GX志向型住宅とは|2025補助金条件や長期優良住宅との違い
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「GX志向型住宅」についてピックアップします。2025年に実施される「子育てグリーン住宅支援事業」で新設された省エネ基準であり、従来より厳しい基準になっているのが特徴です。本記事では条件やメリット、注意点について詳しくご紹介していきます。
2025「GX志向型住宅」が新設|子育てグリーン住宅支援事業
国土交通省・環境省は、2025年度に「子育てグリーン住宅支援事業」を実施します。これは省エネ性能に優れた住宅の普及を促進するため、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした高水準の省エネ住宅の新築等を支援する取り組みです。
2024年度に実施された「子育てエコホーム支援事業」の後継事業であり、経済産業省・環境省との3省連携についても継続されています。基本的には前年度と同様の内容ですが、2025年度は「GX志向型住宅」が新設されているのが特徴です。
そこで本記事では「GX志向型住宅」について、詳しくご紹介します。補助金制度については、下記記事をご覧ください。
【関連記事】2025子育てグリーン住宅支援事業とは|GX志向型住宅が新設
GX志向型住宅の条件・基準|環境省・国土交通省
ここでは、GX志向型住宅の条件・基準についてご紹介します。具体的には、下記の条件を満たす必要があります。
①断熱等性能等級|6以上
断熱等性能等級「6・7」は、2022年に新設された水準のことを指します。具体的には、下表の点が特徴です(地域区分6:東京等の場合)。
説明 | UA | ηAC | |
---|---|---|---|
断熱等級6 | 熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている | 0.46 | 2.8 |
断熱等級7 | 熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている | 0.26 | 2.8 |
- UA:床、外壁、屋根や窓などから外へ逃げる熱量を示した指標。値が小さいほど熱が逃げにくく、暖房エネルギーが削減される。
- ηAC:冷房期に窓などから侵入する日射の熱量を評価した指標。値が小さいほど熱が入りにくく、冷房エネルギーが削減される。
【参考】国土交通省|住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設
②再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率|100%以上
GX志向型住宅では、再生可能エネルギーを「含む」一時エネルギー消費量の削減率が100%と定められています。つまり太陽光発電等の設置が求められており、エネルギーの自給自足を行う形となります。
これにより光熱費の節約につながるほか、災害時のエネルギー源確保といったメリットも得られるのが特徴です。
ただし「寒冷地等に限っては、75%以上(Nearly ZEH)も可」、「都市部狭小地等の場合に限っては再生可能エネルギー未導入(ZEH Oriented)も可」と、一部条件が緩和されています。これは、日照条件が良くないケースを考慮していることが理由です。また共同住宅は、別途階数ごとに設定されます。
③再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率|35%以上
さらに再生可能エネルギーを「除いた」一時エネルギー消費量の削減率については、35%以上と定められています。これは太陽光発電等を含まない場合でも、エネルギー消費を抑えることが狙いです。
具体的には、省エネ給湯器や高断熱窓といった設備の導入が求められています。
「長期優良住宅・ZEH」との違い|条件が厳しい?
GX志向型住宅は、長期優良住宅・ZEHよりも厳しい省エネ基準となっているのが特徴です。主な違いは、下表にまとめられます。今後も省エネルギーの観点から、段階的に基準の厳格化が進められていくことが予想されます。
GX志向型住宅 | 長期優良住宅・ZEH | |
---|---|---|
断熱性能 | 断熱等級6以上 | 断熱等級5以上 |
BEI(一次エネルギー消費量) | BEI:0.65以下 | BEI:0.8以下 |
【参考】国土交通省|長期優良住宅認定基準の見直しについて
GX志向型住宅にするメリット|2025子育てグリーン住宅
ここでは、GX志向型住宅を採用するメリットをご紹介します。一般的な特徴のほか、2025子育てグリーン住宅支援事業で受けられるメリットについてもまとめています。
環境負荷を軽減できる
GX志向型住宅は省エネ技術や再生可能エネルギーを活用しているため、二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。具体的には高断熱・高気密構造により冷暖房効率を向上させ、エネルギー使用量を最小限に抑えることが可能です。
また太陽光発電や蓄電池システムを導入することで、自家発電や余剰電力の売電もできます。これにより化石燃料依存の電力を削減し、クリーンなエネルギーの利用が進むのがメリットです。
光熱費節約につながる
GX志向型住宅はエネルギー効率の高い設備を活用しており、光熱費の大幅な削減が期待できます。たとえば断熱性能の高い窓や壁材を採用することで冷暖房の稼働時間を減らし、年間を通じてエネルギー消費を抑えられます。
またLED照明や高効率給湯器など、省エネ型の設備を導入することで電気代やガス代が軽減できます。さらに太陽光発電システムを設置することで、家庭内で使用する電力を自家発電で賄い、電力会社から購入する電気を減らすことが可能です。
最大160万円が補助される
2025年度の子育てグリーン住宅支援事業では、住宅の新築(注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅)に対して「最大160万円」の補助金が交付されます。2024年度の「子育てエコホーム支援事業」では最大100万円だったため、大幅増額となるのが特徴です。
ただし対象となる住戸の床面積は「50㎡以上240㎡以下」で、極端に狭かったり豪邸だったりする場合は除外されています。
