部分断熱改修とは?全体断熱との違い・効果・適用できる補助金を解説

令和6年6月に部分断熱等実証委員会から、部分断熱改修に関するパンフレットが公開されました。しかし、部分的に断熱改修をする意味やメリットがわからない人もいるでしょう。
そこでこの記事では、部分断熱改修の概要を説明したのち、実施する効果やメリット、適用できる補助金について詳しく解説します。
目次
部分断熱改修とは
部分断熱改修とは、必要な部分のみを断熱する改修工事のことです。
例えば「すきま風のせいで暖房器具を使っても部屋が寒いままだ」「夏場にクーラーをつけても涼しくならない」というように、室内の空気が外に逃げてしまう、また逆に外気が室内に入ってくるという状態を改善し、快適な室内空間をつくるために断熱改修を実施します。
出典:部分断熱等実証委員会「ご自宅の中でよく使う生活空間から優先して断熱改修しませんか?」
また、断熱工事を家全体に施すためには、何十~何百万円もの費用がかかってしまうのがネックです。対して部分断熱改修は、リビングや寝室など自宅でよく使う部分などをメインに部分改修します。
費用負担を抑えつつ快適な住宅が手に入ることから、近年では国土交通省でも推進されているのが部分断熱改修の特徴です。
全体断熱改修との違い
住宅の部分断熱改修という考えができる前まで、断熱改修工事は家全体に対し実施するのが一般的でした。これを「全体断熱改修」と言います。しかし、全体断熱改修は効率よく家を断熱できる一方で、いくつかデメリットがある点に注意しなければなりません。
参考として以下に、部分断熱改修と全体断熱改修の違いを整理しました。
部分断熱改修 | 全体断熱改修 | |
工事内容 | よく利用する部屋のみを断熱する | 家全体を断熱する |
工事1回当たりの費用 | 安く抑えられる | 高い |
トータルコスト | 全体断熱改修よりも高くなりやすい | 一度で工事をするため費用を抑えやすい |
工事期間 | 短い | 長い |
例えば部分断熱改修は、工事1回当たりにかかる費用を安く抑えられます。ただし、全体断熱改修と比べて工事業者の手間賃などが増えるため、最終的には家全体を断熱する予定だという場合には、トータルコストが増えてしまう可能性があることに気を付けてください。
また部分断熱改修は工事期間が短いほか、工事をしない部屋もあるため、わざわざ仮住まいを探す必要がありません。自宅で生活をしながら工事を任せられるのが魅力です。一方で全体断熱改修は、建物全体を工事するため、アパート、マンスリーマンションといった仮住まいを探す必要があります。こういった点においても、費用差が出てくると覚えておきましょう。
部分断熱改修の工事例
部分断熱改修では、どのような工事を実施するのでしょうか。参考として以下に、改修工事の例を掲載しました。
- 屋根裏・床下・壁裏に断熱材を設置する(断熱性能のある建材に張り替える)
- 窓を断熱性能のあるものに取り換える(二重サッシなど)
- 開口部や電気系統部で発生しやすいすきま風を埋める
- 吹き抜けをなくす
上記の工事はあくまで一例ですが、部屋のなかの四方八方に断熱性能を付与することで、以前よりも暖かい空気・涼しい空気を保ちやすい部屋をつくり出せます。
また部分断熱改修は工事の実施方法によって品質が変化します。参考として以下に、断熱性能の改善効果を高められた事例をまとめました。
品質 | 建物の種類 | 工事目的 | 実施した改修工事 | 効果 |
改善 | 2階建て住宅 | 間取りの変更に伴う改修工事 | 主構造部に断熱材を追加し、樹脂サッシ・複層ガラスへ交換 | 部分的なU値(熱還流値)が4倍近く改善 |
同上 | 1階全体の改修(水まわりをも含む) | 天井と床に断熱材を追加し、樹脂サッシ・複層ガラス・内窓へ交換 | 部分的なU値(熱還流値)が2倍近く改善 |
参考:部分断熱等改修実証委員会「部分断熱改修の進め方と効果~実証事業で得られた知見~(令和6年6月)」
部分断熱改修に期待される効果
必要な部屋のみを断熱改修する「部分断熱改修」には、依頼者の費用・生活における負担を解消できる効果があります。参考として、工事中・工事後において効果を実感しやすいポイントをまとめました。
仮住まいが不要であるため工事費の負担を削減できる
部分断熱改修をする場合、一部の部屋のみでしか工事を実施しないため、工事対象外の部屋を利用して生活を続けられます。つまり、工事期間中に発生する仮住まい確保の費用や手間の負担を削減できるのが魅力です。
例えば、全体工事で1ヶ月かかり、家賃10万円の仮住まいを確保する場合には、工事とは関係ない部分に10万円のコストを割かなければなりません。
対して部分断熱改修は、仮住まいを確保せずに生活できる場合があります。仮住まいが不要になった分だけ費用を浮かせられるほか、生活面におけるストレスを回避しやすくなるのも部分断熱改修を実施する効果だと言えます。
部分断熱改修で済む場合にはトータルコストを抑えられる
「自宅に使っていない部屋が多い」「2階部分はあまり使わない」という場合には、部分断熱改修をすることにより、全体断熱改修よりも工事にかかるトータルコストを抑えやすくなります。
例えば、2階建て住宅のうち、子どもたちが独立して2階部分を使わなくなった場合などは、2階部分を断熱してもそこまで意味がありません。そのような状況下で全体断熱改修を実施すると、余計な費用負担が発生します。
対して部分的に断熱するだけで済めば、工事が不要な部屋があるだけ、材料費や人件費などを削減できるのが魅力です。使わない部屋が多い場合には、必要な場所だけ断熱する問動き方をするのが効果的でしょう。
電気代といったランニングコストを節約できる
「よく空調設備を使う部屋」に対してだけ部分断熱改修を実施すれば、工事後は電気代の大幅な節約が可能となります。
まず部分断熱改修を実施すれば、断熱効果が高まり自宅内の暖かい空気・涼しい空気を外に逃がしにくくなるのが特徴です。その結果、エアコンや床暖房にかかる電力を抑えることができるようになるほか、時期によっては空調設備自体をつけなくても快適な室内環境を維持しやすくなります。
部分断熱改修に適用できる補助金一覧
部分断熱改修は、主に次のような補助金を適用できます。
補助金 | 補助額 |
住宅省エネキャンペーン(国交省、経産省、環境省) | 上限200万円/戸 ※工事内容による |
長期優良住宅化リフォーム推進事業(国交省) | 上限210万円/戸※工事内容による |
既存住宅の断熱リフォーム支援事業(環境省) | 上限200万円/戸※工事内容による |
補助金は、工事を実施する前に申請をしなければなりません。これから部分断熱改修を実施しようと考えている方は、まず工事業者に補助金の相談をすることからスタートするのがよいでしょう。
なお、補助金の上限額は実施する工事内容によって変化します。それぞれ補助額のルールがあるため、あらかじめどの補助金がもっとも多く補助されるのかを比較することが重要だと覚えておきましょう。
まとめ
部分断熱改修は、工事にかかる費用を削減できるほか、仮住まい確保の手間を削減しやすくなるリフォーム工事の方法です。
特に断熱性能が低い住宅の場合には、断熱性能を付与しない限り、高額な電気代が発生するほか、寒さや熱さを改善できない生活が続きます。自宅全体を改善する全体断熱改修の費用負担に厳しさを感じているなら、この機会に国からも推奨されている部分断熱改修を利用してみてはいかがでしょうか。