国土交通省発表、マンションの老朽化・管理不全対策へ新法案成立、安全確保と再生促進へ

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Category: 住宅業界動向

著者:BuildApp News編集部

令和7年3月4日、マンションの管理と再生を円滑に進めるための法律案が閣議決定されました。この「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案」は、マンションの新築から再生までの全期間を見据えた取り組みを実現するものです。

深刻化するマンションの老朽化問題

現在、日本全国のマンションは700万戸を超え、国民の10人に1人以上が居住する重要な住居形態となっています。しかし近年、建物の老朽化と居住者の高齢化という「二つの老い」が進行しています。特に築40年以上のマンションは全体の約2割(約137万戸)を占め、この数字は今後10年で2倍、20年で3.4倍に増加すると予測されています。

こうした状況の中、外壁の剥落などによる危険性の増加や、高齢化・所有者不明などによる集会決議の困難化といった問題が顕在化しています。これらの課題に対応するため、マンションのライフサイクル全体を通した管理・再生の仕組みづくりが急務となっていました。

改正法案の主な内容

1. マンション管理の円滑化

■新築時からの適切な管理体制構築

新築マンションでは、分譲事業者が管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みが導入されます。これにより、初期段階から適切な管理や修繕が行われる基盤が整います。

■利益相反防止のための情報開示強化

マンション管理業者が管理組合の管理者を兼ねながら工事等の受発注者となる場合、利益相反の懸念があります。そのため、自己取引等について区分所有者への事前説明が義務化されます。

■集会決議の簡素化

これまで修繕などの決議は全区分所有者の多数決が必要でしたが、改正後は集会出席者の多数決による決議が可能になります。これにより、所在不明者や関心が薄い所有者がいる場合でも、必要な修繕等の決議が円滑に行えるようになります。

■管理不全住戸への対応強化

管理不全の専有部分や共用部分を、裁判所が選任する管理人に管理させる制度が新設されます。これにより、放置された住戸や共用部分による周辺環境への悪影響を防止できます。

2. マンション再生の円滑化

■多様な再生手法の導入

建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取り壊しなどを、建て替えと同様に区分所有者の多数決(原則5分の4以上)により可能とする制度が創設されます。また、これらの決議に対応した事業手続きも整備されます。

■隣接地等の活用促進

隣接地や底地の所有権等について、建て替え等の後のマンションの区分所有権に変換することが可能になります。これにより、容積確保のための隣接地取り込みに関する合意形成が促進されます。

■建て替え時の高さ制限緩和

耐震性不足等で建て替えをする場合、容積率のほか、特定行政庁の許可による高さ制限の特例が設けられます。これにより、建て替え後も適切な居住空間の確保が可能になります。

3. 地方公共団体の取り組み強化

■危険なマンションへの対応強化

外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対して、地方公共団体が報告徴収、助言指導・勧告、あっせん等を行う制度が整備されます。これにより、10年後には危険なマンションの減少を目指しています。

■民間団体との連携促進

区分所有者の意向把握、合意形成の支援等の取り組みを行う民間団体の登録制度が創設されます。これにより、行政と民間が連携したマンション管理・再生の支援体制が強化されます。

期待される効果

この法改正により、マンション管理計画認定の取得割合を現在の約3%から5年後には20%へと引き上げることが目標とされています。また、マンションの再生等の件数も現在の472件から5年後には1,000件に増加させることを目指しています。

これらの取り組みにより、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」に直面するマンションの問題解決が進み、安全で快適な居住環境の維持・向上が期待されます。また、適切に管理されたマンションが増えることで、中古マンション市場の活性化にもつながるでしょう。

今回の法改正は、マンションという社会的資産を適切に管理し、次世代に引き継いでいくための重要な一歩となります。

出典情報

国土交通省リリース,マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案を閣議決定~新築から再生までのライフサイクル全体を見通した取組~,https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000224.html