大工になるには?資格やスキル|国交省が担い手不足解消へ

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トレンドワード:住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会
近年は高齢化や担い手不足により大工の数が減少していますが、国交省では「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」が開催され、待遇改善や教育体制の整備が進められている段階です。本記事では大工の仕事内容やなるための方法、役立つ資格・スキルについて解説しています。
大工の数が減少…
建設・土木作業者数は1995年以降減少傾向にあり、2020年までに約30%減少している状態です。その中でも「大工」は長期的に減少傾向で、およそ半減しています。
大工が減少している主な理由は、高齢化と若者のなり手不足です。体力を要する上に習得に時間がかかるため敬遠されがちであり、労働時間の不規則さや賃金の不安定さも影響しています。
さらに工場でのプレハブ化や建築の機械化が進み、従来の技術を必要としない場面も増えたことが若手の育成機会の減少にもつながっています。
国交省|大工の持続的確保のための取り組み
大工の持続的確保のため、国交省では「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」を開催しています。ここでは、具体的な取組内容について解説します。
賃金上昇
国土交通省では公共事業労務費調査に基づいて公共工事設計労務単価を決定し、2025年3月から適用しています。今回の決定により、全国全職種単純平均で前年度比6.0%引き上げられることになります。
具体的には、大工の単価は前年比6.3%アップの「2,9019円」です。13年連続で単価が上昇しており、優良人材確保のためにさらなる上昇も期待されています。
女性の働きやすさ改善
国土交通省では、建設業団体等と一体で女性活躍・定着促進に向けた実行計画を推進しています。具体的には現場のハード面からの環境整備として、快適なトイレや更衣室の設置を進めている他、適正工期の確保、ICT活用、朝礼の運営見直しなど働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。
さらに多様で柔軟なキャリアパスやロールモデルの提示によって、スキルアップできる環境を整えることにも意欲的です。
休日確保
建設業では、従来から長時間労働が課題となってきました。しかし「2024年問題」で時間外労働の上限規制が設けられたことで、労働環境の改善が図られています。
これによりライフワークバランスが適正化することはメリットですが、同時に担い手不足の問題も生じています。国土交通省による働き方改革の取り組みとしては、下記の事例が特徴的です。
- 1.規制内容の周知徹底
- 2.公共工事における週休2日工事の対象拡大
- 3.適正な工期設定
- 4.生産性の向上
民間でも「土日一斉閉所」や「適正工期確保宣言」といった取り組みが広がっており、今後さらなる徹底が期待されています。
大工の主な仕事内容
住宅における大工の主な仕事内容としては、木造建築物の建設やリフォームにおける木材の加工・組み立て等が挙げられます。建物の骨組みとなる柱や梁の施工から、床・壁・天井の造作、階段や建具の取り付けなど、構造から仕上げまで幅広く対応するのが特徴です。
設計図に基づき、寸法を測り木材を正確に加工する技術が求められます。また現場では他の職人(電気工・設備工など)との連携も重要で、全体の工程を意識しながら作業を進める必要があります。さらに新築だけでなく、リフォームや修繕、耐震補強などの仕事も多く、地域の住まいを支える存在です。
大工になるには|主な方法
ここでは、大工になるための主な方法を紹介します。「大工になるにはどうすればいいの?」と疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
専門学校・職業訓練校に入る
大工を目指す方にとって、専門学校や職業訓練校は基礎からしっかり学べるルートとして人気があります。建築の基礎知識や工具の使い方、安全管理、図面の読み方などを座学と実習で習得できるのが特徴です。
卒業後はハウスメーカーや工務店への就職がスムーズで、即戦力として期待されることもあります。また国家資格の取得支援や就職サポートも充実しており、未経験からでも安心して大工の道に進めるのがメリットです。
とくに文部科学省では「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」を実施しており、産業構造の絶え間ない変化に即応した職業人材育成に力を入れています。2025年度の予算額は、2億円となる見込みです。
親方に弟子入りする
昔ながらの方法である「弟子入り」は、現場で直接技術を学ぶスタイルです。親方のもとで日々の作業を通して技術を体で覚え、実務経験を積めるのが特徴です。
座学では学べない「現場の流れ」や「段取り力」、職人の心構えなども自然と身につきます。ただし親方の教え方や現場の状況に左右されることもあるため、長い目で見てコツコツ学ぶ姿勢が求められます。
ハウスメーカーや工務店に就職する
大工になるもうひとつの道は、ハウスメーカーや工務店に就職することです。就職後は社員や職人として現場に出ながら経験を積み、会社によっては研修制度や資格取得支援も受けられます。給与を受け取りながら技術を学べる点が魅力で、安定した環境で働きたい方にも向いています。
たとえば積水ハウス建設では、例年高校卒業予定者を中心とした「住宅技能工」を採用しています。施工技能を習得できる訓練校の育成カリキュラム変更などによる体制の強化や、施工技能の可視化を含む新たな人事評価制度の導入により、担い手を確保しているのが特徴です。
大工に役立てられる資格・スキル
ここでは、大工になるために役立つ資格やスキルについて紹介します。資格が必須ではない現場もありますが、スキルの証明に活用できるためぜひ参考にしてみてください。
建築大工技能士
建築大工技能士とは、実務経験を積んだ大工が技能レベルを証明できる国家資格です。1級・2級・3級があり、1級を取得すれば熟練者としての信頼性が高まります。
学科試験と実技試験があり、正確な加工技術や施工の知識、安全管理能力などが問われます。経験が必要ですが、着実にスキルアップを目指すうえでおすすめの資格です。
【参考】厚生労働省|建築大工技能士
ニ級建築士
二級建築士は木造住宅を含む中規模建築物の設計・工事監理が行える国家資格で、大工としての知識をさらに深めたい人におすすめです。設計図を読み解く力や法規、構造に関する理解が求められ、取得すれば現場監督やリフォーム提案など、仕事の幅が大きく広がります。
ただし学歴要件や実務経験が要件に含まれるため、ある程度の現場経験がある大工がキャリアアップとして取得するのに適した資格となっています。
【参考】㈶建築技術教育普及センター|二級建築士試験
木造建築物の組立て等作業主任者
この資格は高さ5メートル以上の木造建築物を組み立てる現場で、安全な作業を指揮するために必要な資格です。労働安全衛生法に基づいた「作業主任者」としての役割を果たすことが目的で、安全管理や指導力が求められます。
特定の工事を行う上で必須になる場合もあり、学科13時間の講習を受けることで完了します。
【参考】建設業労働災害防止協会|木造建築物の組立て等作業主任者技能講習
木造建築士
木造建築士は木造住宅に特化した設計や工事監理を行える資格で、主に住宅建築に関わる大工にとって大きな武器になります。木造建築の構造や施工、法規に関する知識が求められ、資格取得には学科試験と製図試験が課されます。
施主に提案できる範囲が広がるため、独立を目指す大工や工務店でのステップアップを考える方におすすめの資格です。
【参考】㈶建築技術教育普及センター|木造建築士試験
まとめ
大工は高齢化や若者のなり手不足により年々減少していますが、最近では待遇改善や働き方改革の動きも見られ、今後の活躍が期待されています。とくに資格取得支援や研修制度の充実により、安定した職業としての魅力も高まっています。
ものづくりのやりがいや地域への貢献といった魅力もあり、大工は今後も必要とされる職種です。