UA値の基準とは|2025断熱等級を満たす方法を分かりやすく解説

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「UA値」についてピックアップします。住宅の性能を考えるうえで重要な指標のひとつであり、とくに2025年からは省エネ基準への適合が義務化されているため注目度が高まっています。本記事ではUA値の基本から基準、断熱性を高める方法までわかりやすく解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

UA値(読み方:ユーエーち)とは|何の略?簡単にわかりやすく解説

ここではまず、UA値の意味や単位について簡単に分かりやすく解説します。

UA値の単位・計算方法

出典:国土交通省,住宅の省エネルギー基準と評価方法2024,https://www.mlit.go.jp/common/001627022.pdf,参照日2025.5.22

UA値(読み方:ユーエーち)とは「外皮平均熱貫流率」のことで、建物全体の断熱性能を示す指標です。「U」は熱貫流率を表す単位であり、「A」は「Average(平均)」の頭文字です。

単位は「W/(㎡・K)」で、「住宅の内部から屋根・天井、外壁、床、開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を、外皮全体で平均した値」を表しています。そのため、「数値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネ性能の高い住宅」といえます。

C値・Q値・ηAC値との違いや関係性

UA値以外にも、住宅性能を示す指標として「C値(気密性)・Q値(熱損失係数)・ηAC値(日射取得率)」があります。総合的にチェックすることで、より快適で省エネな家づくりが可能になります。

  • C値:すき間の少なさ(気密性)を表す数値で、数値が小さいほど気密性が高い。
  • Q値:熱の逃げやすさを示す旧指標。UA値が壁や天井、窓などを考慮するのに対し、Q値は建物の延べ面積を元にするため誤差が生じやすいという違いがある。
  • ηAC(イータ・エー・シー)値:冷房期にどれだけ日射を取り込むかを示す値で、夏の快適性に関わる。

UA値の基準

ここでは、UA値の基準について整理しておきます。

地域区分とは

出典:国土交通省,住宅の省エネルギー基準と評価方法2024,https://www.mlit.go.jp/common/001627022.pdf,参照日2025.5.22

地域区分とは、日本全国を断熱性能の必要性に応じて1~8のエリアに分けた区分です。北海道など寒さが厳しい地域は「1~3地域」、逆に沖縄県は「8地域」に該当します。ちなみに東京23区は「6地域」です。

このように各地域で求められるUA値の基準が異なるため、住宅を建てる場所に応じた断熱性能を確保することが重要です。

UA値の基準目安

UA値の基準は、地域ごとに異なる数値が設定されています。さらに「省エネルギー基準」には、建築物省エネ法の省エネ基準と誘導基準、都市の低炭素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)の低炭素建築物認定基準など、多くの基準が存在します。

ここでは省エネ基準(外皮基準)と誘導基準(強化外皮基準)をピックアップして、UA値を下表に示します。

地域12345678
誘導基準(強化外皮基準)0.400.400.500.600.600.600.60
省エネ基準(外皮基準)0.460.460.560.750.870.870.87

設計段階でこの数値を下回るように計画することが、快適で省エネな住宅づくりには不可欠です。

【参考】国土交通省|住宅の省エネルギー基準と評価方法2024

国土交通省|断熱等級6・7と比較

出典:国土交通省,建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度,https://www.mlit.go.jp/shoene-label/insulation.html,参照日2025.5.22

国土交通省は2022年に新たな断熱基準として「等級6・7」を創設しました。これは従来の最高等級だった等級4・5よりさらに高性能な断熱性能を求める基準で、等級6はZEH水準、等級7はそれ以上の超高断熱住宅を目指すものです。

出典:国土交通省,家選びの基準変わります,https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/,参照日2025.5.22

たとえば東京23区が該当する「6地域」は、「断熱等級6:UA値0.46以下、断熱等級7:0.26以下」です。

こちらは誘導基準(断熱等級5)や省エネ基準(断熱等級4)より厳しい数値になっていますが、国土交通省では2030年にはZEH水準(断熱等級5相当)を最低ラインにする方針で、UA値の低い住宅のニーズはさらに高まっていくと予想されます。

