防火区画とは|建築基準法での種類や緩和方法まとめ

目次
トレンドワード:防火区画
「防火区画」についてピックアップします。建物内で火災が発生した際、その被害を最小限に抑えるために重要なのが「防火区画」です。壁や床、防火設備によって空間を区切ることで炎や煙の拡大を防ぎ、避難時間を確保する役割を果たします。本記事では防火区画の種類や基準、対応方法、緩和条件などを、建築基準法および消防法に基づいて分かりやすく解説します。
防火区画とは|建築基準法を解説

防火区画とは、火災発生時に炎や煙の広がりを抑えるため、建物内部を耐火構造などで区切る仕組みです。建築基準法112条では、建物の用途や規模に応じて区画が定められています。
防火区画には耐火壁や防火扉、防火シャッターなどが用いられることで、避難時間の確保や消防活動をスムーズにしているのが特徴です。またスプリンクラーなどの消火設備が設けられている場合は、一部の防火区画が緩和されることもあります。防火区画の設計は、安全性と法令遵守の両面で重要です。
防火区画の種類|①建築基準法

ここでは、建築基準法で定められている防火区画の種類について解説します。
面積区画
面積区画は、建物の内部を一定の面積ごとに区切ることで火災の拡大を防ぐ防火区画です。
防火壁や耐火構造の床・壁、防火扉などで区画し、延焼を最小限に抑える役割があります。
延べ面積が1,500㎡を超える建物(主要構造部を耐火構造とした建築物または準耐火建築物で10階以下のもの)では、火災の延焼を防ぐために1,500㎡ごとに区画する必要があります。
一方で以下のような建物では、500㎡や1,000㎡ごとに防火区画が必要です。
- 準耐火建築物で延べ面積が500㎡超のもの
- 特定避難時間が短く設計された建物
- 特定の基準に適合していない準耐火建築物 など
また間仕切壁の構造や天井裏の設計についても、防火上の配慮が求められます。
【参考】e-GOV|建築基準法施行令 第112条第1項~第6項
高層階区画(高層区画)
高層階区画は、11階以上の階に設けられている防火区画です。高所では避難や消火活動が困難になるため、火災が広がるリスクを抑える必要があります。
原則として100㎡ごとに防火壁などで区画する必要がありますが、使用する建築材料や設備によっては緩和され、最大500㎡まで可能となる場合もあります。
区画面積 | 内装材の種類 | 下地材の種類 | 使用可能な防火設備 |
---|---|---|---|
500㎡ | 不燃材料(壁・天井) | 不燃材料 | 特定防火設備 |
200㎡ | 準不燃材料(壁・天井) | 準不燃材料 | 特定防火設備 |
100㎡ | 内装制限なし | 指定なし | 耐火構造の床・壁、または特定防火設備 |
【参考】e-GOV|建築基準法施行令 第112条第7項~第10項
竪穴(たてあな)区画
竪穴区画とは、階段・吹き抜け・エレベーターシャフト・配管スペースなど、上下階をつなぐ「縦の空間」に対する防火対策です。火災時に煙や炎が上階に急速に広がるのを防ぐため、防火壁や防火扉、防火シャッターなどで区画します。
具体的には以下の条件を満たす建物では、竪穴部分を準耐火構造の床・壁または防火設備で区画する必要があります。
- 3階以上または地下階に居室がある
- 建物が準耐火構造(または一部耐火構造)
- 対象部分:階段・吹抜け・昇降路・ダクト等
またダクトや配管などが貫通する場合には、貫通部の防火処理も義務付けられています。
【参考】e-GOV|建築基準法施行令 第112条第11項~第15項
異種用途区画
異種用途区画は、一つの建物に異なる用途(例:住宅+店舗、福祉施設+事務所)が混在する場合に、用途ごとに火災リスクが異なることを考慮して区画を設けるものです。
たとえば住宅と飲食店では火の使用頻度が異なるため、耐火構造の壁や防火扉で明確に区切る必要があります。具体的には、次のいずれかの方法で区画しなければなりません。
- 火に1時間以上耐えられる性能を持つ準耐火構造の壁や床
- 火の通り道を遮断するための特定防火設備(耐火性の高い扉など)
ただし一定の警報設備やスプリンクラーがあれば、区画が不要となるケースもあります。
防火区画の種類|②消防法

