定期借地権とは|メリットやデメリットを貸主・借主側から分かりやすく解説

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「定期借地権」についてピックアップします。本記事では定期借地権の概要や普通借地権との違い、メリット・デメリットを、地主側と借主側の両面からわかりやすく解説します。一戸建て住宅や分譲マンションとかかわりが深いため、ぜひ参考にしてみてください。

定期借地権とは|分かりやすく解説

定期借地権とは、残存期間の満了で必ず終了する借地権のことです。一般的には数十年年以上の契約期間が必要で、満了後は建物を撤去して土地を貸主に返還します。

契約の更新や建物の買取請求権がないため、地主にとっては土地を確実に取り戻せる安心感があります。一方で借主側も土地を購入せずにマイホームを建てられることから、初期費用を抑えたい場合に魅力的な選択肢です。

【参考】e-GOV|借地借家法 定期借地権

定期借地権と普通借地権の違い

定期借地権普通借地権
契約更新なしあり(借主の希望で更新可能)
契約終了後の扱い原則更地で返却建物があれば継続使用可能
建物買取請求権なしあり(貸主に買取を請求可能)
契約期間原則50年以上(※事業用は10年以上)30年以上
契約方法原則公正証書等の書面制約なし・口頭でも可

定期借地権と普通借地権の大きな違いは、更新の有無と契約終了時の扱いです。定期借地権は更新不可・期間終了で確実に終了するため、地主は土地を将来的に自由に使えるという違いがあります。そして借主には建物の買取請求権もなく、更地での返還が義務となります。

一方で普通借地権は借主の希望で契約を更新でき、建物があれば継続使用も可能です。つまり定期借地権は「期間限定使用前提」の制度で、普通借地権は「継続使用前提」と言えます。

【参考】国土交通省|定期借地権の解説

定期借地権の種類

出典:国土交通省,定期借地権の解説,https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000106.html,参照日2025.5.29

ここでは、定期借地権の種類について解説します。

【参考】国土交通省|定期借地権の解説

①一般定期借地権

一般定期借地権は契約期間が50年以上と定められており、契約期間満了後は建物を解体して更地で地主に返還することが義務づけられています。契約の更新や、建物の買取請求権は認められていません。

主に住宅用地や分譲住宅、マンション開発などで利用され、地主は土地の所有権を維持しながら一時的に活用できるのが特徴です。借主側にとっては、土地購入が不要なため初期コストを抑えられるメリットがあります。

②事業用定期借地権

事業用定期借地権は店舗・オフィス・物流施設など、住宅以外の事業目的に利用する場合に設定される借地権です。契約期間は10年以上50年未満で、公正証書による契約が必要となります。

契約更新や建物の買取請求権は認められていないため、地主は契約終了後に土地を確実に回収できます。土地を一時的に有効活用したい地主や、一定期間だけ事業用地を確保したい企業に適した制度です。

③建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、契約終了時に借主が建物を地主に譲渡することを前提とした借地契約です。契約期間は30年以上とされており、建物を譲渡することで地主が引き続き土地と建物を活用できます。

そのため将来的に地主自身が建物を利用したい場合や、第三者に賃貸する予定がある場合などに適しています。建物を資産として地主が引き継げる点が、他の定期借地権との大きな違いです。

定期借地権の設定方法

定期借地権を設定するには、書面(契約書)による合意が必須です。契約には、下記の特約を定めることが求められます。

  • [1]契約の更新をしない
  • [2]存続期間の延長をしない
  • [3]建物の買取請求をしない

とくに一般・事業用定期借地権は、公正証書による契約が必須です。契約締結後、登記を行うことで第三者対抗要件が確保されます。地主・借地人の双方にとって将来のトラブルを避けるため、専門の公証人に依頼するのが一般的です。

【参考】日本公証人連合会|土地建物賃貸借

定期借地権のメリット・デメリット【地主・貸主側】

ここでは「地主・貸主側」における定期借地権のメリット・デメリットを解説します。

メリット①期間終了後に土地が返還される

定期借地権は更新がなく、契約期間が満了すれば土地は確実に返還されます。借主の買取請求権もないため、将来的に地主が土地を自由に使える点が大きな魅力です。そのため土地を手放さずに一時的に活用したい場合でも、安心して貸し出せます。

メリット②地代収入が得られる

土地を定期借地として貸し出すことで、安定的な地代収入を得られます。自ら活用しにくい遊休地でも毎月の収益源として有効活用でき、収益性と資産保全の両立が可能です。とくに、相続対策の一環として活用されるケースも増えています。

