住宅ストックとは|2025国土交通省補助金がスタート

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「住宅ストック」についてピックアップします。国土交通省では2025年に良質住宅ストック形成を目的とした補助金事業を実施しており、活用の広がりが期待されます。本記事では補助金の概要や、住宅ストックの定義や課題について分かりやすく解説します。

国土交通省「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」を開始

出典:国土交通省,住宅ストック維持・向上促進事業,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_mn4_000006.html,参照日2025.4.15

国土交通省は、2025年3月より「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業(先導型事業及び普及型事業)」の公募を開始しました。これは住宅の質の維持・向上が適正に評価されるような「住宅ストック」の維持向上・流通システムの開発等に、補助金を交付する事業です。

これにより「良質な住宅ストック」が市場において適正に評価され、維持・向上が適切に図られる市場環境の整備を図ることが目的です。

「住宅ストック」とは|定義を解説

ここでは「住宅ストック」の定義や流通推移等について、分かりやすく解説します。

住宅ストックの定義

住宅ストックとは、ある時点で国内に存在するすべての住宅の総数を指します。新築・中古、使用中・空き家を問わず、建物として存在している住宅すべてが含まれるのが特徴です。

そもそもストック(stock)には「蓄積」や「在庫」といった意味があり、これにより、国全体の住宅資産の規模を把握できます。住宅政策や都市計画を立案する際の基礎的な指標として使われ、持続可能な住環境づくりにおいても重要な役割を果たしています。

空き家・中古住宅との違い

住宅ストックは「存在しているすべての住宅」を指す広い概念ですが、空き家や中古住宅はその中の一部を表します。

まず「空き家」は人が住んでいない住宅であり、住宅ストックに含まれるが利用されていない状態のものです。そして「中古住宅」は過去に誰かが居住していて、現在流通している売買対象の住宅のことを指します。つまり住宅ストックは「全体」、空き家や中古住宅はその「内訳」に当たります。

住宅ストックの推移

出典:国土交通省,住宅ストック維持・向上促進事業,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_mn4_000006.html,参照日2025.4.15

日本の住宅ストックは、戦後の住宅不足を背景に急速に増加し続けてきました。とくに高度経済成長期以降は新築供給が盛んで、世帯数を上回るペースで住宅が建設されたのが特徴です。その結果総住宅数は増加を続け、2023年には約6,505万戸となっています。

一方で人口減少や世帯規模の縮小により、空き家率も上昇しているのが課題です。そのため、住宅ストックの「量」から「質」や「活用」への転換が求められる時代に入っています。

【参考】国土交通省|令和6年度 住宅経済関連データ(2)住宅ストックと世帯数の推移

住宅ストックの課題

ここでは、住宅ストックの課題について詳しく解説します。

良質な住宅ストックの流通が少ない

出典:国土交通省,住宅ストック維持・向上促進事業,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_mn4_000006.html,参照日2025.4.15

中古住宅市場ではリフォーム済み等で性能の高い住宅の流通が少なく、安心して購入できる「良質な住宅」の供給が不足しています。

そのため多くの場合で新築を選択しがちで、既存住宅の有効活用が進んでいません。改善のためにはインスペクション(建物検査)や性能表示制度の普及とともに、質の高いストックの流通促進が求められます。

住宅ストックと居住ニーズのミスマッチ

住宅ストックの中には、立地や間取り、設備などが現代のライフスタイルや家族構成に合っていないケースが多く見られます。たとえば郊外には多くの空き家がある一方で、都市部では住宅不足が続いています。

また高齢化が進む中でバリアフリー化されていない住宅も多く、住み替えニーズに対応できていません。そのため、ニーズに即した改修リフォームが必要です。

断熱性能向上リフォームが必要

多くの既存住宅は建築当時の古い基準で建てられており、断熱性能が不十分です。とくに1980年代以前の住宅は「旧耐震基準」と呼ばれており省エネ基準を満たしていないことが多く、夏は暑く冬は寒い住環境となっています。

これにより冷暖房効率が悪化するだけでなく、光熱費の負担増や健康への影響も懸念されます。省エネ・健康・快適性を実現するためには、断熱改修などの性能向上リフォームが急務です。

空き家の増加と管理不全

住宅ストックの増加と並行して、利用されない空き家も急増しています。2023年時点で空き家は約900万戸に達し、その多くが老朽化や管理不全の状態です。

放置された空き家は防災・防犯・景観上の問題を引き起こす可能性があり、地域全体の資産価値の低下にもつながります。こういった事情から、空き家の利活用や解体支援が重要な課題となっています。

