仕様基準とは|建築物省エネ法・適判を簡素化!性能基準との違いも解説

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Category: 省エネ情報

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「仕様基準」についてピックアップします。2025年4月からは、省エネ基準適合が義務化となっています。しかし仕様基準を用いることで、面倒な計算や適判が不要になるためおすすめです。本記事では仕様基準と性能基準の違いや、具体的なメリットについてご紹介します。

2025年4月、建築物省エネ法で「省エネ基準適合」が義務化

出典:国土交通省,省エネ基準適合,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001519931.pdf,参照日2025.3.4

2025年4月より建築物省エネ法が施行され、「省エネ基準適合」が義務化となっています。具体的には原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられ、建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性審査が行われるという仕組みです。

「省エネ基準適合住宅」とは

出典:国土交通省,建築物省エネ法 木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック,https://www.mlit.go.jp/common/001586400.pdf,参照日2025.3.4

省エネ基準適合住宅とは、下記の基準を満たす住宅のことを指します。

  • 一時エネルギー消費量基準(BEI):等級4
  • 外皮基準(断熱):等級4

そして将来的には2030年までに省エネ基準の引き上げが行われ、ZEH水準が新築の標準となる予定です。これにより、住宅の快適性や省エネ性をアップさせる目的があります。

【関連記事】省エネ基準適合住宅とは|確認方法や住宅ローン控除のポイント

省エネ基準の確認方法|違いをチェック

省エネ基準適合の義務化はエネルギー削減等のメリットが大きいですが、手続きが従来より煩雑になってしまうのがデメリットです。

省エネ基準の確認方法としては「性能基準」と「仕様基準」があります。ここでは、それぞれの違いについて整理しておきます。

①省エネ適合性判定が「必要」|性能基準

出典:国土交通省,【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/02.html,参照日2025.3.4

「性能基準」とは、平成28年4月に施行された告示「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における算出方法等に係る事項(平成28年国土交通省告示第265号)」のことです。

この基準では、外皮に関する評価手法(外皮平均熱貫流率(UA)と冷房期の平均日射熱取得率ηAC)と、設備に関する評価手法(一次エネルギー消費量)が定められています。詳細な値が求められますが、細かい計算が必要になる点がデメリットです。

性能基準に則る場合には、建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性審査を行うことになっています。

【参考】㈶住宅・建築SDGs推進センター|住宅の省エネルギー基準

①省エネ適合性判定が「不要」|仕様基準

出典:国土交通省,【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/02.html,参照日2025.3.4

「仕様基準」とは、平成28年4月に施行された告示「住宅部分の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準(平成28年国土交通省告示第266号)」のことです。

外皮の性能に関する基準、開口部の性能に関する基準と一次エネルギー消費量に関する基準が規定されています。断熱材・開口部の性能値のみで判断可能なため、細かな計算が不要です。

そして建築確認手続きにおける省エネ基準への適合性審査も、不要となります。これにより、手続きや審査が比較的簡単になるというメリットがあります。

【参考】㈶住宅・建築SDGs推進センター|住宅の省エネルギー基準

国交省も「仕様基準」をおすすめ|メリットとは

出典:国土交通省,仕様基準,https://www.mlit.go.jp/common/001615405.pdf,参照日2025.3.4

ここでは「仕様基準」の特徴やメリットについて詳しくご紹介します。国土交通省も「仕様基準を用いることで住宅の省エネ性能を簡単に評価できます」という資料を発表しており、導入を推奨しています。

省エネ基準・誘導基準適合確認が簡単

仕様基準を用いると、詳細な計算を行わずに省エネ基準や誘導基準への適合性を確認できます。具体的にはチェックリストに必要事項を記入するだけで済むため、設計や施工の負担が軽減できるのがメリットです。

適判が不要

仕様基準を利用することで、省エネ適合性判定(適判)が不要となります。これにより適判の申請費用や手続きが省略でき、建築確認申請がスムーズに進みます。

省エネ基準・ZEHに活用できる

仕様基準には「省エネ基準用」と「誘導基準用」の2種類があり、前者は2025年4月時点での最低ライン、後者はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の高い基準となっています。これにより、目的に応じた基準の選択が可能です。

外皮計算・一次エネルギー性能基準で計算不要に

仕様基準を活用することで、外皮面積や一次エネルギー消費量の詳細な計算が不要となります。設計段階での作業負担が軽減できることで、効率的な省エネ設計が可能となります。 

仕様基準の具体事例|国交省ガイドブックを解説

ここでは、国土交通省が発表している「仕様基準」のガイドブックの一例をご紹介します。断熱材の熱抵抗R(充填断熱工法 軸組構法)については、下記の仕様基準が挙げられています。それぞれに該当する仕様にすることで基準をクリアできるため、選定が簡単です。

出典:国土交通省,木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック【省エネ基準編】(4~7地域版)
,https://www.mlit.go.jp/common/001586400.pdf,参照日2025.3.4
部位仕様例熱抵抗値R
屋根高性能グラスウール16K 90+90mmR=4.8
高性能グラスウール14K又は16K 85mm以上R=2.2以上
基礎壁(外気に接する部分)押出法ポリスチレンフォーム3種bA 50mmR=1.8
基礎壁(その他の部分)押出法ポリスチレンフォーム3種bA 20mmR=0.7
天井高性能グラスウール14K又は16K 155mmR=4.1
床(外気に接する部分)押出法ポリスチレンフォーム3種bA 100mmR=3.6
床(その他の部分)押出法ポリスチレンフォーム3種bA 65mmR=2.3

その他の部位についてもガイドブックに記載されているため、導入時に確認してみましょう。

【参考】国土交通省|仕様基準ガイドブック

まとめ|仕様基準を活用しよう

2025年4月からは、建築物省エネ法により省エネ基準適合が義務化となっています。しかし仕様基準を用いることで、計算不要で簡単に仕様が選べます。また適判も不要で手続きを簡便化できるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。