランダに敷設した場合は加算対象となりません)

※2 各地方公共団体等の方針等により、ドレン排水処理の取扱いが異なります。地方公共団体等の取扱いに則って適切な工事を行うようにしてください。

※3 追い焚き機能ありの給湯器を導入する場合に、ドレン排水ガイド敷設工事を実施しても加算対象になりません。

まとめ

「賃貸集合給湯省エネ2025事業」では、エコジョーズやエコフィールの設置に対して補助金が交付されます。ドレン排水の処理方法などを適切に計画することで、その後の住まいの快適性も保ちやすくなります。場合によっては補助金額が加算されることもあるので、ぜひチェックしてみてください。