総務省によると「戸建て住宅の延床面積は126.32㎡」というデータがあるため、一般的な住宅であれば範囲内に収まると考えられます(参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)」)。
そして以下の住宅は、原則補助金の対象外となります。
- ① 「土砂災害特別警戒区域」に立地する住宅
- ② 「災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)」に立地する住宅
- ③ 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域又は浸水被害防止区域)内」で建設されたもののうち、3戸以上の開発又は1戸若しくは2戸で規模1000㎡超の開発によるもので、市町村長の勧告に従わなかった旨の公表に係る住宅
- ④ 「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域(洪水浸水想定区域又は高潮浸水想定区域における浸水想定高さ3m以上の区域に限る)」に該当する区域に立地する住宅
「全世帯」が補助対象に
2025年度の子育てグリーン住宅支援事業では、GX志向型住宅の対象は「すべての世帯」となっています。一方で長期優良住宅・ZEH水準住宅の場合には「子育て世帯等」が対象です。
2024年度の「子育てエコホーム支援事業」では「子育て世帯と若者夫婦世帯のみ」は対象だったため、範囲が拡大されたという違いがあります。
分譲・賃貸の申請条件が拡大
分譲住宅については、下記が定められています。
- 住宅購入者が決定していない時点においても、あらかじめ、補助要件に適合する住宅の戸数を登録することで、交付申請を行うことが可能。
- 登録は、①各事業者における1か月あたりの登録戸数の上限、②各住棟における対象住宅戸数に応じた登録戸数の上限(共同住宅の場合)の範囲内で行う。
- 登録戸数を超える住宅購入者が決定した場合は、追加の交付申請を行うことも可能(共同住宅の場合)。
これにより買主が決定する前の段階でも申請可能になったので、より補助金が活用しやすくなったと言えます。
そして今回から賃貸住宅が追加され、下記が明記されています(長期優良住宅又はZEH水準住宅に限る)。
- 申請ができる戸数の上限は、該当する戸数の50%とする。
- 新築時最初の入居募集(3か月間)は、対象を子育て世帯等に限定する(当該期間中に入居者を確保できなかった場合は、子育て世帯等以外の世帯を入居させることも可能)。
- 「子育て世帯等」向けに、補助金額を勘案した合理的な優遇家賃を設定する。
※対象となる住戸の床面積は50㎡以上240㎡以下とする。
※賃貸住宅の場合、子育て世帯等に配慮した安全性・防犯性を高めるための技術基準に適合することが必要。
GX志向型住宅の注意点・よくある疑問
ここでは、GX志向型住宅の主な注意点やよくある疑問についてご紹介します。
蓄電池は必須ではないが推奨
GX志向型住宅において蓄電池は必須ではありませんが、設置を推奨されています。蓄電池があると、太陽光発電で得た余剰電力を夜間や停電時に活用でき、電力の自給自足をより効率的に行えるようになります。
また電力の購入を抑えられるため、光熱費削減効果がさらに高まります。ただし、初期費用が高額になる点には注意が必要です。導入時には設置コストと効果を十分に検討し、補助金の活用も検討しましょう。
GX志向型住宅の補助金はいつから使える?
2025年の子育てグリーン住宅制度については、令和6年度補正予算の成立が前提であるため今後内容等が変更される場合があります。
そのため2024年12月時点では交付申請期間の詳細について発表されていないものの、2024年度を踏襲する形であれば「2025年4月頃~予算上限に達するまで(遅くとも2025年12月31日まで)」となることが予想されます。
補助金申請の際には、予算上限に達する前に早めに手続きを行うようにしましょう。
他の補助金と併用できる?
本事業は、国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して行う「住宅省エネキャンペーン」の一環として行われます。そのため「省エネ住宅の新築を支援する補助制度」、「既存住宅の省エネリフォームを支援する補助制度」のそれぞれについて、各事業の併用が可能となっています。
ただし各種条件を満たす必要があるため、利用を検討される場合には公式サイトをご確認ください。
GX志向型住宅が可能な場合も|ハウスメーカーの省エネ事例
ここでは、GX志向型住宅に対応できる可能性がある事例をご紹介します。各ハウスメーカーでは省エネ性能の高い住宅を開発しており、それぞれに特色があります。
ただし実際にGX志向型住宅として認定されるかどうかは、実際の間取りや導入設備によって異なります。補助金の利用を検討される場合には、打合せの早い段階で担当者に伝えておくとスムーズです。
セキスイハイム
セキスイハイムでは、カーボンニュートラルの実現に向けて積極的にZEHの普及に努めています。すでにセキスイハイムは国の目標を上回る「断熱等級6」を標準化しており、GX志向型住宅の基準を満たしているのが特徴です。
具体的には工場生産による精密施工と基礎断熱で、隙間を徹底遮断します。特に熱が逃げやすい開口部には高性能サッシを採用することで国が定めるZEH基準を上回る断熱性を実現しています。
一条工務店
一条工務店の住宅は、2022年4月から新設された省エネ性能の最上位等級をクリアしています。独自に超省エネの住まいを作ってきたことで「断熱等性能等級5」「一次エネルギー消費量等級6」を標準装備しているのが特徴です。
高断熱構造「外内ダブル断熱構法」では高性能断熱材を「外壁」「天井」「床下」に使用し、業界トップレベルの断熱性を叶えました。さらに熱をムダにしない換気システムを標準装備する一条の家は夏の熱気や冬の冷気の影響を受けにくいことで、小さなエネルギーで快適に冷暖房が使用できます。
まとめ
2025年度の子育てグリーン住宅支援事業では、「GX志向型住宅」が新設されています。これまでの省エネ基準よりも厳しい条件が課されていますが、その分補助金の交付金額も大きいのが特徴です。これから新築を検討されている方は、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか?