2027年「ZEH基準見直し」とは|GX ZEHの断熱等級や基準を分かりやすく解説

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トレンドワード:2027・ZEH基準見直し(GX ZEH)
「2027・ZEH基準見直し」についてピックアップします。近年、地球温暖化対策やエネルギー問題への関心が高まる中で、住宅にも高い環境性能が求められるようになっています。
とくに注目されているのが、年間のエネルギー収支ゼロ以下を目指す「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」です。本記事では、2027年に見直される「ZEH新基準(GX ZEH)」について分かりやすく解説します。
ZEH基準とは|国土交通省
ここではまずZEH基準について、国土交通省の資料を基に分かりやすく解説します。
ZEH基準の概念
ZEH(ゼッチ)は(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、住まいのエネルギー収支をゼロにする住宅のことを指します。
具体的には「外皮の断熱性能向上・高効率な設備システムの導入・再生可能エネルギーの導入」といった取り組みで、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指します。
①創エネ
ZEHでは太陽光発電などの再生可能エネルギーを創り出す「創エネ」によって、「エネルギー収支正味ゼロ」を目指します。
②省エネ
高効率な設備を導入することによって消費エネルギーを少なくすることで「省エネ」を実現します。これにより住宅で使用するエネルギーを大幅に削減できるので、光熱費も大幅に削減できるのが特徴です。
③高断熱
高断熱住宅にすることで、室内温度を保ちやすくなります。夏は涼しく冬は暖かく、一年中快適に生活できるのがメリットです。
また高断熱住宅では、居室間の温度変化が小さくなります。ヒートショック対策につながるほか、結露による湿気やカビの発生を防ぎ健康的な暮らしにつながります。
ZEHの定量的な定義

ここでは、ZEHの定量的な定義について解説します。
【参考】ZEHの定義(改定版)
UA値
UA値とは住宅の断熱性能を示す指標で、値が小さいほど熱が逃げにくく、高断熱であることを意味します。ZEHでは地域区分に応じて基準UA値が定められており、この基準を下回ることで、冷暖房エネルギーの消費を抑える省エネ性能が確保されます。
具体的には「ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)」を満たした上で、UA 値[W/m2K] 1・2地域:0.40 相当以下、3地域:0.50 相当以下、4~7地域:0.60 相当以下)をクリアすることが条件です。
一次エネルギー消費量削減率(BEI)
BEI(Building Energy Index)とは基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の比率で、数値が低いほど省エネ性が高いことを表します。
ZEHではBEI≦0.8(20%以上削減)が求められ、省エネ機器の導入などにより冷暖房・給湯・照明・換気の消費エネルギーを大幅に削減します。
再生可能エネルギーの導入
ZEHでは太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することで、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロ以下にします。
また自己消費に加えて余剰電力の売電も可能で、エネルギー自立性や環境負荷低減に寄与します。ただし再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減が必須です。
2027年見直しの「ZEH新基準」とは|「GX ZEH」の変更点を整理
経済産業省では「第48回省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会」で、ZEHの定義の見直し案を提示しています。
具体的には2027年より、ZEH新基準に見直される予定です。新しい定義の名称については、現行との違いが分かるようにするため「GX ZEH」及び「GX ZEH-M」となります。
ここでは、新しい「GX ZEH」の具体的な基準について解説します。
①省エネ性能
断熱等級
現行のZEH定義では「断熱等級5」ですが、2027年以降の新基準からは「断熱等級6」に変更されます。