断熱性能を上げるメリット

ここでは、断熱性能を上げるメリットについて解説します。

室内環境が快適になる

断熱性能が高まると外気温の影響を受けにくくなり、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を保ちやすくなります。部屋ごとの温度差も少なくなるため、家中どこにいても快適に過ごせるようになるのがメリットです。

冷暖房の効きも良くなることで、室温差によるストレスの少ない環境が実現します。

健康リスクを減らせる

断熱性能の高い住宅は、冬場のヒートショックや、温度差による血圧変動などの健康リスクを軽減できます。とくに高齢者や小さなお子さまがいる家庭では住環境の安定が健康に直結するため、安心して暮らせる家づくりに役立ちます。

光熱費節約につながる

断熱性が高まると冷暖房の効率が上がり、少ないエネルギーで快適な温度を保てます。その結果、エアコンや暖房機器の使用時間が短くなり、電気代・ガス代などの光熱費を大幅に抑えられるのがメリットです。

環境負荷を軽減できる

断熱性の高い住宅はエネルギー消費量が少なく、CO₂排出の抑制につながります。結果として、地球温暖化防止や持続可能な社会への貢献にもなるのが特徴です。環境に優しい住宅は今後ますます評価される傾向にあり、時代に即した住まいが実現します。

住宅の劣化を防げる

断熱性能が低いと結露が発生しやすく、カビや腐食の原因になってしまいます。そのため断熱性を高めることで結露の発生を抑え、壁内や床下の湿気トラブルを防ぐことが大切です。これにより住宅そのものの寿命が延び、メンテナンス費用の抑制にもつながります。

補助金が活用できる場合も

出典:国土交通省・経済産業省・環境省,住宅省エネ2025キャンペーン,https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/,参照日2025.5.22

高断熱仕様の住宅は、国や自治体の補助金・助成制度の対象になる場合があります。具体的には国土交通省の「住宅省エネ2025キャンペーン」では、GX志向型住宅(断熱等性能等級6以上)等の基準を満たす場合に補助金を交付しています。

計画段階で確認・申請すれば、新築やリフォームの費用負担を抑えることが可能です。くわしくは、公式サイトをご確認ください。

【参考】国土交通省|住宅省エネ2025キャンペーン

UA値を下げて「断熱性をUP」する方法

ここでは、UA値を下げて住宅の断熱性を向上させる方法について紹介します。複数の手法を取り入れることでさらに効果が期待できるため、参考にしてみてください。

窓の面積を減らす

住宅の中でも、窓は熱の出入りが最も多い場所のひとつです。そのため窓の面積を減らすことで、UA値の改善に大きく貢献します。

とくに大開口の窓を減らしたり配置を工夫したりすることで、断熱性能を保ちつつ採光も確保できる設計が可能です。

内窓を設置する

既存の窓の内側にもう一つ窓を取り付ける「内窓(二重窓)」は、手軽に断熱性を高められる手法です。空気層ができることで断熱・防音効果が向上し、冬の寒さや結露の軽減にも役立ちます。リフォームの補助金対象となることも多く、人気の高い対策です。

樹脂サッシを採用する

樹脂サッシは熱を通しにくく、アルミサッシより断熱性能が高いのが特長です。最近ではアルミと樹脂を組み合わせた「複合サッシ」もありますが、断熱性を重視するなら樹脂サッシがおすすめです。

断熱材のグレードを上げる

断熱材は種類や厚み、性能によって断熱効果が異なります。グラスウールよりも高性能なフェノールフォームや真空断熱材などに変更することで、UA値の改善が可能です。屋根や壁、床など各部位で適材適所に選ぶことで、効率的な性能向上を実現しましょう。

