バリアフリー法とは|新法との違いや2025年改正を分かりやすく解説

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「バリアフリー法」についてピックアップします。2025年6月には法改正で多目的トイレ等の基準が変更になります。本記事ではバリアフリー新法との違いや概要、具体的な設計寸法基準等について詳しくご紹介します。
バリアフリー法とは

バリアフリー法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)とは、高齢者や障害者を含むすべての人が安全かつ快適に移動できるよう、社会全体のバリアフリー化を推進する法律です。
対象は建築物や鉄道駅、バス、道路などの公共施設で、状況に応じたバリアフリー基準の適用や段階的な改善が求められます。また市町村が独自に「重点整備地区」を指定し、総合的なバリアフリー化を進める仕組みも導入されています。
バリアフリー法とバリアフリー新法との違い
「バリアフリー法」と「バリアフリー新法」は、基本的に同じ法律のことを指します。バリアフリーに関連する法律のこれまでの経緯は、下表にまとめられます。
年度 | 概要 |
---|---|
1994年 | ①ハートビル法(正式名称:高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律) |
2000年 | ②交通バリアフリー法(正式名称:高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律) |
2006年 | バリアフリー法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)で、上の①②を統合。「バリアフリー新法」と呼ばれることも。 |
2006年に制定された「バリアフリー法」によって、1994年の「ハートビル法」と2000年の「交通バリアフリー法」が統合されました。この改正後の法律が「バリアフリー新法」と呼ばれています。
新法では、対象が交通機関だけでなく道路や公園、建築物などにも拡大されたのが大きな違いです。さらに地方自治体による重点整備地区の指定など、より包括的なバリアフリー施策が推進されるようになりました。
バリアフリー法の概要
ここでは、2020年に改正されたバリアフリー法の概要についてご紹介します。
①基本方針
バリアフリーでは、国が定める基本方針として下記の項目が定められています。
- 移動等円滑化の意義及び目標
- 施設設置管理者が講ずべき措置
- 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の指針
- 基本構想の指針
- 国民の理解の増進及び協力の確保に関する事項
- 情報提供に関する事項
- その他移動等円滑化の促進に関する事項
②国、地方公共団体、施設設置管理者、国民の責務
第4~6条に国や地方公共団体の責務が定められているほか、第7条には「国民の責務」も記載されています。
③公共交通施設や建築物等のバリアフリー化の推進
ハード面の移動等円滑化基準の適合については「新設等は義務、既存は努力義務」とされています。そして一定規模以上の公共交通事業者等は、ハード・ソフト取組計画の作成・取組状況の報告・公表義務があります。
またバリアフリー基準適合義務の対象施設は、下記の通りです。
- 旅客施設及び車両等
- 道路・路外駐車場
- 都市公園(旅客特定車両停留施設を追加)
- 建築物(公立小中学校を追加)
④地域における重点的・一体的なバリアフリー化の推進(心のバリアフリー)
市町村が作成するマスタープランや基本構想に基づき、地域における重点的かつ一体的なバリアフリー化が推進されています。
また基本構想にはハード整備に関する各特定事業及び「心のバリアフリー」に関する教育啓発特定事業を位置づけることで、関係者による事業の実施が促進されます。
⑤当事者による評価
実際に高齢者、障害者等の関係者で構成する会議を設置することで、定期的に移動等円滑化の進展の状況を把握・評価する仕組みが整えられています。
【参考】国土交通省|令和2年バリアフリー法改正
2025年6月バリアフリー法改正|多目的トイレ基準変更等
2025年6月にバリアフリー法が改正され、「トイレ」、「駐車場」及び「劇場等の客席」について基準が変更されます。具体的には、下記の内容となっています。
場所 | 改正内容 |
---|---|
トイレ | 現在、建築物に1以上の設置を求めている「車椅子使用者用のトイレ」について、原則として建築物の各階ごとに1以上の設置とする。 |
駐車場 | 駐車場:現在、建築物に1以上の設置を求めている「車椅子使用者用の駐車施設」について、駐車場の規模に応じて一定数以上を設置する。駐車台数が200台以下の場合→その数の2%以上駐車台数が200台超の場合→その数の1%+2以上 |
劇場等の客席 | 劇場等の客席:座席数に応じ、一定数以上の「車椅子使用者用スペース」を設置する。座席数400以下→2以上座席数400超→その座席数の0.5%以上 |
【参考】国土交通省|トイレ、駐車場、劇場等の客席に関するバリアフリー基準の改正について(令和7年6月1日施行)
バリアフリー法の内容|具体事例を分かりやすく紹介

ここでは、バリアフリー法で定められている設計基準等について、具体事例をご紹介します。最近では店舗併用住宅等も注目されており、通常の住宅設計の際にも参考にできる部分が多いようです。バリアフリーな暮らしが実現しやすくなるため、ぜひチェックしてみましょう。
【参考】国土交通省|建築設計標準(令和2年度改正版)第2部 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準
エレベーター
- 主要な経路上のエレベーターの籠及び昇降路の出入口の幅は、80cm以上とする。
- 主要な経路上のエレベーターの乗降ロビーは、高低差がないものとし、その幅及び奥行きは、150cm以上とする。
- 主要な経路上のエレベーターの籠の奥行きは、135cm以上とする。
- 籠の床と乗降ロビーの床の段は小さくし、かつ、すきまは、車椅子のキャスターが落ちないよう、3cm程度以下とする。
階段
- 蹴込み寸法は、2cm以下とする。
- 主たる階段の有効幅員は120cm以上とする。(手すりが設けられた場合にあっては、手すりの幅が10cmを限度として、ないものとみなして算定することができる。)
- 杖使用者が円滑に上下できるよう、階段の有効幅員は、140cm以上とすることが望まし
- い。
- けあげの寸法は、16cm以下とすることが望ましい。
- 踏面の寸法は、30cm以上とすることが望ましい。
- 階段の勾配は、緩勾配とすることが望ましい。
- 手すりは、階段の上端では水平に45㎝以上、下端では斜めの部分を含めて段鼻から45㎝以上、延長することが望ましい。
- 視覚障害者に対し段差の存在の警告を行うため、階段の上端に近接する廊下等の部分には点状ブロック等を敷設する。
スロープ(傾斜路)
- 主要な経路上の傾斜路の幅は、段に代わるものは120cm以上、段に併設するものは90cm以上とする。
- 傾斜路の幅は、段に代わるものは150cm以上、段に併設するものは120cm以上とすることが望ましい。
- 主要な経路上の傾斜路の勾配は、1/12を超えないものとし、高さが16cm以下のものでは、1/8を超えないものとする。
- 傾斜路の勾配は、1/15を超えないものとすることが望ましい。
駐車場
- 駐車場には、車椅子使用者が円滑に利用することができる駐車施設を1以上設ける。
- 幅は、350cm以上とする。
- 車椅子使用者用駐車施設は、当該車椅子使用者用駐車施設から利用居室までの経路の長さができるだけ短くなる位置に設ける。
まとめ
バリアフリー法は、高齢者や障害者を含むすべての人が安全に移動・利用できる環境を整備する法律です。2025年の法改正では、建築物の各階に車椅子対応トイレの設置、駐車場規模に応じた障害者用駐車スペースの確保、劇場の座席数に応じた車椅子スペースの設置などが求められます。これにより、誰もが利用しやすい社会の実現が期待されます。