気密測定とは|C値の目安や測定手順を解説

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「気密測定」についてピックアップします。高断熱・高気密住宅の必要性が高まっている中で、気密測定が注目されています。本記事では「C値」の具体的な数値目安や測定手順、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

気密測定とは

気密測定とは住宅の隙間の量(すき間相当面積)を数値で示す検査で、建物の気密性能を確認するために行います。専用の機械を使って建物内の空気を強制的に排出し、どれだけ外気が流入するかを計測するのが特徴です。

主に新築住宅で施工後に実施され、数値が小さいほど気密性が高いことを示します。高気密住宅は冷暖房効率が良く、快適な住環境をつくるために重要な要素となっています。

気密測定の目的

気密測定の主な目的は、住宅のすき間を定量的に把握して断熱性能の効果を最大限に発揮できるかを確認することです。気密性が低いと外気の影響を受けやすく、冷暖房効率が下がるだけでなく、内部結露の原因にもなります。また、換気システムの効果が十分に発揮されないこともあります。

しかし測定によって問題点が明らかになれば施工段階で修正でき、性能の高い住宅づくりに貢献します。

気密測定の費用目安

気密測定の費用は、建物の規模や測定のタイミング(中間時と完成時の両方を実施するかなど)によって異なりますが、一般的には1回あたり3万円〜5万円程度が相場です。

工務店によっては建築プランに含まれていたり、一定の基準(C値)を満たすことを保証していたりする場合もあります。高性能住宅を目指す上で、測定費用は性能確認のための必要経費と捉えるのが一般的です。

気密測定の数値「c値」の目安・見方

C値(相当隙間面積)は、住宅の延床面積1㎡あたりにどれだけの隙間があるかを示す数値で、単位は「㎠/㎡」です。具体的にはC値が1.0なら、1㎡あたり1㎠の隙間があるという意味になります。

数値が小さいほど気密性が高く、省エネ性能にも優れた住宅とされます。一般的なC値の目安としては「高気密住宅で1.0以下、さらに高性能を求める住宅では0.5以下」を目指すこともあります。

ただしC値が良くても断熱や換気と連動していなければ快適性は得られず、住宅性能全体でのバランスが重要です。

気密測定の種類①タイミング

ここでは気密測定の「タイミング」別の種類を紹介します。

中間気密測定

中間気密測定は、断熱材や気密シートの施工が完了して内装仕上げに入る前の段階で行う測定です。建物の構造が露出しているため気密性能の不具合が見つかりやすく、必要に応じて施工の手直しも可能です。

C値を確実に下げたい場合や、高気密住宅を目指す場合にはこのタイミングでの測定が推奨されます。施工精度の確認にも役立つため、こだわりのある住宅づくりには欠かせない工程です。

完成気密測定

完成気密測定は、建物がすべて完成した最終段階で行う測定です。中間測定と異なり、壁や床が仕上がった状態のため、施工後の気密性能を最終的に確認する目的で行います。

ただしこの段階では隙間の修正が難しいため、大きな問題が見つかると対応が困難な場合もあります。中間と合わせて2回測定することで、気密性能を確実に管理することが理想的とされています。

気密測定の種類②依頼先

ここでは気密測定の「依頼先」別の種類を紹介します。

住宅会社

住宅会社に気密測定を依頼する場合、多くは自社で施工した住宅に対して測定をして、性能保証の一環として実施されます。とくに高気密高断熱住宅を売りにしている会社では、C値の目標値をあらかじめ設定し、測定結果も数値で提示するケースが一般的です。

中には、測定費用が建築費用に含まれている場合もあります。ただし会社によって測定の有無や精度に差があるため、事前に確認することが大切です。

専門の測定業者

専門の測定業者は、住宅会社とは別に気密測定のみを実施するプロフェッショナルで、第三者的な立場から正確な数値を提供してくれるのが特徴です。とくに性能にこだわる人や、客観的な測定結果を求める場合に適しています。

依頼者の希望に応じて中間・完成測定の両方に対応でき、測定結果に基づいたアドバイスをもらえる場合もあります。費用は別途かかりますが、信頼性と透明性の高い選択肢です。

気密測定の手順

ここでは、住宅における気密測定の具体的な手順を解説します。

現場確認

測定前には、建物の状態や施工状況を確認する「現場確認」が行われます。測定対象となる住戸の工事進捗や設備の取り付け状況、開口部の数、気密施工の完了状況などをチェックし、測定に適したタイミングかどうかを判断します。

とくに中間測定の場合は、気密層が完成していることが重要です。不具合があると正確な測定ができないため、事前確認は欠かせません。

目張り

目張りとは、気密測定に不要な隙間(給排気口、配管用開口部、換気システムなど)を一時的にテープやカバーでふさぐ作業です。これにより、建物そのものの気密性能を正しく測定できます。

