2025住宅セーフティネット法改正|背景・目的をわかりやすく解説

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Category: 住宅業界動向

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「住宅セーフティネット法」についてピックアップします。高齢化や空き家率の増加に伴う問題に対応するため、2025年に法改正が実施されます。本記事では法改正の背景や目的について分かりやすく解説する他、国土交通省による居住支援法人支援事業の補助金についても紹介します。

住宅セーフティネット法とは

出典:国土交通省,「居住支援法人」の活動を支援します!~本日から令和7年4月23日(水)まで募集~,https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000293.html,参照日2025.4.22

住宅セーフティネット法(正式名称:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)とは、住宅の確保に配慮が必要な方が安心して暮らせる賃貸住宅を増やすための法律です。

具体的には空き家や既存の住宅を活用し、高齢者や低所得者といった住まいに困っている人と賃貸住宅のマッチングを促進します。住宅支援のしくみを整備することで、社会全体の住まいのセーフティネット機能を強化することが主な目的です。

①住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度

住宅セーフティネット法では、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を「セーフティネット住宅」として登録できる制度を整備しています。登録住宅は自治体の情報提供サイトなどを通じて公開されており、入居者が物件を探しやすくなります。

大家にとっては社会貢献としての意義に加え、改修費補助や家賃債務保証などの支援を受けやすくなる点もメリットです。賃貸住宅の登録基準は、下記となっています。

  • 床面積が原則25㎡以上(地方公共団体による強化・緩和が可能)
  • 耐震性を有すること

②登録住宅の改修・入居への経済的支援

セーフティネット住宅として登録された物件には、住宅確保要配慮者が安全かつ快適に暮らせるようにするための改修工事に対し、国や自治体から補助金が出る制度があります。

また家賃の一部補助や家賃債務保証の支援もあり、貸主・借主双方の経済的負担を軽減します。こうした支援によってより多くの物件が登録され、住宅の選択肢を広げることが目的です。

③住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援

住宅セーフティネット制度では、住宅確保要配慮者とセーフティネット住宅を結びつけるマッチング支援が重要な柱です。自治体やNPOなどが相談窓口となり、住まい探しのサポートや、入居後の生活支援、連絡調整などを行っています。

とくに高齢の方や障がいをもつ方など、入居にあたって不安を抱える人々が安心して生活できるよう、多様な支援体制が整えられています。

2025年10月|住宅セーフティネット法改正

2017年に公布・施行された住宅セーフティネット法が、2025年に改正されます。主な改正内容は、下記の通りです。

施行日

改正住宅セーフティネット法案は2024年5月に成立し、6月に公布されました。そして改正法の施行は2025(令和7)年秋頃の予定です。

【参考】国土交通省|住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について

法改正①大家が賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備

出典:国土交通省,「居住支援法人」の活動を支援します!~本日から令和7年4月23日(水)まで募集~,https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000293.html,参照日2025.4.22

「大家が賃貸住宅を提供しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備」では、下記の内容に改正されます。

  •  [1] 終身建物賃貸借の利用促進(※賃借人の死亡時まで更新がなく、死亡時に終了する(相続人に相続されない)賃貸借)
  •  [2] 居住支援法人による残置物処理の推進
  •  [3] 家賃債務保証業者の認定制度の創設

法改正②居住支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進

出典:国土交通省,「居住支援法人」の活動を支援します!~本日から令和7年4月23日(水)まで募集~,https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000293.html,参照日2025.4.22

「居住支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進」では、居住サポート住宅の認定制度の創設(福祉事務所を設置する自治体による認定)が実施されます。

法改正③住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化

出典:国土交通省,「居住支援法人」の活動を支援します!~本日から令和7年4月23日(水)まで募集~,https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000293.html,参照日2025.4.22

「住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化」では、下記の内容に改正されます。

  •  [1] 国土交通大臣及び厚生労働大臣が共同で基本方針を策定
  •  [2] 市区町村による居住支援協議会※設置を促進(努力義務化)

住宅セーフティネット法改正の背景・目的

ここでは、2025年の住宅セーフティネット法改正の背景や目的を解説します。

「住宅確保要配慮者」の住まい確保

出典:国土交通省,住宅セーフティネット制度の見直しについて,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001728267.pdf,参照日2025.4.22

住宅確保要配慮者とは、「高齢者、障がい者、低所得者、子育て世帯、被災者など」を指します。近年単身世帯の増加や持ち家率の低下が進む中で、住宅確保要配慮者は民間賃貸住宅への入居が難しいというのが現状です。

2025年改正ではこうした方が安心して暮らせる住宅を確保するため、登録住宅の供給促進と支援体制の強化が図られました。住まいを失うリスクを減らし、誰もが安定して暮らせる社会を実現することが目的です。

高齢入居者への賃貸リスクの軽減

出典:国土交通省,住宅セーフティネット制度の見直しについて,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001728267.pdf,参照日2025.4.22