防火区画は「消防法」でも定められています。ここでは建築基準法と重複する項目は省き、消防法独自の基準を解説します。
令8区画
「令8区画」とは、消防法施行令第8条に基づき設けられる防火区画のことを指します。建物が火災が広がりにくい構造で区切られていれば、それぞれ別の防火対象物として扱えるというルールです。
具体的には、下記のようなしっかりと火を遮る区画がされていれば、建物を分割して別の防火対象物とみなせます。
- 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
- 床、壁その他の建築物の部分又は建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)
【参考】消防法施行令第8条
防火区画に対応する方法

ここでは、防火区画に対応するための方法を解説します。
防火区画の貫通部分の処理
防火区画を貫通する配管やダクトなどは、火災時の延焼を防ぐために耐火性のある材料で適切に処理する必要があります。建築基準法施行令第112条では、防火区画の貫通部について、防火上有効な措置を講じることが求められています。
スパンドレル
スパンドレルは耐火性のある金属壁材で、火災時の炎の立ち上がりを遮断して延焼を防ぎます。建築基準法施行令第112条第16項では、防火区画に接する外壁の構造について規定されています。
袖壁(そでかべ)
袖壁は開口部の側面に設ける耐火性のある壁で、火災時の炎や煙の横方向への拡散を防ぎます。建築基準法施行令第112条第16項により、防火区画に接する外壁の構造として、袖壁の設置が求められる場合があります。
ひさし
開口部の上部に設ける庇(ひさし)は、火災時の炎や煙の上方向への拡散を防ぎます。建築基準法施行令第112条第16項により、防火区画に接する外壁の構造としてひさしの設置が求められています。
防火区画が緩和されるケース

ここでは、防火区画が緩和されるケースについて解説します。
消火設備設置(スプリンクラー等)による緩和
スプリンクラー設備などの消火設備を設置することで、防火区画の要件が緩和されることがあります。たとえば竪穴区画では、スプリンクラー設置により防火設備に代えて10分間防火設備での区画が可能となる場合があります。これは、火災の初期段階での鎮火を想定した緩和措置です。
面積区画における緩和・免除
高層階区画などの面積区画では、内装の仕上げや下地を不燃・準不燃材料とすることで区画の基準が緩和されます。たとえば不燃材料仕上げ・下地の高層階部分は、通常100㎡ごとの区画が500㎡ごとでよくなります。
竪穴区画における緩和・免除
竪穴区画(吹き抜け、階段、昇降機等)は原則として区画が必要ですが、不燃材料で仕上げた階段などで、避難階とその直上階または直下階のみと接続するものは、区画の緩和が認められます。また階数が3以下で、延べ面積が200㎡以内の住宅も対象です。
【参考】e-GOV|建築基準法施行令第112条第11項 ただし書
高層階区画における緩和・免除
高層階の防火区画(通常は100㎡ごとの区画)は、内装・下地を準不燃または不燃材料にすることで、200㎡や500㎡単位での区画が可能です。これにより、使いやすさと安全性の両立が図れます。
異種用途区画における緩和・免除
建築物内に異なる用途(例:住宅と店舗)がある場合、通常は準耐火構造や特定防火設備で区画が必要ですが、警報設備の設置など防火上有効な措置を講じている場合には、その限りではありません。
まとめ
防火区画とは、建物内で火災の延焼を防ぐために壁や床、防火設備などで区切る空間のことです。建築基準法および消防法でその設置や仕様が定められており、建物の安全性確保に欠かせない要素となっています。建物の規模に応じて、法令に準じた計画と施工を実施しましょう。