高層木造マンションとは|脱炭素のメリットやデメリット紹介

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Category: 住宅業界動向

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「木造マンション」についてピックアップします。従来まで高層マンションは鉄筋コンクリート造が主流でしたが、最新技術により木造の建築物が登場しています。本記事では木造マンションの概要や具体事例についてご紹介します。

木造マンションが増加中!

近年木造建築の技術が大幅に向上し、RC造に近い耐久性や耐震性を持つ「CLT(直交集成板)」等の建材が普及しています。これにより、中高層の木造マンションの建築が可能になりました。

木材はカーボンニュートラルな素材であり、建設時のCO2排出量が少なく環境負荷の低減に貢献します。さらに建築基準法の改正によって、これまで鉄筋コンクリート造が主流だった中高層建築においても木造化が進められています。

木造マンションの耐用年数とは

出典:三井ホーム,モクシオンの特徴,https://www.mitsuihome.co.jp/property/mocxion/feature.html,参照日2024.12.5

一般的な木造建築物の減価償却上の法定耐用年数は「22年」です。しかしメーカーによっては、独自に監査法人の承認を得ることで「47年」を実現したケースも見られます。

これはRC造と同等のレベルであり、大型木造マンションでの広がりが予想されます。このように木造マンションは、持続可能な資材の使用や建築技術の向上により、従来までの法定耐用年数を大きく超える長寿命が期待される建築形態となっているのです。

「木造マンション」の表記が可能に

従来まで、木造賃貸住宅は「木造アパート」という表記しかできませんでした。しかし2021年以降は、下記の条件を満たすことで「木造マンション」と表記できるようになっています。

項目条件
建物種別共同住宅であること
階数3階建以上であること
住宅性能評価住宅性能評価書の取得を必要とし、以下の等級条件を満たすこと
耐久性能劣化対策等級(構造躯体等)が等級3である かつ以下の①もしくは②のどちらかの等級・条件を満たすものとする
耐震性能①耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3である
耐火性能②耐火等級(延焼の恐れがある部分(開口部以外))が等級4であるもしくは耐火構造である
出典:三井ホーム,モクシオンの特徴,https://www.mitsuihome.co.jp/property/mocxion/feature.html,参照日2024.12.5

*評価書は「設計住宅性能評価書」の取得を必須条件とし、「建設住宅性能評価書」の取得は任意とする。

木造マンションのメリット

ここでは、木造マンションのメリットについてご紹介します。

環境にやさしい

木材は成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定化する特性があります。そのため木造建築物は、カーボンニュートラルに貢献できる方法として評価されています。

さらに木造建築では製造や施工時のエネルギー消費が少なく、コンクリート造の建築に比べてCO2排出量を削減できるのもメリットです。これにより、持続可能な社会の実現に役立ちます。

国産木材の活用につながる

木造マンションの普及は、日本国内で生産される国産木材の需要を高め、林業の振興や地域経済の活性化に寄与します。特に人工林の間伐材や地域材の利用が進むことで、森林の健全な管理が可能になり、自然環境の保全にもつながります。

また国産材の使用は輸送距離の短縮にも寄与し、輸入材に比べて輸送時の環境負荷を軽減できる点も特徴です。

軽量で基礎工事費用が安い

木材は、鉄筋コンクリートや鉄骨に比べて軽量な素材です。そのため建物全体の重量が軽減され、基礎工事にかかる費用が削減できます。

軽量な構造は地震時の負担を減らす効果もあり、耐震性能の向上にも貢献します。また軽量であることで施工時の輸送や建設工程が効率化されるため、工期短縮とコスト削減も可能です。

木造マンションのデメリット・注意点

木造マンションは比較的新しい形態なので、デメリットや注意点もあります。ただし最新技術により、改善されている点も多いです。

遮音性能

木材は音を伝えやすい性質があり、特に集合住宅では上下階や隣室間の音漏れが課題となります。 特に足音などの衝撃音や、話し声・テレビの音などの空気音が伝わりやすい場合が多いです。

しかし最新の木造マンションでは、高遮音二重床システムや構造の工夫で遮音性能を向上させています。これにより、RC(鉄筋コンクリート造)と同等の遮音性能を達成している例もあります。

耐火性能

木材は可燃性があるため、火災リスクがRC造などと比べて高いとされてきました。そのため木造マンションを建設するには、建築基準法に基づき、防火地域や準防火地域の条件を満たす必要があります。また、耐火構造として認められる設計・材料の採用が必須です。  

耐火性能の向上に向けて、CLTなどの加工材に石膏ボードで耐火被覆を施したり、火災時の延焼を防いだりする設計が進んでいます。これにより、耐火建築物として認められる木造マンションが増えています。

高層木造マンションの事例

ここでは、高層木造マンションの事例についてご紹介します。

三井ホーム|MOCXION(モクシオン)

出典:三井ホーム,モクシオン,https://www.mitsuihome.co.jp/property/mocxion/index.html,参照日2024.12.5

三井ホームでは、木造賃貸マンションの「MOCXION(モクシオン)」を提供しています。第1号物件である「モクシオン稲城」が、「国土交通省 令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されたことが話題となりました。

住宅性能表示制度の「劣化対策等級」において最高ランクの3を取得しており、75〜90年の耐久性を確保できる点が強みです。3世代先まで大規模な改修工事を必要としない木のマンションは、美しさを増しながら価値を高め続けられます。

今後は中層集合住宅へと事業領域を拡大し、地球環境にやさしい木造建築物のさらなる普及に努めていく予定です。

住友林業|フォレストメゾン・グランデ

出典:住友林業,フォレストメゾン・グランデ,https://sfc.jp/tochikatsu/lineup/grande/,参照日2024.12.5

住友林業では、エンボディドカーボンの削減に貢献するために、木造マンションの建築を推進しています。建築資材製造時のCO2削減と、構造躯体による炭素固定により、脱炭素社会を目指す世界的な目標達成に貢献します。

また狭小地や変形敷地にも柔軟に対応できる設計力を活かし、土地の価値を最大限に高める賃貸住宅を実現できるのも強みです。住友林業が独自に開発したビッグフレーム(BF)構法は壁から柱型が出ないため、居室面積が広がって家具などのレイアウトもしやすくなります。

まとめ

従来まで木造の賃貸住宅はアパート等の小規模な建築物が主流でしたが、技術力向上によって高層建築物も実現しています。環境負荷を軽減するメリットが大きいため、今後さらに高層木造マンションが増えることが予想されます。