UA値の注意点

UA値の設計計画時には、いくつかの注意点があります。とくに2025年には省エネ基準適合が義務化されているため、法改正についてもチェックしてみてください。

2025「省エネ基準適合義務化」に注意

出典:国土交通省,省エネ基準適合が義務付けられます,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001519931.pdf,参照日2025.5.22

2025年から、すべての新築住宅に対して「省エネ基準への適合」が義務化されました。これまでは努力義務だったため設計者や建築主の判断に委ねられていましたが、今後は法的に対応が求められます。

出典:国土交通省,省エネ基準の概要,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001390008.pdf,参照日2025.5.22

UA値もその基準の一部であり、建築確認の際に性能を証明できないと許可が下りない可能性もあります。具体的には、東京23区(6地域)で「UA値:0.87以下」です。

「UA値だけ」にこだわるのは意味がない

UA値は住宅の断熱性能を示す重要な指標ですが、それだけで家の快適性や省エネ性すべてを判断することはできません。たとえば日射の影響や気密性(C値)、設備効率なども総合的に考慮する必要があります。また、地域や暮らし方によって最適なバランスも異なるため、「UA値だけを良くすればよい」という設計では逆に住みにくくなることも。全体の設計方針と合わせてバランスよく考えることが大切です。

UA値計算のフリーソフト・ツール

UA値は現場で測定するのではなく、設計段階の条件等から計算できます。フリーソフトやツールを用いて、適切に計画しましょう。

㈳住宅性能評価・表示協会|住宅の外皮平均熱貫流率及び平均日射熱取得率(冷房期・暖房期)計算書

出典:㈳住宅性能評価・表示協会,申請補助ツール(各種計算書等),https://www2.hyoukakyoukai.or.jp/seminar/gaihi/keisansheet/,参照日2025.5.22

住宅性能評価・表示協会が提供するエクセル形式の計算書は、UA値(外皮平均熱貫流率)やηAC値(日射熱取得率)を簡易に算出できるツールです。

国のガイドラインに沿っており、設計者が断熱等級の確認や提出書類の作成にも活用できます。住宅の構造や部位ごとの面積、仕様を入力することで自動計算され、無料でダウンロード可能です。

【参考】住宅の外皮平均熱貫流率及び平均日射熱取得率(冷房期・暖房期)計算書

YKK AP|住宅省エネ性能計算ソフト

出典:YKK AP,住宅省エネ性能計算ソフト,https://www.ykkap.co.jp/business/gaihiweb/,参照日2025.5.22

YKK APが提供する「住宅省エネ性能計算ソフト」は、外皮性能(UA値など)と一次エネルギー消費量を同時に確認できる無料ソフトです。住宅設計の省エネ基準適合確認に対応しており、操作も直感的で使いやすいのが特徴となっています。

設計者はもちろん、省エネ住宅に関心のあるお施主様でも活用可能です。

【参考】住宅省エネ性能計算ソフト

Interface|外皮計算ソフト エネボス

出典:Interface,外皮計算ソフト エネボス,https://www.eneboss.com/eneboss.html,参照日2025.5.22

「外皮計算ソフト エネボス」は、省エネルギー基準(省エネ基準)の外皮性能 外皮平均熱貫流率(UA値)、冷房期・暖房期の平均日射熱取得率(ηAC値、ηAH値)を計算できるソフトです。各部位の面積、断熱材などの材料と厚さ、方位、隣接空間などを入力するだけで、外皮性能を正確に把握できます。

【参考】外皮計算ソフト エネボス

まとめ

UA値は住宅の断熱性能を示す重要な指標で、2025年からは省エネ基準への適合が義務化されます。快適性や省エネ、環境負荷軽減にもつながるため、住宅の設計時にはしっかりと確認したいポイントです。

窓や断熱材の工夫でUA値は改善でき、無料ツールも活用可能です。ただしUA値だけに偏っていては意味がないため、気密性や設備とのバランスも考慮しながら理想の住まいづくりを目指しましょう。