高齢者の単身世帯が増える中、貸主が「孤独死」や「家賃滞納」などを懸念して入居を断られるケースが多くあります。

そのため2025年の法改正では家賃債務保証や見守り支援、万一の対応体制の整備により、貸主側のリスクを軽減しています。高齢者の住まい確保を促進し、地域で安心して老後を過ごせる環境づくりを後押しすることが目的です。

空き家の活用推進

出典:国土交通省,住宅セーフティネット制度の見直しについて,https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001728267.pdf,参照日2025.4.22

全国的に増加する空き家は、防災や景観の面でも課題となっており、地域資源として有効活用することが求められています。

2025年の住宅セーフティネット法改正では、こうした空き家を住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅として活用しやすくする仕組みが強化されました。登録制度や改修補助を通じて空き家の利活用を促進し、住まいに困る人々への住宅供給を拡大することが目的です。

居住支援法人の整備

住宅確保要配慮者の入居支援を担う「居住支援法人」は、住まい探しのサポートや見守り、相談対応などを行う専門機関です。

2025年改正では居住支援法人に対する支援が拡充され、活動の安定性と継続性を高める仕組みが強化されました。民間と行政の連携を強化し、地域全体で住宅確保を支える体制の構築を目指しています。

「居住支援法人」とは

ここでは、住宅セーフティネット法と関わりの深い「居住支援法人」について分かりやすく解説します。

居住支援法人とは住宅確保要配慮者の住まい探しや入居支援を行う法人で、国土交通省の指定を受けて活動しています。住まいの情報提供、相談支援、家主との調整、入居後の見守りなどを行い、地域のセーフティネットとして重要な役割を果たしています。

住宅確保要配慮者の主な対象は、高齢者・障がい者・低所得者・被災者・ひとり親世帯など、住まいの確保が難しい方です。

居住支援法人のメリット|「儲かる」のは本当?

居住支援法人は支援活動に対して国や自治体から補助金を受けられるほか、相談事業や家賃保証などで安定収益を得られる可能性があります。現在では、地域の不動産会社や福祉事業者が法人化して参入する例も増えています。

地域貢献と持続的経営が両立できるモデルとして注目されています。ただし「儲かる」ことだけが目的ではなく、住環境整備といった社会全体への貢献意識が求められる事業です。

居住支援法人のデメリット

居住支援法人の活動は社会的意義が大きい一方で、人員確保や運営資金の安定化が課題です。支援対象者には福祉的な対応が必要なケースも多く、専門知識と丁寧な対応が求められます。

また家主との信頼関係の構築やクレーム対応など実務上の負担も重く、事業の継続には高い運営力が必要とされます。

国土交通省が「居住支援法人支援事業」を実施

国土交通省は、居住支援法人の活動を支えるため「居住支援法人支援事業」を実施しています。これは相談窓口の整備や入居支援の体制づくり、法人設立支援、家賃債務保証の提供などを行うもので、居住支援法人の立ち上げや運営の安定化を後押しする制度です。

地域の住宅セーフティネットの中核としての役割を強化する狙いがあります。

補助金額(令和7年度)

令和7年度の居住支援法人支援事業の補助金額は、下表の通りです。

【基本】

分類入居前相談支援を週30時間以上実施(複数人の合計可)入居前相談支援を週15時間以上30時間未満実施(複数人の合計可)
(1)入居前孫壇支援【必須】上限300万円上限100万円
(2)入居中の居住支援上限100万円上限100万円

【特定】

分類項目
(3)特定居住支援①障がい者向けの入居前の相談支援 上限300万円
②刑務所出所者向けの入居前の相談支援 上限300万円
③外国人向けの入居前の相談支援 上限300万円
④孤独・孤立対策に資する居住支援 上限300万円
⑤モデル契約条項を活用した死後事務委任契約に関する支援 上限300万円
(4)地域の居住支援体制整備①居住支援法人として関与した居住サポート住宅の計画認定に向けた準備 上限500万円
②地方公共団体等から依頼され対応した居住支援案件 上限500万円
③地方公共団体等から依頼されたセミナー等における情報提供 上限500万円

【スタートアップ支援】

分類入居前相談支援を週30時間以上実施(複数人の合計可)入居前相談支援を週15時間以上30時間未満実施(複数人の合計可)
2024年4月1日から2025年3月31日までに 指定を受けた居住支援法人上限500万円上限300万円

【参考】国土交通省|「居住支援法人」の活動を支援します!

まとめ

住宅セーフティネット法は、住宅に困る人々を支援するための重要な制度であり、2025年の改正では支援の実効性がさらに高められました。登録住宅の拡充や居住支援法人の強化により、高齢者や低所得者も安心して住まいを得られる環境が整いつつあります。誰もが安心して暮らせる社会の実現には、制度の理解と地域全体での支援体制の充実が欠かせません。