メリット③借入せず土地を活用できる

すでに持っている土地を活用するため、新たな投資や借入をせずとも資産価値を活かせるのがメリットです。建物の建築費は借地人が負担するので地主側に大きな初期コストは発生せず、リスクの少ない不動産活用方法と言えます。

メリット④相続税・固定資産税の負担軽減

定期借地権を設定することで土地の評価額が下がると、相続税や固定資産税の負担を軽減できる可能性があります。とくに相続対策として有効で、現金収入(地代)も得られることから節税と収益の両方を見込めます。

【参考】

国税庁|No.4612 一般定期借地権の目的となっている宅地の評価

国土交通省|定期借地事業の特徴(地主の視点)

デメリット①長期間土地が拘束される

定期借地権は一般的に30~50年という長期契約となるため、その間は土地を自由に処分・再利用することができません。そのため契約期間中にライフプランや土地活用の方針が変わった場合でも、柔軟な対応が難しくなる点がデメリットです。

デメリット②収益の保障はない

地代収入は得られますが、周辺の地価下落や契約条件によっては収益性が下がる可能性もあります。また長期間の契約中にインフレや経済情勢の変化が起きても、契約内容が固定されている場合、柔軟な見直しがしづらいリスクもあります。

デメリット③借主の破綻リスクがある

借地人が破産や経営難に陥った場合、地代の未払いリスクが発生します。建物の放置や契約不履行などの問題が生じる可能性もあるため、事前に信用調査を行ったり契約に解除条項を盛り込んだりする等のリスク管理が必要です。

定期借地権のメリット・デメリット【借主側】

ここでは「借主側」の定期借地権のメリット・デメリットを解説します。

メリット①所有権タイプより物件価格が安い

定期借地権では土地を購入せず借りるため、同じエリア・広さの物件でも所有権付より価格が安くなります。土地代が不要な分、建築費用などに充てやすく、初期費用を抑えて持ち家を実現したい場合に魅力的です。

メリット②土地の固定資産税等がかからない

定期借地権の場合、借主側に土地の固定資産税や都市計画税の支払い義務がありません。これにより税金の負担が軽くなり、毎年の維持コストを抑えられる点がメリットです。建物部分の固定資産税のみで済み、家計に優しい制度です。

メリット③住み替えがしやすい

定期借地権は一定期間で契約が終了するため、住み替えのタイミングが明確になります。そのため将来的に転勤や子どもの独立後にダウンサイジングを考えているケースなど、ライフステージに合わせた柔軟な住まい選びが可能です。

メリット④立地条件等に優れている

所有権では高額なエリアでも、定期借地なら人気エリアに比較的安く住める可能性があります。とくに都市部や駅近など、利便性の高い場所に家を持ちたいけれど予算が限られているという場合、有力な選択肢です。

デメリット①土地代の負担がかかる

定期借地権では、地代の支払いが発生します。しかし所有権のように将来的な資産にはならないことから、支払い続けることへの割高感を感じる方もいます。契約内容によっては地代の増額リスクもあるため、注意が必要です。

デメリット②老後の住まい確保が難しい

契約が終了すれば土地は返還しなければならず、高齢期に再び住まいを探す必要が出てくる可能性があります。そのため老後の安定した住環境を重視する場合には、不安要素となってしまいます。

デメリット③一戸建ては「売れない」場合がある

定期借地の一戸建ては、土地の所有権がないため建物の売却が難しいことがあります。とくに残存期間が短いと買い手がつきにくく、結果として資産価値が低くなりやすい点にも注意が必要です。そのため、長期的な資産形成には不向きです。

デメリット④分譲マンションは維持費が高い

定期借地付きの分譲マンションでは、管理費や修繕積立金に加えて地代や更新料も必要な場合があります。これらの維持費がトータルで割高になりやすく、所有権マンションと比べて経済的負担が増えるケースがあります。

デメリット⑤住宅ローンの条件が厳しくなる

定期借地権付き住宅は、金融機関によっては住宅ローンの審査が厳しくなる場合があります。借地期間や返済期間の関係から希望の融資額が通らなかったり、金利が高めに設定されたりすることもあるため、事前の確認が大切です。

まとめ

定期借地権とは、一定期間土地を貸して期間満了後に確実に返還されるタイプの借地契約です。地主側は土地を手放さず活用でき、地代収入や節税効果も期待できます。

一方で借主側は初期費用を抑えて住まいを持てるメリットがありますが、契約終了後の住まい確保や資産価値面では注意が必要です。メリット・デメリットを理解し、契約内容をしっかり確認した上で活用しましょう。