設計上の意図に基づき、測定対象外となる部分のみを適切に塞ぐことが求められます。目張りの仕方が不十分だと、正しいC値が得られないため、慎重な作業が必要です。

気密測定器の設置

気密測定器は、主に玄関ドアや掃き出し窓などに仮設パネルを取り付け、その中に送風機や圧力センサーを組み込んで設置します。建物内の空気を強制的に排出し、外気圧との差から隙間の面積を算出する仕組みです。

測定は一定の手順に従って行われ、正確なデータ取得のためには機器の設定や設置位置の調整が重要となります。

風圧確認・窓の施錠

測定前にはすべての窓やドアをきちんと施錠し、外部との開閉部が密閉された状態であることを確認します。また風が強い日には外気圧の変動が測定値に影響を与えることがあるため、風圧の影響も確認します。

さらに必要に応じて測定の延期や再調整が行われることもあり、外部要因を最小限に抑えることが重要です。

証明書発行申請/・証明書交付

気密測定の結果が出ると、C値や測定条件、使用機器などを記載した「気密測定結果報告書」や証明書が発行されます。住宅性能を示す正式な資料として、お施主様や建築会社が保管・活用します。

とくに性能住宅や長期優良住宅などの申請時に提出することもあり、数値に信頼性が求められるのが特徴です。第三者機関による測定であれば、より客観性の高い証明となります。

気密測定のメリット

ここでは、住宅で気密測定をするメリットを紹介します。

手抜き工事を防げる

気密測定をすることで施工の精度が数値で明らかになるため、手抜き工事の抑止力になります。とくに気密処理は見えない部分が多く完成後に確認しづらいので、測定によって職人の意識も高まり、丁寧な施工が促されるのがメリットです。

また工務店や住宅会社が一定のC値を保証することで責任ある施工体制が求められるため、全体の品質向上にもつながります。

住宅性能を保証できる

気密性能は断熱性や換気効率に大きく関わるため、C値という数値でその性能を保証できることは大きなメリットです。住宅の省エネ性や快適性を証明する材料として使えて、長期優良住宅などの認定取得にも役立ちます。

お施主様にとっても「どれだけ快適に過ごせる家か」を客観的に把握できるため、住まいへの安心感や納得感が高まります。

工事の問題点を早期修復できる

中間段階で気密測定をすれば、断熱材の欠損や隙間処理の不備といった問題点を施工途中で発見できます。完成してからでは手直しが難しい部分も、中間測定時であれば容易に修復が可能です。

結果として住宅全体の品質が向上し、住み始めてからのトラブルや光熱費の無駄も防げます。建てて終わりではなく、住み心地まで見据えた家づくりが実現できます。

気密測定のデメリット

ここでは、住宅で気密測定をするデメリットを紹介します。

測定費用が掛かる

一般的に、気密測定には専門の機器や技術者が必要となるため費用がかかります。中間と完成の2回行う場合はその分費用も増えるため、建築費用を抑えたい人にとっては負担に感じることもあります。

また住宅会社によっては測定がオプション扱いとなっており、お施主様自身が依頼・負担しなければならないケースもあるため、事前確認が必要です。

結果次第で追加工事が発生する

気密測定の結果、C値が基準を満たさない場合は、隙間の補修や気密処理のやり直しが必要になることがあります。とくに中間測定で問題が見つかると、工期の延長や追加の施工費用が発生する可能性もあり、予算やスケジュールに影響を及ぼす場合もあり注意が必要です。

ただしこの追加工事は住宅性能の向上につながるため、長期的にはプラスと捉えられます。

気密測定のよくある疑問|「やらなきゃよかった」を防ぐには

ここでは、気密測定のよくある疑問について解説します。

2回実施がおすすめ?

気密測定は「中間」と「完成」の2回実施が理想とされています。中間測定では隠れる前の構造部分を確認できるため、不具合があっても修正が可能です。一方で完成測定は最終的な住宅の気密性能を数値で確認でき、性能の証明として使えます。

費用はかかりますが、両方行うことで施工精度と性能の両面から安心感が得られ、「やらなきゃよかった」と後悔するリスクを減らせます。

気密測定は自分でできる?小型気密測定器「Dolphin2」

出典:ヤマイチ,Dolphin2,https://h1s.jp/dolphin/,参照日2025.4.24

気密測定には専用の測定器や経験が必要で、個人で正確に行うのは非常に難しいイメージがあります。しかし小型気密測定器「Dolphin2」といった製品も登場しており、こちらは一人で持ち運び・測定して差圧を見ながら風量調整・平均処理・分析まで可能です。

簡単なタッチパネル操作による半自動測定ができるので、手軽に自社で気密測定したい場合におすすめです。

まとめ

最近では住宅の高気密・高断熱化が進んでおり、気密測定が注目されています。快適な住まいの実現のためには、小型気密測定器といったツールを導入して計測する方法もおすすめです。住宅の状況に応じて、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。