ただし最長2030年までの措置として、下記の例外規定が設けられます。
- 角住戸等に限り断熱等級5以上とすることを認める。ただしその場合にあっては、全住戸の外皮平均熱貫流率(UA値)の平均値が断熱等級6の基準値を満たすことを条件とする。
一次エネルギー消費量削減率(BEI)
現行のZEH定義では「一次エネルギー消費量削減率:20%」ですが、2027年以降の新基準からは「35%」に変更されます。
具体的には「BEI:0.80」から、GX志向型住宅の要件と同じ「BEI:0.65」となる予定です。
②設備要件
現行のZEH定義では、設備要件は設けられていません。しかし新定義では、「① 高度エネマネ ② 蓄電池(PVありの場合のみ)」に変更されます。
「高度エネルギーマネジメント」にはHEMS等が該当し、発電量やエネルギー使用量を把握した上で、複数機器の統合制御により省エネや自家消費・DRへの貢献を促すのが役割です。そして「蓄電池(初期実効容量5kWh以上)」に 再エネ発電を貯めることで自家消費を促し、エネルギー自給率を向上させます。
ただし「EV充電器/充放電器」を推奨設備とし、導入検討にあたり必要な情報説明が建築士に求められます。
③地域性・建物特性
現行のZEH定義では、「多雪地域• 都市部狭小地」において地域性・建物特性が認められています。多雪地域は落雪等のリスクがあり、狭小地等は一定量以上の太陽光の搭載が難しいケースがあることから、一律の設置が困難ということが理由です。
一方で新定義では、集合住宅において「多雪地域• 6階以上」に変更されます。低中層でのOrientedの急増に対して、目指すべき水準と整合するよう高層(6階建~) 以上が対象です。ただし再エネ設置が必須でない「Oriented」が認められる場合であっても、再エネ設置の検討が推奨されます。
④再エネ要件
カーボンニュートラルに向けて、住宅における太陽光発電の設置容量を増やす必要があります。そこで2027年以降のZEHでは、ネット・ゼロ・エネルギーを軸としつつも、1戸あたりの太陽光搭載率の増加を促すことを企図して数値が引き上げられる予定です。
具体的には『ZEH・ZEH-M』の100%が最高値でしたが、『新ZEH+・新ZEH-M+』が新設されて「115%」になります。
2027年以降のZEHスケジュール
ZEH新定義は、2027年度から新規認証を開始する予定です。そして現行定義は、2027年度を期限に新規認証が停止されます。
ただし2027年度までに建設された住宅を改修する場合は、現行定義での認証取得も可能です。新規認証の停止後も、認証取得済みの住宅は現行定義の利用は継続できます。
2027年、ZEH新基準に向けた取り組み
2027年のZEH新基準(GX ZEH)導入に向けて、ハウスメーカーでは新たな取り組みが実施されています。ここでは、具体的な事例についてご紹介します。
大和ハウス工業
大和ハウス工業は、2025年7月2日より「断熱等級6」の標準化を順次開始しています。これは酷暑対策に加え、2027年4月から適用される「GX ZEHシリーズ」の基準に合わせることが狙いです。
具体的には、従来オプションで採用されていた「内外ダブル断熱(エクストラ断熱仕様)」を標準仕様としています。断熱材の厚みが「鉄骨商品では総厚184mm、木造商品では総厚150mm」あるため、安定した気密性・断熱性を実現できるのが特徴です。
「断熱等級6」の戸建住宅の室内は、「断熱等級3」と比較して室温上昇を最大約5~6℃抑えられます(最高気温40℃、2.72mの天井高の場合)。
パナソニックホームズ
パナソニックホームズでは、天井や外壁だけでなく、基礎の内側まで家全体を高性能断熱材で包み込む「家まるごと断熱」を採用しています。住まいから熱の出入りが多い窓には、断熱性に優れた樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシを採用しているのが特徴です。
断熱等性能等級6にも対応可能な高い断熱性能で、快適かつ省エネに配慮した住まいが実現します。
まとめ
ZEHは、高断熱・高効率設備による省エネ・太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入によって、年間の一次エネルギー消費量ゼロ以下を目指す住宅です。2027年以降は新基準に変更される予定で、さらなる性能向上が見込まれています。断熱・省エネ・創エネの3要素を組み合わせることで、環境負荷を抑えつつ快適な住環境の実現が期待されています。