2025国土交通省の住宅ストック補助金事業

出典:国土交通省,住宅ストック維持・向上促進事業,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_mn4_000006.html,参照日2025.4.15

ここでは、2025年の国土交通省「住宅ストック補助金事業」について分かりやすく解説します。具体的には下記4つの事業が軸になっており、それぞれ目的や補助対象等が異なります。

  • ①良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業
  • ②住宅ストックの相談体制整備事業
  • ③住宅ストックの担い手支援事業
  • ④地域特性を踏まえた住まいづくりのための住宅金融モデル事業

①良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業

出典:国土交通省,住宅ストック維持・向上促進事業,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_mn4_000006.html,参照日2025.4.15

「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」は、維持管理やリフォームの実施によって住宅の質の維持・向上が適正に評価されるよう、各種制度の活用を促進する事業です。

合わせて「維持管理・性能評価・流通・金融」を一体的に連携させた仕組みの開発・普及を支援し、良質な住宅ストックの形成とその円滑な流通・活用を目指します。これにより住宅資産としての価値を「見える化」し、安心・信頼できる市場の構築を推進します。

補助金

本事業は「先導型・普及型」に分類されています。それぞれの対象経費は、下表の通りです。

先導型事業普及型事業
① 仕組みの開発に要する経費補助対象対象外
② 体制整備及び周知に要する経費補助対象補助対象
③ 性能維持向上に要する経費 対象外補助対象

そして、具体的な補助金額は下表の通りです。

【先導型事業】

補助対象内容補助上限額補助率・条件等
①仕組みの開発最大 2,000万円定額(対象経費全額を支援)例:AIでリフォーム内容を提示する仕組みなど
②体制整備・周知最大 1,000万円定額(例:協議会の構成・パンフレット作成・説明会開催など)

【普及型事業】

補助対象内容補助上限額補助率・条件等
②体制整備・周知最大 1,000万円定額
③性能維持向上最大 1戸あたり100万円事業全体で最大2,000万円程度・適切な維持に要する経費:定額・質の向上に要する経費:1/3の補助

②住宅ストックの相談体制整備事業

「住宅ストックの相談体制整備事業」は、既存住宅やリフォームに対する消費者の不安解消のため、住宅に係る紛争解決や、災害時の住宅の補修や再建等住宅ストックに係る相談体制整備等を行うのが主な目的です。

補助金

補助上限額補助率・条件等
上限 700万円定額

③住宅ストックの担い手支援事業

「住宅ストックの担い手支援事業」は、住宅リフォーム事業者団体、安心R住宅登録団体、既存住宅状況調査技術者講習実施機関等をはじめとする事業者団体等の人材育成や制度普及等を支援するのが主な目的です。

補助金

補助上限額補助率・条件等
上限 700万円2/3以内

④地域特性を踏まえた住まいづくりのための住宅金融モデル事業

​「地域特性を踏まえた住まいづくりのための住宅金融モデル事業」は、地域の特性や課題に応じた住宅金融の仕組みを構築し、良質な住宅ストックの形成と流通を促進することを目的としています。​この事業は以下の3つのモデルで構成されています。​

  • 既存住宅等価値発見モデル事業:​既存住宅の価値を適切に評価し、その価値を金融面で活用するモデルの構築を支援。​
  • 地域課題解決型住宅金融モデル事業:​地域特有の住宅・居住に関する課題を解決するための金融モデルの構築を支援。​
  • リバースモーゲージ・リスク分析事業:​リバースモーゲージの普及に向けたリスク分析や評価手法の開発を支援。

補助金

地域課題解決型住宅金融モデル事業については、下表①と②いずれかを選択して申請する形となります。両方に提案することは可能ですが、採択されるのはどちらか一方です。

補助対象内容補助上限額補助率・条件等
①評価モデル・分析モデルの構築や融資商品の開発等に要する経費最大 2,000万円定額
②体制整備及び周知に要する経費最大 1,000万円定額

まとめ

日本では住宅ストックが増加しており、2023年時点で約6,500万戸に達している状態です。しかし十分に活用されているとは言えず、今後は「量の確保」から「質の維持・向上」「有効活用」への転換が求められています。国土交通省の補助金事業等により、さらなる住宅ストックの活用推進が期待されます。